第79号 PARTNERコラム国際協力を志す仲間たちへ②「人生を自分でデザインする生き方」

国際協力を志す若年層からは、キャリアに関する不安の声をよく耳にします。途上国で開発に携わりたいと思いつつも、思い描く「国際協力の仕事」にたどり着くまでの道筋は靄と霞の中で、正攻法のない不透明なキャリアパスに不安を感じるからでしょうか。しかし、国際協力のキャリアをポジティブに捉えると、自由度が高く、自己実現に適したキャリアであると思います。インターン中にお会いした方々は、先々が見えていないことをネガティブに捉えてはいませんでした。5年、10年先の未来や、その時に自分がどんなことを考えているのかわからないことを肯定的に受け入れ、むしろそういった生き方を楽しんでいました。

国際協力のキャリア形成を考える際には、事前にキャリアの最終的なゴール地点を見定め、そこから遡ってある地点での目標達成を試みるようなキャリア形成だけではなく、ボトムアップ式に1つ1つの経験を積み上げていき、先の未来で振り返った時にキャリアが形成されていることを確認するような、レトロスペクティブ(回顧的、回想的)なキャリア形成もあることを知ると良いと思います。その時々で自分がいる環境や時世を考慮した上で自身が思う最善の選択をし、目の前のことに全力で取り組みながら、常に自分の興味関心、感情の揺らぎに注意を向け、次にもっと学びたいと思える具体的な対象や、解決していきたい課題を見つけていくのです。

1つの未来に固執しすぎてしまうと、自分の理想や人生はこうあるべきだという「べき論」と、キャリアを歩み始めてから知る現実との間に生じるギャップに失望してしまうかもしれません。最初にキャリアの最終目的地を決め、その道筋に沿ったキャリアを歩むことは、安定しているように見えますが、実はある種の不安定さを伴うからです。現実のキャリアは、実際に自分がキャリアを歩む以前に想像した理想通りであることは保証されていません。実際のキャリアと当初想像していたキャリアとの間に乖離があった場合、「べき論」に縛られてキャリアを歩むうちに、本当はこうあるべきなのにという感情に支配されて、現実を楽しめていない自分とのアンビバレンスに苦しむ可能性があります。一方、レトロスペクティブなキャリア形成では、自分の興味関心が常に変化していき、それに合わせたキャリア選択を前提としているため、こうしたアンビバレンスに陥る可能性を下げることができると思います。

しかし、変化や不安定さを前提としたキャリア形成においては、その生き方を貫く軸が必要です。その軸とは、最終的なゴール地点を見定めることではなく、キャリア形成、さらに広く考えれば、自分がどう生きるかを考える際に拠り所となる価値観や目的意識のことです。都度行うキャリア選択において、「なぜその選択をしたのか」に対して、その答えの根拠となるような抽象度の高い目的意識を持って行動することで、先の未来で回顧的に自身の人生を振り返った時に、1つ1つの経験が目的を達成するためのピースとしてはまり、自己実現が成されるのではないかと私は考えています。そして、こうした生き方を進んで受け入れ、楽しむことができる人にとっては国際協力の仕事は天職なのではないでしょうか。

筆者
筆者

JICA人事部開発協力人材室インターン
金沢大学 医薬保健学域医学類 若山空也

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