途上国の教育改善に政策レベルから関わる。

塩田 恵さん

開発コンサルティング企業 株式会社パデコ 40代

  • 開発コンサルティング企業 コンサルタント
  • 教育
  • キャリア年表

    大学学部生

    1998~2003年

    英文学専攻。中学校・高等学校教員免許(外国語)取得。在学中、米国の大学で語学研修、英国の大学へ留学。

    大学院生

    2003~2005年

    教育開発学専攻。バングラデシュの教育政策を研究。JICA在外事務所や国際機関で短期インターンを経験。

    開発コンサルタント

    2005~2006年

    教育、人材育成分野の業務を担当。

    教諭

    2006~2007年

    所属の開発コンサルタント企業から都立高校に出向。英語の授業及び校務、生徒指導を担当。

    開発コンサルタント

    2007年~現在

    教育分野の技術協力案件、調査案件、プロジェクト管理業務を担当。
    第1子産休・育休(1年間)
    第2子産休・育休(1年間)

    夫婦で出張期間を調整、時差・時短勤務も活用。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    大学学部生の頃のバングラデシュ訪問が直接的なきっかけです。ノンフォーマル教育を支援する現地NGOのスタディツアー中、ホームステイした農村の学校視察で目にしたのは、壁もない屋根だけの小屋で、若い教師が小さな黒板のみを使ってアルファベットを復唱するばかりの英語の授業でした。この教師の授業の改善のために何か協力できないか、英語教師を目指し勉強していた自分に何ができるかと、必死に自問自答しました。その後時を経て、大枠の国の教員制度を改善できれば、より多くの同じような境遇の教員が、より質の高い授業をすることができるようになるという考えに至り、将来は何らかのかたちでそうしたお手伝いができる人材になりたいと思うようになりました。

    現在の業務を、どのように選ばれましたか?

    スタディツアーを経て大きな課題や目標を見つけたものの、海外で仕事をするには語学力も専門知識もまったく足りない。まずは学部在籍中に英国へ留学しました。留学先(教育学部)では、英国の教育政策や行財政、開発学などを勉強し、討議や発表、論文執筆などに励みました。帰国後は、アジアに焦点をあてて教育開発学をより深く学ぶために、日本の大学院へ進学しました。
    大学院では、バングラデシュの教育政策を研究する傍ら、JICA在外事務所やUNESCO本部での短期インターンに応募して、国際協力分野の仕事を体験する機会を得るよう努めました。その後の就職活動ではコンサルタント職を希望し、教育分野で新卒採用をしていた企業に入社しました。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    開発コンサルタントとして、教育分野のプロジェクトや調査に従事しています。現在担当している主な案件は、カンボジアの教員養成大学設立を支援する技術協力プロジェクト(2017~2022年)です。この案件では、教員養成課程をより高度なレベルにするために、学士化に向けた政策策定や大学運営、シラバス開発などを支援しています。私の役割は、副総括/援助協調で、現行の2年制課程を段階的に4年制に移行するための政策策定の支援、カンボジア教育省や他の援助機関との調整、プロジェクト全体の業務管理をしています。その前は、ルワンダ、ガーナ、イエメン、バングラデシュの基礎教育案件や、パレスチナ、フィジー、フィリピンの業務に携わりました。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    カンボジアの案件では、カウンターパート(教育省職員や大学の先生方)と一緒に課題を特定し、状況に見合った解決策を協議し、実行するのをサポートしています。教員の能力向上から給与改定といった制度上のことまで多くの課題が浮上しますが、どれも一筋縄ではいかず中長期的な働きかけが必要なことばかりです。チャレンジする過程はとても面白く、やりがいを感じます。問題解決に向けて一歩前進し、カウンターパートが自信をつけたり笑顔で喜んでいるときなど、協働できたことを幸せに思います。また、様々な援助機関と互いの強みや立場を尊重しつつ、教育省が政策を立案する支援ができることにも、この仕事のダイナミックさを感じます。重責ですが、その過程から多くを学べます。

    ワークライフバランスをどのように実現されていますか?

    所属先は育児・介護休暇を取得する方が多く、仕事との両立が難しい期間に時差出勤や時短勤務を認めてもらえるなど、働きやすい風土があります。私も育児休暇を二度取得し、復帰後の働き方は手探りで進めてきましたが、こうした会社の制度とともに家族の理解とサポートがあってこそでした。私は3~4週間ほどの長期出張、別業界で働く夫は数日~1週間の短期出張があるので日々調整が大変ですが、私の出張中は家族が(主に実母が遠方から来て)家事を引き受けてくれ、国内業務時は家事や子どもの送迎・習い事を夫婦で分担しています。実母をはじめ、親戚家族・学校・学童・保育園など事情を理解して支えてくださる方々のおかげで、子どもたちもたくましく育ってくれています。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    今後も、現在のような業務に真摯に取り組み経験を積んで、各国の教育制度や教育活動を改善する一翼を担うことができたら、とても幸せです。
    コロナ禍が起きて、世界的にワークスタイルが大きく変化する今後、対面中心だった途上国への技術移転も、遠隔で実施する局面が増えることでしょう。自分の生活においては、年に半年ほど家族と離れて仕事をしていたのが、より長く家族との時間を持ちつつ現場と距離の近い仕事ができる環境が整うかもしれません。これはとても大きな変化です。変化する社会の可能性と限界を見極めて、相手のニーズはどう変わるか、自分の立場で何ができるのか俯瞰する視点を大切に、柔軟に経験を積みたいものです。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    開発業界では、各分野で熱い思いを持つ精鋭がたくさん活躍しています。年代・性別を問わず優秀な方ばかりで、一緒にお仕事をするなかで学びがあり、刺激的です。社会開発分野では、女性も多く活躍されていて励みになります。私は子ども二人の育児に追われつつ働く身ですが、いろいろな立場の方がいて互いに理解しあえる風潮があり、個々の強みを生かしたチームワークができる業界と感じます。
    ポスト・コロナ社会では、より自由な働き方ができるでしょうし、例えば育児で現地に行けないから現場の仕事を引き受けられない、といった制約も軽減していくのかもしれません。これまでの実践例にとらわれずにキャリア選択・形成の道筋を思い描き、実現していきましょう。

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    実際に国際協力でのキャリアを始めるにあたり、不安なことや、キャリア形成についてのご相談に対して相談員がアドバイスをします。

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