コラム 地球規模で生きる人

秋田 智司さん(WASSHA株式会社)

アフリカの人と一緒に、現地の人の役に立つことを! 夢の実現までの道のり

夢も野望も英語力もなく日本を出たこともないチャラい高校3年生が、彼女の浮気と紛争ニュースをきっかけに覚醒!? 大学・大学院・就職を経てアフリカで起業するまでのリアルなストーリーを全3回でお届け。第2回は、アフリカで起業するまでの思い、そして現在の仕事で楽しいこと、苦労していることを教えてもらいます!

働きながら「夢の実現」のためにしていたこと

「アフリカの人と一緒に、現地の人の役に立つことで起業をしたい」と考えていた秋田さん。でも、大学院を出てすぐには、起業の道を選びませんでした。起業への準備は、働きながらどう整えていったのだろう?

なぜ、社会人になってすぐにアフリカで起業しなかったの?

本音を言うと、起業のネタが見つからなかった。だから、外資系のコンサルティング会社に就職して、いろいろな会社を見てみようと思った。けれど、最初に配属されたのは希望したチームではなく、システムを開発するチームだった。がっかりしたけど、素晴らしい仕事仲間に巡り会えたし、そこで課題に取り組んだ経験は、今すごく役に立っている。

起業までの道のりについて懐かしそうに話す秋田さん
なぜ「アフリカで起業する」という気持ちを持ち続けられたの?

「起業はそんなに甘くない」。そう友人に言われれば言われるほど、思いは強くなり、社会人になってからも月1回の勉強会は続けていた。すると、「アフリカで事業を立ち上げるという人に会ってみる?」と声をかけてもらうなど、人とのつながりが広がっていった。
そして29歳のとき、外資系のコンサルティング会社に勤めている仲間と、NPO法人「ソケット」を設立。「働きながら、会社ではできないことをやろう」と集まったんだ。そこには、ハーバード大学に留学経験のあるような優秀な人たちもいて、そんな尊敬できる友人に認めてもらえる人間になりたいと、さらに頑張れた。

アフリカで起業。その第一歩はどう始まった?

ついに、勤めていた会社を退職して起業の道へ。そのきっかけとなった出来事やお仕事の内容を教えてもらったよ。

起業に踏み切ったきっかけって?

結婚して子どもができて、決心したんだ。このまま自分の夢をあきらめたら、胸を張って子どもに自分の人生を語れない。だから30歳で勤めていた会社を辞めた。いろいろな人と話しているうちに途上国の事業に関するコンサルタントの仕事が舞い込むようになった。そこで出会ったのが東京大学の阿部力也教授。阿部教授は新しい電力供給システムを研究している第一人者で、技術を途上国で事業化する可能性を探っていた。
その阿部教授と一緒に訪れたケニアで、現地のビジネスマンに「俺が考えているビジネスがあるんだ。阿部教授の技術を使って、君たちでできないか」と相談された。すると、阿部教授から、「会社をやろう。でも僕は大学があるから、秋田くんよろしく」と言われ、そうやって今の会社であるWASSHA株式会社が始まった。

突然の起業話に戸惑ったけど、これをチャンスと捉えて一歩踏み出すことを決意
具体的なビジネスの内容はどんなものなの?

阿部教授の技術を使って、アフリカの未電化地域で電気の「量り売り」をすることにした。そういう地域は夜になると家の中も外も真っ暗。家事も勉強もできないんだ。そこで、日本でいうコンビニのような存在の「キオスク」にソーラーパネルを設置し、太陽光発電で得た電気をバッテリーに貯める。貯めた電気は、「キオスク」のオーナーから地元の人が事前に電子マネーで払った分だけ使えるようにした。ケータイの充電に苦労しなくなったし、家で使えるLEDランタンもレンタルしているから、「電気のある生活」が実現! みんな喜んでくれているよ!

LEDランタンのおかげで、商店は夜も営業ができるようになった

アフリカで夢を叶えて5年目。楽しいこと、苦労したことは?

今、秋田さんはどんなことが楽しくて、何に苦労しているのかな?

アフリカで仕事をしていて楽しいと思うことはなに?

20歳くらいのときに理想としていたのは、いろいろな国の人が集まって、ちゃんともうけて、現地の人に貢献できることは何かをディスカッションしているような光景。「超おもしろそうだな!」と思っていたんだけど、今、タンザニアにある自分のオフィスに行くと、まさにそれが実現できている。それが超楽しいんだ!

現地のスタッフとのミーティング。20歳のときに夢見ていたことが実現している
反対に、大変だったことは?

他の人から「アフリカのへき地でよく頑張ってるね」と言われることもあるけど、僕はそうは思わない。住んでいる人たちから見ると、そこが世界の中心なんだよね。「この村に最初に来た日本人は僕だろうな」と思いながら、そこで暮らす人の価値観や生き方に触れられることがやりがいに通じるし、自分の故郷や日本を見つめ直すきっかけにもなっている。苦労があるといえば、道がデコボコで、目的地までたどり着くのに時間がかかることくらい(笑)。

アフリカの小さな村で出会う人達との交流がかけがえのない財産に

次回は、海外で仕事をする上で避けられない語学について教えてもらいます。

プロフィール

秋田 智司さん

WASSHA株式会社共同創業者/代表取締役CEO 1981年茨城県生まれ。拓殖大学国際開発学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科修了。外資系コンサルティングファームにて、新しい事業の立ち上げ、業務効率化プロジェクト等に従事、その後NPO法人ソケットを友人と共に設立し、日本企業の途上国進出を推進。ソケットの顧客であった東京大学阿部教授と共に株式会社デジタルグリッドを創業し、2016年3月より現職。

WEB http://wassha.com