新卒で飛び込んだ難民キャンプから平和構築のスペシャリストに。

小向 絵理さん

国際協力機構(JICA) 40代

  • 国際協力専門員
  • 平和構築
  • キャリア年表

    大学学部生

    1990~1994年

    国際関係を専攻。

    国際NGO職員

    1994~1998年

    ウガンダ北部のスーダン難民キャンプでの人道支援や、虐殺後のルワンダにて帰還支援に従事。

    JICAジュニア専門員

    1998~2002年

    JICAの平和構築黎明期に、方針や戦略の策定業務に従事。

    JICA企画調査員(企画)

    2001年

    ジュニア専門員委嘱中にカンボジアに赴任し、対人地雷対策と除隊兵士支援分野の案件形成に従事。

    大学院生

    2002~2003年

    スウェーデン・ウプサラ大学平和紛争学部において国際研究修士を取得。

    JICA特別嘱託

    2003~2005年

    企画・調整部平和構築支援室において、平和構築の戦略策定、人材育成、手法開発などの業務に従事。

    JICA専門家

    2005年

    「障害を持つ除隊兵士の職業リハビリテーション」専門家としてルワンダで技術協力プロジェクト形成を推進。

    JICAインハウスコンサルタント

    2005~2007年

    企画・調整部人間の安全保障グループ平和構築支援チームで、平和構築の戦略策定、課題別指針改訂などに従事。

    JICA国際協力専門員

    2007年~現在

    紛争影響国の案件形成・実施促進・評価、戦略策定などへの助言、人材育成などJICAの平和構築分野に広く携わる。

    どの分野も、どの経験も繋がる。引き出しを増やして。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    大学では国際関係を専攻していましたが、国際協力に強い思いがあったわけではありませんでした。キャリアを国際協力に繋げようと思ったのは、大学3年生の春休みに友人の付き合いで行ったケニア旅行がきっかけです。それまでアフリカのイメージは「貧困」「紛争」「動物」でしたが、出会った人達は楽しそうでした。旅行だけでは表面的なことしか分からないので、アフリカで仕事や生活をする方法を探しました。そして大学卒業後、アフリカで活動するNGOの職員になりました。ウガンダ北部のスーダン難民キャンプでは日本人は私一人という環境の中、アフリカで働くにしても色々なアクター・立場の人がいること、そして様々な国の人々と仕事をするダイナミックさを感じました。

    平和構築分野を選ばれたのはなぜですか? またどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    NGOでは難民キャンプや復興現場で緊急人道支援活動をしました。そこで強く感じたことは、人道支援は重要ですが、それだけでは問題は解決しないということです。紛争が発生しない社会づくりに関心が移り、開発援助機関であるJICAに入りました。ジュニア専門員に始まり、企画調査員(企画)の後、仕事を通じて習得したことをまとめる機会として大学院に進み、その後ルワンダでの除隊兵士支援の専門家を経て、JICAでの平和構築業務を継続しています。ジュニア専門員として入構した当時は平和構築は分野として設置されていませんでした。入構翌年に正式なグローバルイシューとなり、国際会議や紛争影響国での案件形成などJICAの平和構築の方針や戦略作りに関わりました。

    平和構築のお仕事について教えてください。

    例えば、地雷対策というと地雷除去が思い浮かぶかもしれません。しかし、ただ地雷を除去すれば良いのではありません。地雷除去をその国の開発や貧困削減に貢献させるには、適切なプロセスで除去地を選ばないといけません。農村開発や学校を建てることなどと繋がることで地雷除去は住民の生活改善の意味を持つのです。企画調査員として対人地雷対策と除隊兵士支援の案件形成に携わったカンボジアでは、開発行政や農業、リハビリ分野の専門家、そしてNGOや開発コンサルタントの方々と意見交換する機会が多くありました。なぜ地雷除去が必要なのか、なぜその国にとって平和構築が必要なのか、平和構築が国の発展にどう繋がるのか、平和構築分野だけでなく国全体を見てプロジェクトを形成するうえで、他分野の専門家の方々と出会ったことは幸運でした。

    平和構築分野で求められるのはどのような人材・スキルでしょうか?

    平和構築にはセットメニューはありません。紛争影響国により異なります。その国がどういう状態なのか、何が重要なのかを把握する必要があります。道路や学校を直す、食料供給、雇用や教育…ニーズは膨大です。その中で、その国が紛争国に戻らないために何が必要なのか、どういう順序で支援すべきか見極めることが求められます。また、他分野で国際協力のキャリアを積んでいる人が紛争影響地で活動する機会も多くなるでしょう。その時、紛争に傷ついたコミュニティを再生させ、紛争再発しないように活動をする必要があります。他分野を専門としている人材が平和構築の視点を持って仕事をするニーズもあります。

    平和構築分野でのキャリア形成につき、アドバイスをお願いします。

    紛争影響国の現場での仕事に関心があるなら実務経験を積むことが重要だと思います。現場を経験することで多くを学べますが、実務経験はバックオフィスでも積むことができます。また紛争後の復興には、教育・保健、インフラ、ガバナンス、地域開発、生計向上などほぼ全ての分野の活動が必要です。出発点は平和構築でない分野でも非紛争影響国でも、現場あるいはバックオフィスで案件やプログラムを遂行する経験を積んで、自身の引き出しを着実に拡充していく。適切な問題意識を持っていれば、のちに必ず平和構築に結び付きます。また、平和構築分野以外の専門家や国・地域の知見を持つ方から学ぶことも自身の可能性を広げます。

    平和構築分野には、どのような関わり方がありますか?

    JICAでは紛争影響国における地方政府の能力強化を重視しています。原爆から復興した広島や震災の復興が進む東北で、紛争影響国の行政官の研修をしています。紛争からの復興は、短時間で遂行するためにトップダウンで計画策定・実施されることが多いのですが、それでは住民のニーズに応えられません。日本の自治体職員が住民に寄り添う姿を見て、彼らは多くを学びます。受け入れた日本の地方も、外国の方と触れ合うことで異文化理解から平和への関心が高まります。また紛争影響国では雇用創出も重要なので、民間企業で関わることも考えられます。JICAで関わる醍醐味は、様々な分野・課題に対応でき、また日本の地方政府や民間組織などと連携して協力ができる点ですね。

    国際協力の道を目指す方へのメッセージをお願いいたします。

    自身が何に関心を持っているか明確に認識し、その関心=モチベーションを糧に、日々の業務では一つずつ課題に対応し、経験を自分のものにしていくことが重要だと思います。自身を振り返るとNGO時代の業務経験も、JICAに入ってからの現場・本部での経験もみな、現在の専門員としての仕事に役立っています。適切な問題意識を持って臨んでいれば、いま目の前にある仕事や課題が一見自分の関心と結びつかないものに見えたとしても、後々活きる時が来ます。開発援助をとおした平和構築は複雑です。紛争が起きないようにするためには、そこに住む人が「紛争をしてはいけない」と思い行動しないといけない。そのためにどうするか。毎回新しい学びがあります。だからこそ面白いです。

    ※本記事は、2020年12月時点での情報となります。

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