第112号 PARTNERコラム
人との出会いを重ねて築いたアフリカ高等教育協力のキャリア(前編)

職場は、ケニアの首都ナイロビから50kmほど北上したジュジャという街にある、国立ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)です。青・緑・赤を基調とした正面ゲートを構える同大は、日本の協力によって1979年に高等専門学校として設立され、そこからJKUATと日本の関係は始まります。その歴史の詳細は書籍『アフリカに大学をつくったサムライたち ジョモ・ケニヤッタ農工大学物語』にて知ることができます。

私は、第105号 PARTNERコラム『主夫 兼 国際協力NGO代表 ~ケニアからシリアを支援する~』に登場する「JICA専門家として働く妻」で、JKUATにてJICAが実施する技術協力プロジェクトに、業務調整/高等教育機関ネットワーク形成専門家として従事しています。教育協力の中でも高等教育協力と呼ばれる、いわゆる大学や高専を協力対象機関とする分野に携わっています。私が“アフリカの高等教育協力”に関わるまでには、4つのターニングポイントがありました。

①アフリカとの出会い
2000年代半ば、高校2年生で進路を考えていた時に今でも忘れられないテレビのCMが私をアフリカに導く契機となりました。TVの中には「山をいくつか越えないと行けないから学校には行っていないの」と話す6歳くらいの子が映っていました。両親のおかげで何の不自由もなく小学校も中学校も、高校は私立のいわゆるお嬢様学校にまで通わせてもらった私にはあまりにも衝撃過ぎる一言でした。 すぐさま統計局のHPでアフリカ地域の就学率や識字率を調べたところ、成人識字率の低さに驚愕しました。同じくらいの年齢で日常生活に必要な読み書き計算ができない世界は16歳の私には想像もできない世界で、まずは自分の目で、どんなところなのか見てみたいと思ったことが私の最初のアフリカとの出会いでした。

②「あなたに途上国の教育を変える権利はない」「あなたは女の子だから途上国には行かせたくない」
まだ見ぬアフリカと出会って以降、「国連でアフリカの教育を変えたい!」と意気込んで大学生活を送り、3年生進級時のゼミ選択で、開発途上国の教育開発に関する勉強ができる先生の下で学びたいと志願しました。すると先生からは「あなたに途上国の教育を変える権利はない」と衝撃的な一言が返ってきてしまい、途方に暮れることになりました。(いま振り返ればこの言葉の意味を理解することはできますが!)

同時に、アフリカを自分の目で見て、肌で感じることも必要だと考えていたため、国際ワークサマーキャンプに申し込んでケニアに行く準備をしていました。申請間際、両親にそのことを伝えると「あなたは女の子だから途上国には行かせたくない」の一言でアフリカ行きの道も絶たれてしまいました。2008年、ケニアでは大統領選挙の後に大きな暴動が起き、その直後に渡航予定でした。治安状況としては素人が飛び込むにはいい状況とは言えなかったため今では止めてくれた両親に感謝です。
それでも、やはりアフリカでの教育協力への想いは捨てきれず、自分がアフリカで出来ることを見つけるためにも、どうしたら両親が納得してアフリカ行きを許してくれるか必死に考えました。いずれ必要になるであろう修士号を取るための研究でアフリカに行くことになれば、反対されないだろうと思い、大学院受験を決意しました。結果、念願の大阪大学人間科学研究科でケニアの教育開発研究をされている澤村信英教授に師事し、大学院2年生の時に初めてケニアの地に足を踏み入れることになりました。

修士論文執筆のためにケニアで調査した際に受入れてくれたホストマザーのレベッカ(小学校教諭)。今でも家に招待されケニア料理をたっぷり振舞ってくれます。
修士論文執筆のためにケニアで調査した際に受入れてくれたホストマザーのレベッカ(小学校教諭)。今でも家に招待されケニア料理をたっぷり振舞ってくれます。
↑2週間ほどマサイの村にある小学校で調査をしていた時にお世話をしてくれた小学校8年生の子たち。彼女たちが話してくれた学校生活や友人関係、家族のことなどを基に修士論文をまとめました。
↑2週間ほどマサイの村にある小学校で調査をしていた時にお世話をしてくれた小学校8年生の子たち。彼女たちが話してくれた学校生活や友人関係、家族のことなどを基に修士論文をまとめました。

残り2つのターニングポイントについては次回ご紹介します。

ケニア ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)
AFRICA-ai-JAPAN プロジェクト
十田 麻衣

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