第86号 PARTNERコラム途上国での障がい者支援

私が国際協力に興味を持ったのは、大学1年生の春休みにスタディツアーで訪れたカンボジアでの経験がきっかけでした。初めての海外だったこともあり、東南アジアの活気にあふれた生活の様子や子どもたちの笑顔、悲惨な過去を乗り越えてたくましく生きる人たちとの出会いが強く印象に残りました。

大学を卒業してから精神障がい者の地域生活支援に従事した後、仕事を休職して海外協力隊のソーシャルワーカー隊員として、スリランカで2年間活動しました。スリランカでは、障がい者支援制度や生活困窮者への支援制度が十分に整備されていませんでした。また、「障がい者になったのは前世の行いが悪かったから」という考えから、自身の権利を主張することもなく、困難な状況に耐える障がいを持つ方々やその家族に出会いました。帰国後に復職しましたが、スリランカで目にした不平等が忘れられませんでした。日本で、目の前にいる方々を支援することは必要とされている仕事であり、日本で働き続けることも考えましたが、草の根の小さな一歩でも何かしなければ、と思ったのでした。そこで障がい者支援を実施しているNGOを探し、現在の職場に転職しました。

ミャンマーではタイ国境に近いカレン州の農村部で、障がいに関する理解を広め、障がい者を地域で支える仕組みを構築するための事業を実施しています。クーデター以前からミャンマーでは政府の監視が厳しく、外国人である私たちは事業地への入域許可を取得することがなかなかできませんでした。そのため、障がいを持つ方々に直接会うことができないもどかしさがありました。しかし、その分現地スタッフのがんばりや成長を目の当たりにすることができ、人を育てることの大切さやおもしろさを知りました。また、ミャンマーの人たちの誠実さや真面目さ、向上心、民族愛、粘り強さなどから学ばせていただくことが多くあります。

2020年に新型コロナウイルス感染拡大を受けて日本に一時帰国し、ミャンマーへ戻る準備を進めていたところにクーデターが発生したため、未だに日本から遠隔で事業を運営しています。早くミャンマーに戻って現地の人たちと一緒に働きたいと思いながら、日々画面越しに現地スタッフの様子を見て元気をもらっています。

丘の上から望む事業地カレン州パアンの街
丘の上から望む事業地カレン州パアンの街

AAR Japan 難民を助ける会
ミャンマー パアン事務所
安齋 志保

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