コラム 海外を目指す学生たちのリアル

名城大学附属高等学校 国際クラス

将来どんな道を選んでも、世界で起こっている問題と無関係ではいられない。

愛知県名古屋市にある「名城大学附属高等学校(以下、名城高校)」に、SDGs達成に向けた支援活動を行う高校生たちがいます。一人は、ケニアの女の子に手づくりの「布ナプキン」を届ける活動をする岩佐麻椰(いわさ・まや)さん。もう一人は、途上国の起業家を支援するマイクロファイナンス(※貧困からの脱出を目的とした金融サービス)サイトの翻訳ボランティアを手がける大塚彩矢(おおつか・さや)さん。二人がタッグを組み、「女性の生涯に寄り添える支援」に取り組んでいます。
最終回は、二人の将来の目標や、目指すキャリアについてのお話を聞きました。

厳しい言葉をもらうのは、私たちを対等に見てくれているから。

二人が活動を続けていて、印象に残っている出来事や、思い出深かったエピソードを教えて!

岩佐さん
イベントや大会に参加すると、実際にアフリカなどの支援の現場で活躍している方から、私たちの活動に対するアドバイスや、感想をいただくことがあります。そうした中には、厳しい意見もありました。

大塚さん
私たちは現地に行って状況を直接見ることはできないので、どうしても視野が狭くなっていることがあります。そういった部分をずばり指摘されるときは、やっぱり悔しい気持ちになりますね。ですが、自分たちの欠点や、気づけなかった部分を教えていただけたのは、本当にありがたかったです。

岩佐さん
厳しい意見をもらえるということは、高校生の私たちを対等に見てくれているということ。それはとても嬉しいことです。また、そこで出会った方から取材依頼をいただいたり、私たちの活動を広めてくださったりする方もいて。さまざまな人との出会いが、活動の場を広げるチャンスになりました。

課題研究発表の様子(左:大塚さん、右:岩佐さん)
課題研究発表の様子(左:大塚さん、右:岩佐さん)
自分たちが「成長したな」と感じるのは、どんなとき?

大塚さん
とにかく行動できるようになりましたね。中学生のときは、チャンスがあってもつかみに行く勇気がなかったり、失敗が怖くてチャレンジできないことも多かった。でもこの高校に入って翻訳ボランティアをはじめたことで、自らイベントに応募して、どんどん参加できるようになりました。積極的に新しい一歩を踏み出せるようになったことで、得たものは多くあります。

岩佐さん
私も同じです。それに、人とのつながりをとても大切に感じるようになりました。私たちはまだ高校生なのでお金もないし、できることはそう多くありません。でもクラスメイトや仲間、先生、NPOのスタッフさんたちが私たちの活動を応援して、支えてくれたからこそ続けることができました。感謝の気持ちでいっぱいです。

協力的な周囲の人の存在もかなり大きいとのこと。
協力的な周囲の人の存在もかなり大きいとのこと。

成功も失敗も経験して、強くなった。

高校生になってからの二人の変化について、家族や友だちに言われることはある?

大塚さん
私は「変わったね」って言われるようになりました。周りの友だちが持っている今の私のイメージは、「考えるより先に行動する人」だそうです(笑) 中学まで引っ込み思案だった私ですが、今では「周りの人からもそういう風に見てもらえるまでに成長したんだ」と、自信を持てるようになりました。

岩佐さん
家族がすごく応援してくれるようになりましたね。私の様子を見ていて「頑張ってるな」って思ったみたいで。布ナプキンづくりを手伝ってくれたり、アフリカのことを書いてある新聞記事を切り抜いてくれたり。両親と社会問題について話し合うことも増えました。家庭内のコミュニケーションの機会がぐっと多くなりましたね。

先生から見ていて、二人の成長を感じる瞬間はある?

羽石先生
すごくタフになったと思います。人に対する温かさや優しさは元からありましたが、その上に思考を組み立て、行動を模索し続けるようになりました。二人とも器用なタイプではないけれど、とにかくガッツがある。成功の陰には失敗もありますし、落ち込んだり悔しがったりしている姿は何度も見ましたけれど、どれだけ打ちのめされても泣きながら立ち上がってきますね(笑) すごく強くなってくれました。

大きく変化していく世界で、生きていく力を身につける。

社会に出てからも大きな財産になりそうだね。二人の将来の目標を教えて!

大塚さん
私は今、大学進学を目指して勉強中です。進学後の目標は、あらゆる方面の知識を幅広く身につけること。そして各分野の関連性を理解して、そこをつなげられるような存在になることです。


なぜかというと、一つの問題を解決するには、一つの専門知識を突き詰めるだけでは足りないからです。たとえば、アフリカの女性が安定した教育を受けることができない背景には、さまざまな要因があります。貧困のため高額な生理用品が買えないことも一つの要因ですが、宗教の問題や、ジェンダー問題が絡んでいることもあります。そうした問題に挑むには、さまざまな角度からの視点が必要になってくると考えています。

岩佐さん
私は教育問題に興味があります。「布ナプキンプロジェクト」で取り組んでいる教育支援も、他にもいろいろな活動がありますし、支援する立場によって全く違うものになります。また、アフリカだけでなく、日本にもさまざまな理由で学校へ行けない子はいます。ここ愛知には、外国にルーツを持つ子どもが多くいますが、言葉の壁などから学校へ行きづらい現状もあるようです。身近な所にも、考えるべき課題は山積みです。


私もまだ知らないことばかりです。卒業後は進学して、こうした教育に伴う問題に着目しながら、多様な分野の学問を横断して学びたいと考えています。そして、今後どんな仕事を選んだとしても、世界の社会問題については考え続けていくつもりです。逆に、今の世界で、それら社会問題と全くつながらない仕事は存在しない、と思っていて。どんな立場になったとしても、何かしらの手法でアプローチし続けたいと考えています。

一つの道にこだわらず、いろいろな視点を養って社会問題にアプローチしていく。
一つの道にこだわらず、いろいろな視点を養って社会問題にアプローチしていく。
先生が今後力を入れていきたいことは?

羽石先生
彼女たちは今、アフリカの女性の社会進出に着目して研究を進めていますが、これは決して遠い国の出来事ではなく、日本国内でも同じような問題は起こっています。今回研究を進めたことで、彼女たちはそういった身近な問題に対しても、よりリアルな視点を持てるようになったと思います。生徒たちには「自分と世界はつながっている」ということを意識しながら、日本と世界を行き来して考える目をもつ人になって欲しいですね。


これからの社会は、私たちの知っている社会ではなくなっていきます。大きく変化していくこの世界で生き抜いていくためには、何よりも強さが必要です。でもそれは一人きりで頑張る強さではなく、周りの人とつながって、一緒に乗り越えていける強さです。その強さを身につけてもらえるように、支えていきたいと思っています。


※本記事の取材は、2020年10月にオンラインにて実施しています。また、新型コロナウイルス感染予防対策としてマスクを着用しています。

プロフィール

名城大学附属高等学校

愛知県名古屋市にある名城大学の附属高校。「知・徳・体の調和する人格の完成」を教育目的の一つに掲げ、設立から90年以上にわたり、東海地区の教育を牽引してきた。平成18年から3期連続して文部科学省が推進する「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定校に認定されており、さらに平成26年には文部科学省が推進する「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」の指定校に認定(平成30年まで)。「国際クラス」はSGHとして培った教育手法を活かし、確かな語学力とリアルな国際感覚を身につけた人材の育成に力を入れている。