国際保健における「海外派遣者の健康管理」という新分野に挑戦。

池田 陽子さん

国際協力機構(JICA) 人事部健康管理室 40代

  • 健康管理員
  • 保健医療
  • キャリア年表

    市立総合病院

    ~2005年

    NICU病棟にて、新生児看護に従事。

    海外協力隊

    2005~2007年

    ベトナムのクアンチ省立病院にて、看護師として未熟児室の立ち上げに携わり、新生児看護指導に当たる。

    短期語学留学

    2007年

    英語力を上げ、国際協力のフィールドを目指す。

    JICA

    2007年~

    国内健康管理員、在外健康管理員として、モンゴル・ザンビア・カンボジアへ派遣。

    JICA

    2018年~現在

    国内健康管理員の海外班総括として、専門家や隊員の健康管理を担当。

    看護師の臨床経験を活かし、海外での健康生活を守る。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    看護師として5年目、院内での一通りの教育プログラムも終え、後輩指導やチームリーダーも任されるようになり充実してきたころでしょうか。夜勤明け、ふと手に取った新聞で当時の小泉首相がアフガニスタンへ保育器を寄贈される記事を目にしました。その記事を読んだ時に、以前、病院見学にきたラオスの研修員で看護師の方が、「各国からの援助で保育器をいただいても使い方が分からず放置されていた」と仰っていたことを思い出しました。戦後のアフガニスタンや途上国で自分にできることは、現地で新生児看護の技術を伝えていくことなのではないか、と考えるようになったのがきっかけです。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    海外協力隊参加後は、在外健康管理員と医療系の専門家どちらにも関心を持っていましたが、当時は新生児高度医療分野の案件が少なかったこともあり、在外健康管理員を目指そうと決意。語学は短期留学にて習得しましたが、在外で働くには国際看護の経験不足もあり、まずはJICA国内健康管理員として経験を積みました。その後、念願であった在外健康管理員として赴任。医療調査や傷病対応、緊急移送など、様々な経験を積むことができました。しかし、医療は日進月歩。長く在外にいれば知識は古くなっていくばかりなので、医療知識のブラッシュアップとこれまでの経験を活かして国内の業務にも貢献できればと思い、現在に至ります。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    国内の主な業務は、海外からの日常的な健康相談や傷病対応、海外派遣者の赴任前から帰国までの健康診断の判定業務など様々です。疾病予防対策のガイドライン作成に加え、関係者が重大な病気に罹患したり、事故に遭遇した場合には、適切な治療を受けられるよう現地にいる在外健康管理員や在外事務所とJICA本部との間で連携して緊急医療支援を行います。また、新型コロナウイルス感染症のような新興・再興感染症のパンデミックに対しては、JICA本部に設置された対策本部としての役割を担うこともあり、海外からの退避や再渡航にかかる助言、現地の医療体制の把握や、感染予防のための啓発活動など、事業継続への後方支援をしています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    国際保健・看護の対象者は、途上国にいる人々というイメージが強いと思いますが、海外に渡航・赴任している日本人の健康もその対象となります。JICAは、海外へ渡航する関係者の組織的な健康管理体制を持っており、国際保健における産業看護分野の経験を積むことができるのでとても魅力的です。途上国での事業が多くを占めますが、現地の医療体制は脆弱。風土病や文化など、関係者を取り巻く特殊な環境に考慮しながら支援にあたる必要も出てきます。これまでの臨床経験や海外経験も大いに役に立てることができ、医師や国内外の健康管理員のチームワークが要となる現場のため、とてもやりがいを感じます。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    今後も国内外での経験を活かして、在外健康管理員としてフィールドに出ていければと考えています。また、これまでの海外経験ではアジア・アフリカにて地域の風土病に触れる機会も多かったことから、特に感染症分野に興味を持つようになりました。これらの経験が役立つような国際保健の現場があれば、積極的に挑戦していきたいと考えています。もう少し先のキャリアとしては、看護教育の現場にも興味を持っています。健康管理員業務の傍ら国際看護の講師をする機会もありましたが、未来の看護師に対して「海外で生活する日本人の健康管理」という分野を広めていけるような活動もしていきたいと思っています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    途上国の健康・衛生問題が深刻化し、国際的な人の移動が重要視されるこれからの時代。国際保健における健康管理員の仕事はますます重要になると考えています。実際に、新型コロナウイルスの世界的流行を受けて海外渡航における健康問題が注目されており、組織に対する貢献度もとても大きい職種だと実感しています。「海外で活動する日本人を対象とした健康管理」は、国際保健の中では比較的新しい分野だと思います。看護師としての臨床経験や海外経験を生かして、是非、一緒に盛り上げていきませんか?

    ※本記事は、2021年2月時点での情報です。

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