第9号 連載コラム SDGs達成に向けた活動を支援する「SDGs-SWY」

若者によるSDGs達成を支援すべくNGOを設立

(立ち上げたNGOのロゴマーク、2018)

持続可能な開発目標(以下、SDGs)が採択されて数カ月が経過した2016年2月、私は内閣府が主催する「世界青年の船」に乗船していました。この事業は、各大陸11ヵ国を代表する18歳から30歳の青年が、2カ月弱の船上研修を通じて、グローバル・イシューについて議論しながら、異文化対応力やコミュニケーション力を高め、国際化が進む各分野で、リーダーシップを発揮することができる青年の育成を目的とする国際交流事業です。私が参加した当時は、インドとスリランカを訪れ、いわゆる開発途上国の社会課題について、各国青年と熱い議論を交わした思い出が今でも鮮明に残っています。こうして、国連の機能やSDGsに関して船上で議論する中で、私は 2030年に 社会の重要な役割を担う年齢に差し掛かる自分達の世代が、ほとんどSDGsに関する取組に関わっていないのではないかという危機感を感じました。そして、船上で有志を募り、スリランカやメキシコの青年とともに、SDGs-SWYという団体を立ち上げました。

当時の私は、市役所に勤める地方公務員で、SDGsに関して国連でどのような議論がされているか詳細に把握していた訳ではなく、UNMGCY(United Nations Major Group for Children and Youth)という若者を代表するグループが、2030アジェンダに若者を代表した意見を反映すべく奔走していた事実すら、しばらく経ってから知ることとなりました。しかし、いずれにせよ、SDGs達成に向けてオーナーシップを持って取り組む若者は、私の知る限り存在しなかったことで、「自分がやらなければ、誰がやるんだ」という思いが沸き起こり、行動を起こしました。

多くの方々に支えられて、活動は広がっていく

(国連本部でのインタビュー、筆者右から2人目、
2018)
(HLPFで配布した自治体SDGsマップ、2018)

こうした経緯で動き出したSDGs-SWYは、理念に賛同してくれた仲間の加入を得て、ウェブサイトも開設しました。ウェブサイト上では、SDGs達成に向けて第一線で取り組む先駆者へのインタビュー記事を掲載することで、現役世代の知見や思いを次世代につなぐことを意図しています。このインタビュー企画には、ヘレン・クラーク氏(元ニュージーランド首相/前UNDP総裁)をはじめ、国連職員や国内自治体の首長など多くの方々から多大なるご協力をいただいており、SDGs-SWYのメンバーにとっては、インタビューの機会自体が成長の場になっています。そして、2018年7月には、SDGsの進捗を議論する場である「ハイレベル政治フォーラム」にも参加し、最先端の議論に触れるとともに、日本の自治体の取組をまとめた「自治体SDGsマップ」を作成して関係者に配布し、日本の取組を世界にアピールすることに成功しました。こうして得た経験を、大学の授業や各地で開催されるイベントで共有させて頂くなど、団体としての活動をインプットからアウトプットにつなげ、循環させることができています。さらに今年は、朝日新聞社主催の「大学SDGs ACTION! AWARDS」に連携協力することで、同世代のSDGs達成に向けたアプローチを支援することも叶っています。まさか団体自体がこのように成長するとは想像もしていなかったことで、嬉しい出来事です。

(都内大学での授業、筆者中央、2018)
(国連大学IAS-OUIKでの講演、筆者左端、2018)

国際協力へのアプローチとは

私個人の意見として、国際協力へのアプローチは人それぞれで良いのだと思います。自分はひょんなことからNGOを立ち上げ、SDGsという世界の共通言語を通じた国際協力に取り組んでいます。とはいえ、繰り返しになりますが、3年前に感じた「自分がやらなければ」という小さな思いが、多くの人々を巻き込んで、どんどん成長していくことになろうとは思いもしませんでした。しかし、団体を立ち上げるという小さな一歩がなければ、SDGsを通じて出会った多くの人に出会うことはできませんでした。国際協力と聞くと難しいことを考えてしまいそうですが、自分たちの生活は国際社会の一部であり、幅広い視野を得ながら、自分にできることを続けていけば良いのではないでしょうか。そして、簡単そうに見えて案外一番難しいのは、「最初の一歩を踏み出すかどうか」ではないかと思います。だから自分は、国際協力の「最初の一歩」を踏み出そうとしている人を心から応援したいと思っています。

SDGs-SWYウェブサイト( https://sdgswy.wixsite.com/home

【略歴】

NPO、民間企業を経て、2012年から神奈川県大和市の職員として、住民協働、厚木基地対策、待機児童対策等を担当。17年9月に退職後、博士後期課程進学と同時に渡米。ニューヨークを拠点として、1年間にわたり「自治体におけるSDGsのローカライズ」に関する調査研究を行う。その間、国連訓練調査研究所(UNITAR)による「SDGsに関する評価とリーダーシップ研修」を日本人で初めて修了。2019年2月から現職。鎌倉市SDGs推進アドバイザーのほか、ミレニアル世代を中心にSDGs の達成に向けて取り組む団体、SDGs-SWYの共同代表も務める。

高木 超
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教
SDGs-SWY 共同代表

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