第111号 PARTNERコラム“Warm heart of Africa” マラウイでの協力隊活動と出会った人々の温かさ(後編)

前回のコラムに続き、私がマラウイ共和国で協力隊活動を行っていた時に出会ったエピソードをご紹介したいと思います。

実験指導(※前回のコラム参照)で近隣校を訪れる道中の出来事です。近隣校といっても自転車で片道1時間ほどかかる距離でした。それに加えて舗装されていない道では砂場の上で自転車をこいでいるようでなかなか進みません。当時隊員に貸与された自転車は現地で調達されたものでお世辞にも良い自転車とは言えませんでした。使うたびにどこか故障するし、修理を重ねるうちにボロボロになっていました。

近所の自転車修理屋さん。自転車が壊れるたびにお世話になっていました。
近所の自転車修理屋さん。自転車が壊れるたびにお世話になっていました。

その日もいつものように近隣校に自転車で向かっていました。途中、上り坂でギアを一段軽くしようと操作した瞬間「ガガガッ!」っと音を立ててチェーンが外れてしまいました。こんなことはよくあるのですが、今回は運が悪かったらしく、ギアを操作する金具もろとも曲がってしまい、チェーンがうまく回らなくなってしまいました。道端で立ち往生、行くにも引き返すにもかなりの距離があります。当然工具など何ひとつありません。なんとか素手で金具を曲げて元に戻してみても、少し漕ぐとチェーンが外れ、直して漕いでまた外れての繰り返しで、どうやらしっかり直すには工具を使って金具を直す必要がありそうでした。

道路は未舗装。天候によって砂道にも泥道にもなる。
道路は未舗装。天候によって砂道にも泥道にもなる。

そうして道端で壊れた自転車を相手に奮闘していると、20代くらいの青年が近づいてきました。
「壊れてしまったのか?」と、曲がった金具を素手で直そうとしてくれました。隣で見ていた彼の友達も持っていた自分の荷物をおいて2人がかりで直そうとしてくれました。直後、なんとかチェーンは回るようになり、2人の青年に感謝してまた漕ぎ始めました。

しかし、しばらく漕ぐとまた壊れてしまいました。やはり、曲がった金具がいけないと思い、どうにか直そうと道端の石を使って金具をたたいていると、今度は上半身裸のおじさんがスパナを持って近づいてきました。どうやら遠くから私が苦戦している様子を見ていたようでした。彼は英語が全く話せないようでしたが、身振り手振りで必要な指示をしてくれました。そしてついに金具が元の形に戻ってチェーンが直った瞬間、「イェーイ!!」とまるで自分の自転車が直ったかのような喜びでハイタッチしてくれました。その後はチェーンも外れることなく無事に近隣校までたどり着くことができました。
勤務が終わってへとへとになって家に帰り、改めて今日あった出来事を振り返った時になぜここまで優しくしてくれるのだろうと素直にうれしく思いました。そして自分自身の行動や考え方をも振り返るきっかけにもなったのです。

配属先の先生方と離任前の一コマ。困ったときはいつも支えてくれました。
配属先の先生方と離任前の一コマ。困ったときはいつも支えてくれました。

見慣れない日本人、ましてや言葉が通じるかどうかわからないのに私が出会った現地の方は迷うことなく助けてくれました。果たして私は、日本の街中で外国人が困っていたら迷うことなく手を差し伸べられるでしょうか。そこには何かしらの葛藤が生まれてしまうものです。

例えば、私が見舞われた状況と全く同じことが日本で起こったと考えてみます。

・困っている相手が見知らぬ外国人でも手を差し伸べられるでしょうか。
(何されるかわからないから怖いなぁ。やめておこうか)
・自転車が壊れた時に真っ先に近づいてきてくれた2人組の青年のように、全く道具を持ってなくても助けに行けるでしょうか。
(自分が行ったところで何も役に立たなそう。やめておこうか)
・道具を持ってきてくれた上半身裸のおじさんみたいに、言葉を全く話せなくても駆けつけられるでしょうか。
(言葉通じないだろうしなぁ。やめておこうか)

括弧の中はきっとこれまでの自分だったら使ってしまいそうな言い訳です。

困った人を助けるのに理由などいらないという彼らのまっすぐな気持ちと、考えるより前にまずは行動に移すことの大切さを教えてくれたエピソードを紹介し、今回のコラムを締めくくりたいと思います。ありがとうございました。

株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング
教育部
竹本 大起
(2017年度2次隊・マラウイ共和国派遣・理科教育)

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