第60号 PARTNERコラム選択肢は一つとは限らない国際協力の仕事

私は現在、日本国際ボランティアセンター(JVC)というNGOの東京事務所でパレスチナ事業を担当しています。前職は看護師だったので、周りからは「もう看護師の仕事はしないの?もったいないよ」と、今でもよく言われるのですが、自分では看護師から国際協力の仕事に転職したことに対してあまり違和感はありません。

私が国際協力に関心を持ったきっかけは、幼い頃、テレビで自分と同じくらいの年齢の子どもたちが飢餓や紛争で苦しんでいる姿を見たことでした。子どもながらに「生まれた場所が違うだけなのになんて不平等なんだ…」とすごく悲しい気持ちになり、それから看護師を目指すようになりました。その頃から私は、「自分の生まれた国の環境によって罪のない人たちが悲しむことや苦しむことが少しでも減って、みんなが安心して平穏に暮らせるようになったらいいな」と考えていました。

その後、希望した救命救急センターに配属され、数年後には緊急医療支援に参加する予定でしたが、様々な患者さんの生死を目の当たりにする中で、人間の尊厳について見つめ直したいと思うようになりました。「一人一人がどう生きるかを自分で選択できるように、私が手助けできたら」という思いが強くなっていったのです。

そんな気持ちの中、私が次のステップに選んだのは海外協力隊でした。今考えてみれば、一番のターニングポイントはここだったのだと思います。健康教育の普及のために私が派遣されたのは、南米パラグアイの片田舎にある14床しかない小さな地域病院でした。

人懐っこくて純粋なパラグアイの子どもたち
写真:人懐っこくて純粋なパラグアイの子どもたち

私は主に健康啓発活動を行っていたのですが、現地で生活し、活動する中で見えてきたのは、人々を取り巻く問題の複雑さでした。保健・医療サービスへのアクセス一つを取っても、政治、経済、教育、インフラ、様々な問題が絡んでいます。その人の置かれている状況や立場によって必要な支援は変わってくるということを実感しました。「私は分野を絞らずに、より包括的な活動に携わりたい」と思い、その考えは現在も変わっていません。

NGOの保健師、ボランティアの人たちに会うと笑顔になれる
写真:NGOの保健師、ボランティアの人たちに会うと笑顔になれる

今思うと、医療は自分が目指す国際協力に対する一つのアプローチに過ぎなかったのかもしれません。一見、回り道に思えても、看護師の経験がなければ日本国際ボランティアセンターのパレスチナ事業には就いていないので、今の仕事に生かせていることは多いです。一方で、私は看護師の仕事が嫌になったわけではないので、看護の現場に復帰することも選択肢の一つとしてあると思っています。これからも様々な選択肢の中からチャレンジし、学びながら自分に出来ることを選んでいきたいと思います。

日本国際ボランティアセンター(JVC)
海外事業部 パレスチナ事業担当
大澤みずほ

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