「ガイジン」とは

2020年、オリンピックイヤーが幕を開けました。東京だけでなく日本全国に、海外からたくさんの方が訪れます。

ところで皆さん、海外移住資料館をご存知ですか? 約150年前のハワイに始まり、日本から北米や中南米に
移住され、現在は360万人以上と言われる日系人の方々の歴史や現地の日系社会、日本とのつながりについて
伝える資料館です。JICAの前身組織が国の移住事業を担っていた歴史から、多くの方が旅立った横浜港の近くにあるJICA横浜に併設されています。
移住を呼び掛けるポスター、パスポート、持って行った道具や現地で作った「日本食」の再現…。このような
物品や映像などの常設展示の他、企画展や催し物で日本人移住の歴史や日系社会について伝えています。

昨年、同資料館の企画展「コーヒーが結んだ日系人と日本」に合わせて開催された映画上映会に参加しました。映画のタイトルは「ガイジン-自由への道」。日本からブラジルへ渡った初期の移民の、コーヒー農園での生活を描いています。監督は日系ブラジル人三世のチズカ・ヤマザキ氏で、移民一世である祖母の話を基に制作しました。サブタイトルの「自由への道」は、「当時のすべての移民が自由を探して道を築いてきたことを意味している」とのことです。発表された1980年のカンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を受賞していますが、日本の映画館では未上映の作品です。

映画上映会「ガイジン-自由への道」

映画では、言葉が通じない国で従事する重労働、苦しい生活、病など、初期の移民の方々が直面した苦労が細部にわたり描かれています。主人公の女性は、ブラジルで娘を産みました。夫を病で亡くしますが、故郷である
日本に帰ることを願いながら生き抜きます。

ところで、タイトルの「ガイジン」。日本語では少し衝撃的な感じがしますが、ブラジルの日系社会では普段からよく使われているそうです。意味は「日系人以外のブラジル人」。つまり、ブラジルにおいて日系人の方が、自分たち以外のブラジル人のことを指すそうです。
一方、海外で「日本人」と呼ばれてきた日系人の方々が祖国日本に来た時、「ガイジン」扱いされ、葛藤されることもあるとヤマザキ氏は語ります。

様々な想いや背景を持って、日本にいらっしゃる日系人や外国人の方々。日系人の方が国外に日系社会を築き、その国の発展にも関わられている歴史を重ねながら、多文化共生社会における「ガイジン」の意味を考えさせられました。

海外移住資料館について: https://www.jica.go.jp/jomm/index.html

参考:
「映画監督の山崎チズカさん、ガイジン・デカセギを語ります」(地球の歩き方)
「そもそも「移民」は差別語か? アイデンティティに関わる表現 ー その1」

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