コラム 地球規模で生きる人

銅冶 勇人(どうや・ゆうと)さん(株式会社DOYA)

卒業旅行で降り立ったアフリカで、
人生が動き出す!

人を笑顔にすることが好きで、スポーツや音楽の世界で活躍するアフリカ系の人たちのパフォーマンスに憧れていた少年は、大学の卒業旅行で訪れたアフリカのスラム街で、人生をかけてやりたいことを見つける。小さいころから貫いてきた“人とは違う視点”で、アフリカでの起業の道を切り開いていくリアルなストーリーを全3回でお届け。
今回は、現在のお仕事について、そしてアフリカへの想いが芽生えた学生時代に注目します!

銅冶さんの仕事ってどんなこと?

銅冶さんはアフリカを拠点に、非営利の支援活動と、利益を生むビジネスの両方をやっているよ。

銅冶さんのお仕事内容を教えて!

非営利活動法人として、まず教育支援のために学校を建設。雇用支援としては女性や障害者が自立できるように、縫製技術を学ぶための職業訓練学校を作った。そして、その技術を生かして働ける工場を運営しているよ。
現地には、柄の一つ一つに「愛」「勇気」などのメッセージが込められた伝統的な生地があって、僕たちの工場では、その色と柄を生かしたTシャツや雑貨類を製造しているんだ。その製品を日本で売るために作ったのが「CLOUDY」というアパレルブランド。これは事業として成功させなくちゃいけないから、手に取った人がとにかく欲しくなるようなカッコいいものを作ろうと頑張っている。
そして、ビジネスで得た利益の一部をNPOに戻していくというビジネスモデルを確立しているんだ。

アフリカの縫製工場では女性たちの自立支援を行いながら日本向けの製品を作っている

いろいろな人と関わるよう意識した学生時代

学生時代はどんなことに関心があってどんなことを考えていたんだろう? 世界には出たいと思っていた? みんなが気になることを聞いてみたよ。

10代のころ夢中になっていたことはある?

高校、大学時代はアメリカンフットボール中心の生活だった。365日中360日くらいやってたよ。スポーツを続けることは素晴らしいと思うし、チームメイトとして学んだこともたくさんあった。
ただ、小学校から大学まで私立の一貫校だったから、付き合うメンバーは変わらない。その狭い世界にいることに違和感もあった。世間に目を向けると、生きていくことに貪欲(どんよく)な人がいる。「世界にはいろいろな人がいるんだから積極的に関わりたい、話を聞きたい」と思って、兄の友達や先輩など幅広く交流を持つようにした。おかげで、いろいろなライフモデルを知れて、自分の中での選択肢が増えたよ。

学生時代のエピソードを楽しそうに語ってくれた銅冶さん
そのころは海外へ行きたかった?

大学生になったら、アメリカへ留学したいと思っていた。海外での生活で「何か新しいきっかけをつかめるんじゃないか。アメフトを本場の大学生たちと一緒にできればいいな」なんてめちゃくちゃ浅はかなことを考えていたんだ。
しかし、それまでやりたいことを何でもやらせてくれていた父親の反対にあった。父親は「日本でアメフトを続ければ、チームメイトと家族のような関係を作れるし、続けることで見えてくるものが絶対ある。それに日本でたいして勉強してないヤツがアメリカに行ったからといって勉強をするはずがない」と考えていた。確かにそうだよね(笑)。
今、父親と話すと、「反対したのがよかったかどうかわからない」と言うけど、僕としてはそう決断してくれてよかったと思っている。

実際にアフリカを訪れて感じたこと

今の仕事につながる出会いはいつ訪れたのだろう?

アフリカに興味を持ったのはいつ?

小さい頃、NBA(北米の男子プロバスケットボールリーグ)で好きだったのがアフリカ系のとある選手で、「この人スゴいな、カッコいいな」と憧れてたんだ。
それがアフリカと結びついたのは中学生のとき。ある日、図書館で『世界の民族』という写真集を見つけたんだ。さまざまな国や地域で暮らす人々が載っていて、「こんな人たちがいるんだ、こんな世界があるんだ」と、世界を知るきっかけになった。その中で見たアフリカの人たちの姿に、憧れのバスケットボール選手のルーツを感じ、興味を持ったんだ。

図書館でたまたま見つけた写真集で、初めてアフリカに興味が湧く
実際にアフリカには行った?

大学の卒業旅行で行ったよ。本当はアメフト仲間とハワイに行く予定だったんだけど、英語ができなかった僕は、入社予定の会社から研修を義務付けられて断念。
それならいつかやってみたかった、世界を旅行するテレビ番組「世界ウルルン滞在記」のような一人旅をしようと、ケニアのマサイ族の家にホームステイしたんだ。「文化に触れ動物を見て、何かを感じられたら」くらいの気持ちで行ったのだけど、スラム街に立ち込める匂いや、人々の手触りなど、五感で感じたインパクトはすさまじかった。これまで自分が生きてきた世界とはまったく違う。
このとき、「一生かけてやるべきこと」に出会ったと思ったんだ。僕がどんなアクションを起こしたかは、次回紹介するよ。

人々との出会いが今へとつながっていく

次回は、就職活動や社会人になってからのことを教えてもらいます!

プロフィール

銅冶 勇人(どうや・ゆうと)さん

株式会社DOYA代表取締役社長
東京生まれ。2008年、慶應義塾大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。2010年特定非営利活動法人Doooooooo創立。2014年同証券会社を退職し、翌年株式会社DOYA創立。同年9月アパレルブランドCLOUDY創設。

WEB http://cloudy-tokyo.com/