隊員や関係者と案件を共創、VCは市民参加型事業のプロ。

渡邉 宏和さん

国際協力機構(JICA) 海外協力隊事務局 30代

  • 企画調査員(ボランティア事業)
  • 多岐にわたる分野
  • キャリア年表

    大学学部生

    2004~2013年

    国際文化学科を専攻。2007~2008年にスペイン留学。

    在外公館派遣員

    2009~2012年

    在ボリビア日本国大使館で3年間勤務。広報文化班に在籍し、日本文化紹介イベント等の企画・運営を行った。

    草の根・人間の安全保障無償資金協力の外部委嘱員

    2013~2015年

    在ボリビア日本国大使館で、年間100~150件の草の根プロジェクトの案件審査、管理などを行った。

    企画調査員(ボランティア事業)

    2016~2019年

    JICAボリビア事務所でJICA海外協力隊事業の運営を行った。

    JICA海外協力隊事務局
    専門嘱託

    2019年~現在

    事業評価、VC関連業務(募集・選考・研修・報告会)、国際人材育成のための新しい大学連携案件などを担当。

    現地の人たちと共に「草の根」の視点と経験を活かす。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    幼少期から「取り残される」人に敏感で、皆が気兼ねなくアクティビティに参画できるよう、コミュニティのあり方をじっと観察しているような子どもでした。最初の転換期は大学進学のときで、理系学科から国際文化学科に志望を変えたことです。キャンパスで日本各地の出身者や外国人留学生と出会い、多様性の奥深さや面白みを発見しました。更に留学先のスペインで、人種や宗教の異なる人、社会的マイノリティと呼ばれる人たちがそれぞれを受け入れ尊重し合う姿を目の当たりにし、国際的な感覚や「多文化共生」の社会的な価値を学びました。そういう意味で、SDGsの前文「誰一人取り残さない」は、僕にとって象徴的なスローガンなんです。

    国際協力の最初のステップと、企画調査員(ボランティア事業)(=以下VC)を目指したきっかけは何でしたか?

    在学中に南米ボリビアの在外公館派遣員として働いていた際、草の根・人間の安全保障無償資金協力プロジェクトのことを知りました。開発途上国の地方各地を回ってさまざまな案件に関わりながら「人間の安全保障」について考えたいと思い、ボリビアの日本国大使館開発協力班の委嘱員ポストに応募することにしました。国際協力キャリアのスタートとなる仕事だったため、今でも現地目線や草の根視点が自分の中に脈打っていると感じています。VCを目指したのは人の縁で、尊敬する方に声を掛けていただいたことがきっかけです。案件管理や語学力、現地機関とのネットワーキングなど、それまでやってきたことに繋がると感じて、応募を決めました。

    VCの業務と経験について教えてください。

    VC業務は案件開拓と活動支援に大別できると思います。前者は大使館時代の経験や人脈が非常に役立ちました。後者は隊員や現地の方と共に活動目標を考えたり、進捗をみて周囲への影響や将来性を予見し、案件に関わります。様々な分野の隊員と現地の方とのコミュニケーションの取り方や活動の進め方について対話し、地域や課題の専門性が高い関係者と繋いで持続的な案件になるよう心掛けました。隊員や現地の方たちと共に考える草の根視点を大切にしつつ、事業運営を担うプロフェッショナルとして国際機関や政府関係者との定例会にも参加し、マクロな視点を派遣計画に反映させたり、有益な情報があれば隊員や関係者に随時共有していました。

    VCのやりがいや魅力についてお聞かせください。

    文化、宗教、言語を越えた「信頼」です。双方向に学びを深めていく案件を隊員や現地の方と共創するのはVC業務の醍醐味で、ボリビアで出会った素晴らしい案件、人、記憶は一生消えることのない財産です。職種(課題)が多様な点、自治体・大学・民間連携などを駆使しながら息の長い計画を立て、効果を実感しながら実行できるのも魅力です。市民参加型事業のプロフェッショナルであるVCは、今後ますます社会から求められる職業・人財になるのではないかと期待しています。僕は草の根委嘱員を経てVCになったことで、国際協力を自身のライフワークとして考えるようになりました。世の中にVCを目指す方がもっと増えると嬉しいですね。

    ご自身の経験も踏まえ、VCに求められることは何でしょうか?

    VCはニーズを掘り起こして案件形成し、隊員を含む関係者が能動的に活動へ参画できるよう配慮します。各課題の基礎知識、任国の状況、関連政策などを踏まえて派遣計画を更新し、ビジョンや上位目標を隊員や関係者と確認し合い「一人一人の案件」になるよう調整していきます。協力隊事業の「多文化共生」や「社会還元」という目的を考えると、誰かが傷つく案件、取り残される活動は、よいものとは言えません。ゆっくりでいいので、持続的に成長し続ける案件を見抜く目を持つことが大切です。協力隊事業が国際的に評価されている理由をしっかりと考えて理解し、よい案件やよい活動を関係者と共に考え共創していく力が求められると思います。

    現在の業務では、どのようなことを担当されていますか? また、VCのご経験で活かされている面などお聞かせください。

    事業評価やVC関連業務を担当しています。評価業務ではPDCAの事業への実装や事業価値の「見える化」、VC業務では問題意識を共有して関係者が双方向に学び合える仕組みづくりに挑戦しています。VC時代に学んだ“オープンに議論しながらよりよいものを共創していく感覚”を大切にしています。VC経験を通じて、協力隊事業が世界との繋がりを生むことや、隊員経験者が多様性への寛容さや社会や人に対する「優しさ」を兼ね備える人財になりえると考えています。ラモン・マグサイサイ賞を始めとした国際的な評価や信頼、また人と人の繋がりを重視する社会が追い風となり、事業の社会的価値が益々高まっていくことを確信しています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    僕は大学卒業に9年、ライフワークが決まるまでに11年掛かりました。心の奥の方にある微かな声を手繰り寄せてきたつもりですが、思いのほか遠回りをしてしまいました。キャリア図鑑をご覧の若い方は「時間」という掛け替えのない資産、経験のある方は目標の明確さというアドバンテージ、あるいは既に関連分野の実績があるかもしれません。自分自身を振り返ってみると、隊員経験なし、VC経験なしで飛び込んだ在外勤務の経験が、現在挑戦している一つ一つにしっかりと繋がっていることを感じます。ぜひVCにチャレンジしていただければ幸いです。「キャリア図鑑」を読んでおられる皆さんと一緒に働ける未来を心より楽しみにしています。

    ※本記事は、2020年12月時点での情報となります。

    キャリア相談

    どうキャリアアップする?私の専門性は活かせる?最初のポストは?

    実際に国際協力でのキャリアを始めるにあたり、不安なことや、キャリア形成についてのご相談に対して相談員がアドバイスをします。

    無料でご相談いただけます

    • キャリア相談を受けるには、人材登録が必要となります。