システム開発現場でSEスキルを高めながら国際協力に関わる。

秋山 真莉さん

民間企業 株式会社TOKYO 30代

  • JICA 技術協力プロジェクト専門家(技術移転型)
  • 情報通信技術
  • キャリア年表

    大学学部生

    2003~2007年

    情報工学を専攻。

    民間企業

    2007~2010年

    大手SIerにてインフラ系SEとして、金融関連のプロジェクトでシステム開発、運用/保守に関わる。

    海外協力隊

    2010~2013年

    PCインストラクターとして、中高一貫校のコンピュータコースの授業及び全校生徒向けのICT授業を担当。

    民間企業

    2013~現在

    (株)TOKYOでSE/ITコンサルとして、ITインフラやアプリのシステム開発、IT教育に関わる。

    JICA専門家

    2014~2017年/2019~現在

    ナミビア、インドネシアで業務調整やサイバーセキュリティ専門家としてJICAプロジェクトに関わる。

    協力隊での出会いで広がったキャリアの可能性。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    小さい頃からパソコンを触るのが好きで、理系で手に職をつけたいと思っていたこともあり、大学では情報工学を専攻しました。国際協力への関心は、学生時代に海外協力隊(※以下、協力隊)に興味があった友人に連れられて受講した「民族と紛争」という講義で、協力隊の存在を知ったことがきっかけです。それまでも、漠然と海外で仕事をしたいという思いはありました。協力隊には社会人経験を積んでから参加しようと思ったこと、また国際協力に限らず海外勤務のチャンスがあるかもしれないと期待して、大学卒業後はシステム開発などを行うシステムインテグレーション企業(通称:SIer※1)に就職しました。
    (※1)企業や行政の情報システムの構築、運用などの業務を一括して請け負う事業者。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    最初に就職した企業ではシステムエンジニア(SE)としてITインフラのスキルと、関わった金融系の業務知識を身につけました。退職を機に学生時代から気になっていた協力隊に挑戦し、帰国後、PARTNERで見つけた現在の勤務先に入社しました。小さな会社ですが、ICTを通じて世界に貢献することを企業理念としていて、協力隊の経験もSEの経験も活かせると思いました。実際、IT系で国際協力に関わりたい人たちが集まり、現在の社員は全員協力隊経験者です。入社後はITインフラに限らず、アプリケーション開発やIT人材の育成など色々な業務を国内の現場で経験しました。今は、会社に所属したまま国際協力の仕事をしています。

    JICA専門家になられた経緯を教えてください。

    協力隊で赴任したナミビアで出会った、国際協力に関わる方々が魅力的で憧れましたが、当時はすぐに専門家など国際協力の道に進むことは考えませんでした。ITという軸は持っていたかったので、現場でもっと力をつけようと思っていました。その後、私が国際協力に関心を持っていることを知っていた元JICAナミビア支所長が、業務調整専門家の公募ポストがあると教えてくれました。農業のプロジェクトでITに関わるものではありませんでしたが、この経験が私を国際協力に導いてくれました。JICAの案件も初めてでしたし、常に現地にいる専門家は私一人。大変でしたが、国際協力の業務を知り経験を積むことができました。人との出会いとご縁は本当に大切です。

    現在の業務についてお聞かせください。具体的にどのようなことを担当されていますか?

    現在はインドネシア・サイバーセキュリティ人材育成プロジェクトで、サイバーセキュリティ兼業務調整専門家をしています。インドネシア大学のサイバーセキュリティ社会人向け修士科目の立ち上げが軸のプロジェクトです。活動では、チーフアドバイザーやカウンターパートとともにカリキュラム立案やオープンソースツールの開発支援、インドネシア以外の第三国に対する研修などを行っています。新型コロナウイルスの影響で日本に帰国後は、遠隔でプロジェクトを続けています。現地の秘書とテクニカルスタッフを採用し、彼らに現場で動いてもらいオンラインでの研修や教材作成をしています。オンラインでも業務は行えていますが、早く現場に戻りたいですね。

    JICA専門家のお仕事や、ICT分野で国際協力に関わる魅力は何でしょうか?

    私が感じる一番の魅力は「何事も上手くいかないところ」です。どう調整すれば活動が上手くいくのか、どのようなツール、フレームワークを使えば必要十分かつ継続性のある技術移転が可能か、など日々壁にぶつかりながら考え続けています。また途上国の現場で、技術動向をキャッチアップすることもあります。インドネシアは新サービスをどんどん導入していて、日本より進んでいると思うこともしばしばです。加えて途上国ではセキュリティ対応が追い付いていない面もありますが、そこから法律の必要性を学ぶこともあります。全く違う文化に身を置くことも面白いですね。IT分野でも文化でも、日本の良さに改めて気付きます。常に新しい刺激がある、そこが魅力です。

    ICT分野での国際協力キャリア形成につき、アドバイスをお願いします。

    アプリケーションでもITインフラでも、システム開発の現場経験と技術力が重要だと考えています。経験を補うため、資格取得を通じた勉強も進めてきました。ICTの基礎力を持ったうえで、新しいことをスピーディに学ぶ力、また既に知識のある人から学ぶことも必要です。協力隊後は国際機関での仕事を念頭に、ICT4D(※2)を学ぶ留学や大学院進学も考えましたが、国内でSEの仕事をしながらJICA専門家など海外での仕事に挑戦できる環境に恵まれました。日々新しいトレンドが作られ淘汰されていく中、日本でSEの経験を積めたことが、今のキャリアにとって良い方向に働きました。国際協力では、技術力をどう活かすかという幅広い視点や他分野の知識も必要です。
    (※2)開発のための情報通信技術(ICT for Development)

    国際協力を志す方へのメッセージ、またICT分野の展望やご自身の目標をお聞かせください。

    どの分野の専門性を持って国際協力に挑むのか、不足する知識・経験は何かを洗い出すことから私は始めました。技術力だけでなく、コミュニケーション力も大切です。また元々ICT分野、サイバーセキュリティ分野は人材不足とされてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、リモートワークやキャッシュレスが進み、さらなる人材不足が予想されます。様々な国際協力の分野でもICTの利用が増え、色々なチャンスがやってくると思います。ICT分野は様々な分野の基盤となるもので、ビジネスなどどのような関わり方をしても社会貢献に繋がると感じます。私自身は、これまでの経験が次に活きるよう、サイバーセキュリティ分野とマネジメント力の強化を図っています。


    ※本記事は、2020年12月時点での情報となります。

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