青年農業者を育てたい。ビジネスとボランティアの両軸でアプローチ。

佐藤 高央さん

民間企業 (株)農園たや 30代

  • 民間企業
  • 農業開発/農村開発
  • キャリア年表

    大学学部生

    2004~2007年

    国際関係学部で南アジアの言語や歴史を学ぶ。(卒業研究:大豆は世界を救う)

    日本農業実践学園

    2008~2009年

    野菜栽培の基礎を実践レベルから学ぶ。

    海外協力隊

    2010~2012年

    ボリビアの農村、標高4000mの高地で野菜栽培指導をする。

    (株)農園たや

    2012年~現在

    野菜栽培を行いながら、農園のインドネシア実習生に任意団体「YAYASAN」にて指導を行う。

    インタビュー

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    高校受験を控えた中学3年生の時、自分は進路のことで考えにふけっていました。何のために生まれて何をして生きるのか、人生の命題となるものを探していたんだと思います。当時の自分にとってはとても大きな悩みで、答えの見つからない日々を過ごしていました。そんな時、一休上人の生き様を特集したテレビ番組を見て、自分の悩みなんてちっぽけなものだと感じました。それよりも世界にはもっと困っている人たちがいる、そんな人の役に立つために世界で働ける仕事に就きたいと思ったのが最初のきっかけです。

    現在の業務を、どのように選ばれましたか? これまでのキャリアの積み方、キャリア選択における軸や考え方をお聞かせください。

    大学時代、海外にボランティア活動に赴いたとき、自分には技術がないこと、気持ちがあっても知識がなければ役に立てないということを痛感させられました。その後、食料問題の授業を受けて農業に興味を持ったことがきっかけで、日本中を回って何軒もの農家の見学をしたり、農水省のインターンに参加したりしました。実家が農家ではないので、基礎知識もほとんどありません。そんな状態から約一年間農業についてじっくり学び、実践的な知識を身につけることを目指しました。

    その後、海外協力隊としてボリビアに派遣。野菜栽培指導を行う中で、地域を良くしていくのはその地域に生まれ育った人間であると感じ、「現地の青年を育てる農園を作りたい」という思いが芽生えました。また「一人でやるよりも同じ志を持つ仲間と一緒にやりたい」と思い、帰国後自分に合う会社を探した結果、海外協力隊進路相談カウンセラーからの紹介で今の会社への就職を決めました。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    自分にとっての農業は「ビジネスとしてのアプローチ」と「ボランティアとしてのアプローチ」の二つの側面があります。ビジネスとしては、農園たやで主に葉物野菜の栽培を担当しています。他にも野菜ソムリエの資格を元に、「ベジラボ。」という野菜ソムリエユニットに所属。飲食店へのメニュー提供や、イベントなどで野菜の魅力を伝える活動もしています。
    ボランティア活動としては、農園たやの有志メンバーによる任意団体「YAYASAN」にて日本の農園で働くインドネシアの実習生に、帰国後の営農を助けるための勉強会を行っています。私はその中で野菜の食べ方や栄養などの授業と、彼らが帰国に向けて必要な研究発表の指導も行っています。また、海外協力隊福井県OB会にて企画委員としても活動しています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    野菜栽培において基本的に大事なことは計算ですが、自然相手の仕事はこの計算通りにいかないことが非常に多いです。その計算通りにいかない自然現象をなんとか数値化して、次世代に繋げるような挑戦をすることが私のやりがいです。また、インドネシアの実習生に卒業研究の指導をしていると、教えている立場なのですが実は彼らの熱心な姿勢から、私自身も教えられることがたくさんあるのです。

    国際協力というと援助する側される側という見方をされる方もいると思いますが、私にとっての国際協力とは「切磋琢磨」です。お互いに気づき、学び合っていくことが大切だと、彼らと関わる中で実感させてもらってます。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    農園たやはJICA海外協力隊の民間連携協定を結んでいます。それにより、海外協力隊のスキームを活用して農園スタッフをインドネシア実習生を派遣してくれているタンジュンサリ農業高校に派遣することも行っています。派遣予定の農園スタッフとインドネシア実習生。双方に正しく農業指導をするためにも、母体である農園たやを大きくしていくことが当面の目標です。

    そのためには、ただ単に担当している品種を栽培するだけでなく、商品開発や新規顧客の開拓など多岐にわたる業務をこなしていかなくてはなりません。インドネシア実習生の子たちへの指導も、毎年少しずつ内容が変わっています。彼らの指導のためにも、知識や技術を常に最新の状態に保つように自己研鑽を積むことが大切だと感じています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    私の現在のキャリアは少し特殊だと思っています。農業法人で国際協力活動を行っている団体はあまりありません。通常、国際協力と言うと専門家やNGOなど外国で仕事をすることをイメージするでしょう。
    私も最初はそのような形で国際協力に関わることを望んでいましたが、海外協力隊として現場を見てきたことで、それだけで本当に役に立てるのかという疑問を持って帰国しました。現在はビジネスとしての農業で自分の生計を立て、ボランティアとしての農業で現地の青年農業者を育てるという活動にたどり着きました。
    国際協力は、分野も活動も多種多様です。所属している団体の業務を全うすることも大切ですが、そこにある問題を解決するために一人一人が自分なりのやり方を見つけられると良いのではないかと思います。

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