コラム 地球規模で生きる人

銅冶 勇人(どうや・ゆうと)さん(株式会社DOYA)

世界で活躍するために必要なのは、語学力よりも人間力!

人を笑顔にすることが好きで、スポーツや音楽の世界で活躍するアフリカ系の人たちのパフォーマンスに憧れていた少年は、大学の卒業旅行で訪れたアフリカのスラム街で、人生をかけてやりたいことを見つける。小さいころから貫いてきた“人とは違う視点”で、アフリカでの起業の道を切り開いていくリアルなストーリーを全3回でお届け。
最終回は、世界で活躍するために必要なものとは何なのか、学生のうちにしておいたほうがいいことなどについて教えていただきます。

学生時代に自分なりの視点を見つけよう!

就職活動のとき、仕事をするとき、銅冶さんはどんなことを自分の強みにしたのだろう? 学生時代に心がけてきたことを教えてもらったよ。

世界で活躍したい。学生時代にそう思ったら、やっておくべきことは何?

世界でも日本でも、「仕事をする」ということは、「人と関わり合う」こと。だから、「この人と一緒に仕事をしたい!」って周りの人に思わせる「人間力」が一番重要だと考えているんだ。
学生時代にあまり勉強をしてこなかったのに外資系金融会社に入れたのは、面接官が成績ではなく、僕という人間を見て、「こいつなら何かやってくれる」と思ってくれたんじゃないかな。
そう思ってもらうために学生時代に心がけたのは、授業の提出物などを人と違う視点で書くこと。今の仕事でも、ひと工夫、ふた工夫して、人と違う表現をすることに努めているよ。それが、これからのビジネスにとっても大切だと思うから。みんなも、マニュアル通りではなく、自分なりの視点を見つけてみたらどうかな?

「自分なりの視点」の大切さを熱く語る銅冶さん。

言葉や文化の壁を乗り越えるのは、実は難しくない!

世界で仕事をするときに気になるのが、言葉や文化、価値観などの違い。銅冶さんはどうやって乗り越えてきたのか聞いてみたよ。

海外で仕事をするには、どの程度の語学力が必要?

英語はもちろんできたほうがいい。でも、英語ができないからといって何かをあきらめる必要はない。実際、僕は就職活動の時点で英検4級、TOEIC350点だったけど外資系金融会社に入れたのだから(笑)。
語学力がなくても、考えていることを伝えようと努力をしたら必ず伝えられるんだ。自分が言いたいことを事前にちゃんと準備していけばいいからね。それに、仕事をしながら育むことだってできるよ。
僕は今でも語学がそんなにできるわけではないけど、アフリカの人とお互いを理解しあえていると感じる。一緒に楽しむこと、悲しむこと、喜ぶこと、そういう感情には言葉はいらないんじゃないかな。

語学力は大切だけど、気持ちで通じ合える部分もある!
アフリカで文化の違いを感じたことはある?

もちろんあるよ。あるとき、僕の工場で使っているミシンを勝手に売ってしまった人がいたんだ。そんなことがあると、「もうやめちゃおうか」なんて気持ちにもなる。
けれど、いろんなところに文化の違いやものさしの違いってあるよね。たとえば僕がアフリカに生まれて、子どもが2人いて明日食べさせるものがない。そんな状況を想像してみると、「同じことをやっちゃうかも…」と思う。
相手の思い、立場、文化をしっかり尊重し理解して考えないと、途上国でも日本でもビジネスはできないんじゃないかな。今はメールとかラインで簡単に連絡を済ませちゃうことも多いけど、顔を合わせてちゃんと会話して、相手の気持ちを感じることが大切だと思うよ。

相手の思いや文化を理解することからビジネスは始まる。

苦手なことやイヤなことに立ち向かう経験が人生の大きな財産に!

「好きなことを仕事にできていることが幸せ」という銅冶さん。そうなるためにはどうしたらいいのかアドバイスをもらったよ。

好きなことを仕事にするために大切なことは?

考えすぎずに、思いついたことをどんどん行動することが大切なんじゃないかな。
僕の場合、卒業旅行がきっかけで今の仕事に行き着いているわけだけど、そんな風にひょんなことから自分のやりたいことが見つかることもあるし、行動を起こすうちに人間関係や興味が広がっていくこともあるんだよ。
それから、苦手なことから逃げないことも大事。苦手なことに立ち向かって解決できたとき、得られるものがたくさんあるよ。好きなことを仕事にしていても、苦手なことややりたくないことは必ず出てくる。そんなとき、自分がどうやって解決していけるかは、それまでの経験に左右されるんだ。自分の成長のために必要なことだよ。

銅冶さんはアフリカへの卒業旅行が今のやりたいことにつながった。
仕事をしていくうえで大切なことって何?

人って、仲間がいてくれるからこそ、いろいろなことを達成できると思う。僕の場合、自分の能力だけでは足りない仕事は、ほかの人に助けてもらったりお願いしたりしてやってもらってる。仲間とは互いに助け合い、切磋琢磨して生きているんだけど、その中でも損得勘定が出てきて、うまくいかなくなることもある。ときには、「誰かと一緒にやるのがこんなに苦しいならもういいや」と思うことだってある。
人間って十人十色。新しい人と出会うと、「世の中にはこういう人がいてこんなこと考えているんだ」ってその人の考え方を知ることができる。そうやって人に出会っていくことで、さまざまな人の気持ちを理解できるようになる。だからこそ、人との出会いは持ち続けるべきだと思うよ。

いろんな人との出会いがあるからこそ、達成できることが増えていく。

銅冶さんが伝えたいメッセージ

「左向け左」

僕は、小さいころから普通の人が考えることはやりたくない、やっても仕方がないと思ってきたんだ。みんなと同じことを規律を守って行うことも大切だけれど、「右向け右」じゃない、自分で確信を持った「左」を示せることも重要だよ。

プロフィール

銅冶 勇人(どうや・ゆうと)さん

株式会社DOYA代表取締役社長
東京生まれ。2008年、慶應義塾大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。2010年特定非営利活動法人Doooooooo創立。2014年同証券会社を退職し、翌年株式会社DOYA創立。同年9月アパレルブランドCLOUDY創設。

WEB http://cloudy-tokyo.com/