プロジェクトの円滑実施のため、国や人をつなぎ調整。
バラダ みどり さん
国際協力機構(JICA) / JICAヨルダン事務所 /
キャリア年表
大学学部生
1999~2003年
国際関係学科で開発経済学を専攻。
在学中にWFPバングラデシュ事務所やWFP日本事務所でインターン。
民間コンサルタント会社
2003~2005年
日本の民間企業の経営改善のプロジェクト監理に携わる。
アジア経済研究所開発スクール
2005~2006年
開発学ディプロマを修了。
アジアの行政官や日本人学生とともに学ぶ。
ロンドン経済政治大学院(LSE)及び パリ政治学院
2006~2008年
行政学修士号を取得。
在学中にアフリカのNPOでインターン。
JICA専門嘱託
2011~2012年
JICA東南アジア・大洋州部にて勤務。
ラオス向けの円借款事業(主に電力)の案件形成をメインに、技術協力案件(公共政策、財政管理等)も担当。
大使館専門調査員
2013~2017年
在レバノン日本大使館専門調査員として、レバノンに対する経済協力を担当。
JICA企画調査員
2017年~現在
JICAヨルダン事務所にて、産業人材育成・雇用機会拡充のための案件形成・監理に携わる。
自ら考え行動できる仕事。「ワークとライフ」どちらも追求。
現在の業務を、どのように選ばれましたか? これまでのキャリアの積み方(勉強<大学・院での専攻、留学>や経験、職歴)、キャリア選択における軸や考え方をお聞かせください。
大学で開発経済学を専攻し、国際協力に関心がありましたが、まずは社会人としての経験を積みたいと考え、
ITコンサルティング企業に就職しました。日本の民間企業の経営改善のプロジェクトに従事し、大きなプロジェクトだと200人以上が常駐し、常にクライアントの方と顔を合わせていました。規模の大きなプロジェクトを進捗管理しながら進めていく業務は、JICAの案件監理と類似しています。
そのまま同じ企業で経験を積みたいとも考えましたが、大きなプロジェクトが終了したタイミングで、アジア経済研究所開発スクール(Institute of Developing Economies Advanced School/以下、IDEAS)の募集を見つけました。国際開発に携わりたいとの気持ちを持ち続けていたため、進学を決意しました。
IDEASでは、アジアの行政官や日本人学生とともに学び、開発とは何のためにするのかを問われる日々を過ごしました。また、開発の観点から日本の戦後復興について学ぶなど、大学では得られなかった知識を凝縮して学ぶことができました。修了後は海外の大学院に留学し、行政学修士号を取得しました。
大学院卒業後に結婚・出産し、育児に専念しましたが、職場復帰したいと思ったところJICA専門嘱託のポストを見つけました。在学中にWFPバングラデシュ事務所やアフリカのNPOでのインターンを経験しましたが、国際協力のプロフェッショナルとして働いたことがなかったため、応募しました。続いて、在レバノン日本国大使館の専門調査員としてレバノンに対する経済協力に携わった後、現在はJICA企画調査員としてJICAヨルダン事務所で勤務しています。
JICAの仕事に関わるのは2回目ですが、今回の応募に至ったきっかけは、本部で専門嘱託として勤務していた時に企画調査員の方にお世話になった経験です。現場の活動の円滑な実施のために日本と相手国の間の調整を行う企画調査員の仕事に自分もチャレンジしたいと思い、応募しました。
現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?
JICAヨルダン事務所で産業人材育成・雇用機会拡充のための案件の形成と監理を担当しています。
ヨルダンでは失業率が約19%と高く、特に若年層の失業率は約37%となっており、失業対策が大きな課題となっています。JICAも雇用分野や民間セクター支援に力を入れており、若者の就業支援や職業訓練公社の能力強化などの案件を実施しています。
また、産業の少ないヨルダンでは、観光業が外貨獲得や雇用創出のポテンシャルの高い産業として認識されており、JICAはヨルダンの観光振興も支援しています。(※2)
現在は主に、これらの分野でJICAが現在実施している協力事業の実施支援と、今後の協力内容の検討に携わっています。
雇用・民間セクター支援の分野に関心を持たれたきっかけは何でしょうか?
人が尊厳をもって自立的に生活していくためには仕事が不可欠です。JICA本部や在レバノン大使館での勤務を経て、若者の失業が大きな課題である中東地域での日本の協力に関心を抱きました。そのため、雇用・民間セクター支援の分野で働きたいと考えました。
現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?
ヨルダンでの仕事はちょうど2年が経過するところですが、特に印象的だった仕事は、ペトラ博物館の開館支援(※3)です。
2018年9月末、JICAの支援により、ヨルダン最大の観光地であるペトラ遺跡の入り口に新たな博物館が建設されたのですが、開館までこぎつけるのは苦労の連続でした。博物館の建設は無償資金協力、展示コンテンツの開発は技術協力プロジェクト、遺物の設置等の最終準備は個別専門家が支援したのですが、様々なスキームが入り組む中、多様な関係者との調整が求められました。また無償と技プロチームは契約期間等の関係で2018年10月には現場を離れてしまったので、自ら先方政府と協議をしながら開館までの対応事項の洗い出し、スケジュール管理、展示コンテンツの最終化等を進める必要がありました。博物館のパネルについては、試作品の修正やチェック等を繰り返し、週末にも業者から電話がかかってくることがありました。2019年4月にようやく開館し、開館日に多くの来館者が入場するのを見届けた時には、感慨深かったです。
企画調査員の業務の魅力としては、沢山の人にお会いできることと、自ら考え行動することができることでしょうか。また、自分自身2人の子供を育てながら仕事をしていますが、ワークライフバランスを追求することができるのも魅力の1つだと思います。
2人のお子さんがいらっしゃるとのことですが、国際協力の仕事と子育ての両立はいかがですか?
民間企業やJICA本部での経験から、日本では育児とのバランスをとるのが難しいと感じました。遅くまで子どもをみてくれる学童も少ないですし…。
JICA本部勤務の際は、長女が3歳だったため出張など特に大変でしたが、家族や直属の上司のサポートがあり、助かりました。
むしろ、海外駐在では自分で時間をマネジメントできると思います。大使館やヨルダン事務所での勤務では、残業も比較的少なく、家族との時間をつくることが出来ています。お手伝いさんを雇うことができるのも助かります。また、まとまった休暇を取ることが出来るのも便利です。夫は民間セクター(IT分野)で主に中東北アフリカを対象とした事業を担当しており出張が多いですが、週末にはヨルダンに来てもらい、家族全員で過ごしています。
今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。
引き続き雇用や民間セクター支援分野で経験を積んでいきたいと考えています。家族の仕事や教育の面でも良い環境の仕事に巡り合いたいと思います。
今回の企画調査員の業務を経て、現地でどのようにJICA協力事業の検討が行われ、各案件が実施されているのかを知ることが出来ました。現在の仕事の後、どのような仕事に就けるかは未知数ですが、仮にJICA案件の専門家等の仕事に就けた場合には、本部、事務所双方でのこれまでの業務経験を活かしつつ、案件の開発効果が出るように取り組みたいと考えています。
国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。 (キャリア選択・形成のアドバイス、考え方、分野を選ぶポイントなど)
国際協力のキャリアパスには王道はないと思います。日本の第一線で働いている方がキャリアチェンジの末に国際協力業界に入ることもありますし、「途上国で専門知識を生かしたい」とかねてから国際協力業界を目指している方もいらっしゃいます。この業界に限らずとも、民間企業でも国際協力に関わることはできます。
日本は人材や技術などいいものを沢山持っていますが、その良さが必ずしも海外に伝わっているとは限りません。戦後、日本は人的資産を最大限に活用したうえで再興してきました。その技術や経験を、開発課題を抱えている国に移転できれば良いと思います。最近は自国主義を主張する国も増えてきましたが、国際的な調和と協力を通じて相互理解を深めつつ、協力していく方向にシフトするべきです。日本の若者の皆さんにも、自国だけではなく世界に視野を広げ、途上国とお互いに学びつつ、一緒に向上していくというマインドを大切にしてほしいです。JICAの技術協力プロジェクトを見ていると、専門家の方々が現地のカウンターパートとFace to Faceで、非常に苦労しながら技術移転をしていらっしゃるのが印象的です。チャレンジングではありますが、こういった点が日本の支援のいいところだと思います。
世界を視野に入れつつ、オープンマインドで頑張ってください!
- ※1 若年層へのキャリアカウンセリング能力向上プロジェクト。ヨルダンの失業率は15%(2018年)と高く、人口の7割が30歳以下の若年層であり、若者の雇用機会の拡大が急務となっている。本プロジェクトでは、若年層に対するキャリアカウンセリングサービスの質・量の充実、求職者と雇用者のマッチングの促進のため、各地の雇用事務所(日本のハローワークに該当)と大学のキャリアガイダンス・オフィスの能力強化を支援している。
- ※2 ヨルダンにおけるJICAの取り組みについてはこちら: https://www.jica.go.jp/jordan/
- ※3 ペトラ博物館建設計画の概要はこちら: https://www.jica.go.jp/oda/project/1360900/index.html
- ※4 ヨルダンではハイブリッド自動車(HV)及び電気自動車(EV)の利用拡大を後押しするために税の優遇措置が取られ、国内では多くのHV及びEVが利用されている。一方で、国内のHV/EVのメンテナンス技師の養成は質・量ともに不十分であるため、本プロジェクトでは、技術教育機関の指導員研修を日本で実施。
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