第89号 PARTNERコラムたった一つの出会いから

私はこれまでアフリカのマラウイ、ナイジェリア、南アフリカの計3カ国で駐在を経験しました。22歳まで海外に行ったことのなかった私が、なぜアフリカで勤務するようになったのか、そのターニングポイントについてお話します。

物心ついた頃から抱いていた「学校の先生になる」という目標を達成するため、高校卒業後は地元の大学の教育学部に進学しました。当時は、アフリカで働くことになるとは全く思っておらず、大学入学後も、教員免許の取得を目指す傍ら、大学の野球部に所属し、野球場と教室を往復している日々でした。大学3年生の前期だったと思いますが、教員免許取得のために受講していた授業で、たまたま席が隣になった大学院生から「近い将来休学してザンビアで海外協力隊として数学教師をする」という話を聞き、漠然とアフリカに興味を持ち始めました。

大学で教育の勉強をしながら、日本の学校が抱える不登校の問題や、夢や目標がなく自己肯定感が低い日本の若者の現状について、自分に何かできることはないのか考えていました。一方で、テレビで見るアフリカの子どもたちは、夢や希望に溢れ、学校や勉強が好きだと言っており、この違いを不思議に思うようになりました。そうしてアフリカの学校へ行ってみたいという好奇心が高まる中、既に大学院を休学し、現地で数学教師をしていた先輩に「ザンビアまで行ってみたい」と連絡してみたところ、すんなりOKの返事がもらえました。大学4年生の春、ついにザンビアに渡航、1ヶ月間で現地の学校をいくつか見学できました。

ザンビア渡航が私にとって初めての海外でした。1ヶ月の滞在だけでは、疑問の大部分は解決できませんでしたが、日本とザンビアではありとあらゆるものが異なることに衝撃を受け、それが私のその後の人生に大きな変化をもたらしました。また、日本の子どもたちと同様に、ザンビアの子どもたちにも様々な課題があることを知り、日本に限らず、世界中の子どもたちが抱える問題について、取り組みたいと考えるようになりました。

社会見学の引率で小学生と訪問したマラウイ科学技術大学(2015年3月撮影)(左後方2番目が筆者)
社会見学の引率で小学生と訪問したマラウイ科学技術大学
(2015年3月撮影)(左後方2番目が筆者)

その後、マラウイやデンマーク、日本で教員を経験し、大学院では国際教育学の修士を取得しました。現在は、在南アフリカ日本国大使館で、現地マクロ経済の分析、草の根・人間の安全保障無償資金協力、高等教育の3つの業務を担当しています。これらの業務を通して現地の教育に関わり、南アフリカの社会への理解を深められることに大変やりがいを感じています。まだまだ道半ばですが、アフリカ社会についての知見を深めながら、子どもたちの幸福やより良い社会のために自分のできることをやっていきたいです。

草の根・人間の安全保障無償資金協力の現場視察で訪れたエスワティニ王国の高等学校(2022年7月撮影)(左から2番目が筆者)
草の根・人間の安全保障無償資金協力の現場視察で訪れたエスワティニ王国の高等学校
(2022年7月撮影)(左から2番目が筆者)

在南アフリカ日本国大使館
経済・開発協力班 専門調査員
山田岳広

毎週金曜日に配信している“PARTNERニュース”では、新着の求人・インターン情報/研修・イベント情報の受け取りの他にも、コラム掲載のお知らせもお届けしています。このコーナーでは、コラムの全文と過去アーカイブをお読みいただけます。

個人登録(「参加レベル登録」または「人材登録」)をして、是非、PARTNERニュースの購読をお願いします。