日系社会と協力隊、経験と知識がライフワークになったVCの仕事。

山本 裕美子さん

政府機関・地方自治体 外務省 40代

  • 企画調査員(ボランティア事業)
  • 多岐にわたる分野
  • キャリア年表

    大学学部生

    1997~2001年

    文学部で日本文学を専攻。

    民間企業

    2001~2004年

    証券会社に勤務。

    インターン

    2004~2005年

    ブラジル(サンパウロ市)の国際交流基金サンパウロ文化センターで研修生として11か月従事。

    日系社会青年ボランティア

    2006~2008年

    ブラジルに社会学・文化人類学の職種で派遣。『目でみるブラジル日本移民の百年(ブラジル日本移民百年史別巻)』を編纂。

    海外日系人協会職員

    2008~2009年

    海外移住資料館業務に従事。

    企画調査員(ボランティア事業)

    2012~2014年

    サンパウロ出張所(現ブラジル事務所)にて、約50名の日系社会ボランティアの支援。

    国内協力員

    2014~2014年

    海外協力隊事務局の海外業務調整課に勤務。

    企画調査員(ボランティア事業)

    2016~2019年

    パラグアイ事務所で約60名の隊員を支援。そのうち、主に保健・医療、教育分野の隊員約25名を担当。

    大学院

    2017~2019年

    VC業務の傍ら、大学院に進学。

    経済協力専門員

    2020年~現在

    主にJICAボランティア事業を担当。

    現場の最前線で活動する人を支えることも国際協力。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    幼い頃にユニセフのCMを見たのが最初のきっかけだったと思います。大学生になり、長期休暇の度にバックパックで海外に行くようになってから、国際協力や開発援助に関心を持ち、仕事の一つに国際協力があることを意識しました。同時に、南米に多くの日本人が移住し日系社会を形成した史実に興味を持ちました。日系社会を知るためにブラジルで生活した数年間に、日系社会の歴史や現状のほか、ブラジル社会の貧困問題、環境問題をはじめとする教科書やニュースでしか知り得なかった様々な社会問題を自身の目で見る機会を得ました。これらの課題解決のために、JICAをはじめとする国際協力機関が支援を行っていることを知り関心が高まりました。

    国際協力の最初のステップと、企画調査員(ボランティア事業)(=以下VC)を目指したきっかけは何でしたか?

    学生時代は、企業の駐在員などで途上国の発展に貢献したいと思っていました。新卒で証券会社に就職し、新興国の国債を扱っていたのですが、日系社会への関心や、英語ではない言語を学びたい思いがあり、ブラジルでインターンや語学研修をしました。そこで、ブラジル移民100年史編纂を行う日系社会青年ボランティアの募集を知り、参加しました。隊員を終え、再び日系社会支援をはじめとする国際協力に携わりたいと思いました。大使館のポストもありましたが、ブラジルでのVCが一番直接的に日系社会に関われると考えました。また私が隊員時代のVCは真摯に向き合ってくれる方で、私も国際協力の現場でボランティアを支援したいと思いました。

    VCの業務と経験について教えてください。

    VCの業務は隊員活動や生活面の支援のほか、ボランティア事業にかかる事業計画策定、予算管理、安全対策、案件形成のためのニーズ調査や相手国政府関係者との協議など多岐にわたります。ブラジルは隊員時の派遣国だったので、現地関係者との人間関係やネットワーク構築に時間はかかりませんでした。スタートがスムーズだったので、積極的に隊員の活動の視察や案件形成で現場を見て、ブラジル社会が持つ課題へのアプローチに注力しました。ブラジルでは日系社会のみを対象としていたため、海外協力隊の活動支援も経験してみたく、パラグアイで2度目のVCをしました。言語が異なるため戸惑いもありましたが、ブラジルでは経験できなかった業務に携わることができました。

    VCのやりがいや魅力についてお聞かせください。

    VCは何より、隊員が2年間を無事に過ごし日本に帰国できるようにする責務があります。隊員が赴任した時、当初の要請と変わっていることもありますが、その中でも隊員が力を発揮し活動できるよう、様々なアクターと調整し環境を整えます。案件形成など地域住民や企業、国際機関に加え相手国政府など幅広い分野の人々とのコミュニケーションと協働が求められ、人間力が試されますが、VCの醍醐味でもあります。異なる文化の中で他者を尊重しつつ、こちら側の意向にも対応いただくことは簡単な事ではありません。一つ一つ真摯な対応を心掛けながらも、スピード感をもって業務にあたることで、相手側の協力や積極的な事業への関与を得ると同時に、自身の能力向上にもなります。

    ご自身の経験も踏まえ、VCに求められることは何でしょうか?

    VCは「中間管理職」です。リーダーを支えながら他の人をうまく巻き込むコミュニケーション能力、傾聴力、調整能力を兼ね備えた人はバランスが良いです。隊員の専門分野すべてに精通しているわけではないため、専門的なアドバイスをすることは難しいですが、隊員や関係者の話を真摯に聞くことはできます。まずは話しやすい環境を作り、ヒントやコメントを出し、課題の解決に向けて隊員と人々を繋いでいく力が大事です。VCには分野の深い専門性は必要ないと思いますが、私は、パラグアイで保健・医療分野を担当し、隊員たちから刺激を受け、業務の傍ら通信制の大学院に進学しました。VCとしての自己研鑽、また自身の今後のキャリアに繋がると考えました。

    現在の業務では、どのようなことを担当されていますか? また、VCのご経験で活かされている面などお聞かせください。

    外務省の国際協力局でJICAボランティア事業を担当し、省内や各所からの照会対応や資料作成などを行っています。今年は新型コロナウイルス感染症拡大防止措置のため、隊員は3月下旬以降一時帰国しています。私の業務もコロナ禍における対応が多い状況です。質問の背景や意図をくみ取り的確な回答案を短時間で作成するのに、照会内容(課題)への理解や知識に加え、対応策の優先順位などを聞き出し整理・調整するために、VCの経験が大変役立っています。これまで隊員、国内からの隊員支援、在外での隊員支援と、3つの視点からボランティア事業を見てきた経験・知見は、現在の業務に欠かせません。今は行政という立場で、経験を活かしJICAと連携しています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    国際協力に携わる形は様々ですが、私の場合は現場で活動するのではなく、最前線で活躍する人を支援するマネジメント業です。異文化の中で現地の人に寄り添った活動を行うことは簡単ではありません。日々試行錯誤する隊員たちと苦楽を共にし、支える仕事も国際協力だと思います。私はライフワークの軸である「国際協力」はぶれませんが、テーマは日系社会から保健・医療分野を経て事業管理やマネジメントへと移りました。新型コロナウイルス感染症の拡大により、国際協力の在り方も大きく変化しています。専門性を持ち経験を積むことも必要ですが、今までの経験では対応できないことも出てきている中で、多方面にアンテナを張り興味関心に従うことも大切だと思います。

    ※本記事は、2020年12月時点での情報となります。

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