第110号 PARTNERコラム“Warm heart of Africa” マラウイでの協力隊活動と出会った人々の温かさ

私はJICA海外協力隊としてマラウイ共和国に派遣されました。マラウイはアフリカ大陸の南東部に位置し、面積は日本の約3分の1と、周辺国に比べると比較的小さな国です。約2,000万人(2022年:世界銀行)が暮らすこの国は、アフリカ大陸で3番目に大きいマラウイ湖を有し豊富な漁業資源に恵まれており、食卓にはしばしば魚料理が並びます。

マラウイ湖でとれる魚。ここにしかいない固有種も多い。
マラウイ湖でとれる魚。ここにしかいない固有種も多い。

豊かな自然に恵まれたマラウイですが、経済状況は国連が分類する後発開発途上国の中でも下位に位置し、世界最貧国のひとつです(一人あたり国民総所得(GNI):640米ドル(2022年:世界銀行))。電気や水道といった重要インフラもほとんど整備されておらず、首都でさえ停電や断水が日常茶飯事です。工業も発達していないため国民の大部分は農業に従事し、自給自足の生活を送っています。このように苦労しながらも人々は互いを支えあいながら生活しており、その穏やかな国民性からマラウイは「The Warm Heart of Africa(アフリカの温かい心)」と呼ばれています。

私が協力隊として派遣されたのはマラウイ湖南端に近いモンキーベイという小さな町でした。乾季は非常に暑く、真夏には気温が40度近くになります。私は理科教育隊員として地域の中高等学校(セカンダリスクール)で理科を教えるかたわら、近隣校の巡回もしつつ理科の授業や教員への実験指導を行っていました。現地では入手可能な材料や試薬が限られているため、教科書に載っている実験はほとんどできず、理科の授業は先生が黒板に教科書の内容を書き写したものをノートに書き写すという、典型的な暗記型の授業が行われていました。私は現地で入手可能な材料から簡単な実験器具を作ったり、日本の教材などを参考にしつつ科学工作を紹介したり、なるべく生徒たちに観察や実験を体験してもらい、理科の面白さを伝える授業を心掛けていました。

授業の一コマ。身近な植物の色素を抽出し、pH指示薬を作成している様子。
授業の一コマ。身近な植物の色素を抽出し、pH指示薬を作成している様子。

また教員不足から理科が専門外である先生も授業を行わなくてはならない学校もあります。時おり外部の支援団体から実験教材セットが送られることがあるのですが、そのような学校では支援された教材がしばしば倉庫に放置されたまま活用されていないこともあります。そこで私は教員が実験教材を有効に活用できるように、器具や試薬の使い方や調製法なども教えつつ、教員の授業支援も行っていました。近隣校とはいえ、自転車で未舗装の道路を1時間近くかけて訪問するのはとても大変でしたが、「来てくれてありがとう。また待っているよ。」と笑顔で言われると疲れはどこかに吹き飛んで、私のモチベーションを高めてくれました。

中和滴定の実験。近隣校の教員への実験指導も行った。
中和滴定の実験。近隣校の教員への実験指導も行った。

ある日、近隣校を訪問しようといつものように自転車をこいでいると、突然アクシデントに見舞われ、大自然のど真ん中で立ち往生してしまいました。しかし、それはマラウイの人々のやさしさに触れるきっかけとなったのでした。この続きは次回のコラムで。どうぞお楽しみに。

株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング
教育部
竹本 大起

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