海外協力隊から国際機関へ。住民主体の都市開発を目指す。

工藤 香奈さん

国際機関 国連開発計画(UNDP) 30代

  • 国際機関 職員
  • 都市開発・地域開発
  • キャリア年表

    大学学部生

    2004~2009年

    国内大学→アメリカの州立大学で都市計画、地理情報システム(GIS)、国際研究を専攻。

    市役所

    2009~2010年

    アメリカの市役所でGISを使った都市計画業務のサポート。

    民間企業

    2010年

    東京都内の都市再開発業務のサポート。

    海外協力隊

    2011~2013年

    都市計画隊員としてザンビアに派遣。ルサカ州の総合開発計画策定支援とGIS技術指導を担当。

    大学院

    2013~2015年

    アメリカで都市・地域計画学(地域・国際開発)の修士号取得。

    開発コンサルタント

    2015~2016年

    ネパールの復興・復旧プロジェクトに参加。

    国際機関

    2016~2018年

    国連開発業務調整事務所(UNDOCO)でJPOとしてSDGs達成へ向けた政策を支援。

    国際機関

    2018~現在

    国連開発計画(UNDP)ヨルダン事務所で都市開発・コミュニティ強靭化の促進を担当。国連ハビタット(UN-Habitat)イエメン事務所に出向、都市復興プロジェクトに参加(1年間)。

    「誰のための開発か」を考えながら、自分の好きなことを続ける。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    高校2年生の時、フィリピン・マニラに約3週間滞在する機会がありました。貧富の差が激しく、また東京と比べて住環境も芳しくない人が大勢いることを知り、「何かできないか」と考えるようになったのが一番のきっかけです。自分よりも幼い「ストリートチルドレン」と呼ばれる子どもたちが、たくましくも楽しそうに生きているのを見て「もっと世界の様々な場所に行って、人々の生活や現状を理解したい」と考えるようになりました。また、同じ首都でも東京とマニラの雰囲気や様子が全く違うことが興味深く、「都市」に関心を持ち始めました。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    大学卒業後、主に都市開発や持続可能な開発に携わってきました。ターニングポイントは、海外協力隊。ザンビア共和国地方自治住宅省にて、「開発を進めたい中央政府」と「たとえ不便でも、開発はせず現状のままの生活を求める地元住民」との間に立ってプロジェクトを遂行。「誰のための、何のための開発なのか」を考え、現場で具体的に実践できたことは自分にとって大きな収穫でした。その後大学院に進み、都市地域計画学の修士号を取得。開発コンサルディング企業を経て、現在は国際機関で仕事をしています。



    UNDOCO、UNDP、UN-Habitatにて都市開発やコミュニティ強靭化だけではなく、平和構築、人間の安全保障、ガバナンスなど多岐にわたるテーマに取り組んできました。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    ヨルダンの首都アンマンの都市再生を目的としたプロジェクトを立ち上げ、コミュニティ主体の都市開発・強靭化を目指しています。具体的には、アンマンのダウンタウンの中でも特に脆弱なコミュニティを対象に、住民に住環境を良くするためのイニシアチブをデザインしてもらい、都市開発の専門家としてアドバイスしています。アンマン市役所の担当者やプロジェクトのパートナーからの協力はもちろんのこと、都市・コミュニティ空間のさらなる活用のため、ヨルダン内のNGOやコミュニティグループとの連携も模索しながらプロジェクトを進めています。それ以外にも、社会的結束を進めるためのプロジェクトをデザイン・管理したり、進捗・最終報告書を作成して、ドナーとの関係強化に努めています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    歴史あるアンマンという都市の包括的な開発に携われることと、脆弱なコミュニティの住民主体の都市開発を促進することができることです。アンマンは歴史が深くローマ時代の遺跡が残っている一方、パレスチナやイラク、シリアからの難民をたくさん受け入れ、1940年代後半には2万人だった人口が現在では約100万人と急激に増加。それに伴い、様々な都市問題が発生しています。住民中心のボトムアップ型のプロジェクトを進めることにより、プロジェクト受益者のアンマンへの帰属意識を高め、「自分たちで自分たちの街の未来を作っている」という意識の向上に貢献できる。そこに一番やりがいを感じています。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    大学から都市計画・都市開発を専門としてきたため、今後も同じ分野でより一層専門性を磨いていきたいと考えています。海外協力隊、開発コンサルティング企業、国際機関と今まで様々な立場で国際協力・都市開発に取り組んできましたが、どの仕事にも楽しい面・難しい面があり、学ぶことがたくさんありました。これらの経験を生かし、「誰のための開発か」を常に考えながら、都市の強靭化や包括的な開発を促進するようなプロジェクトを形成し、進めていきたいと思います。また、昨年子どもが生まれたので、ワークライフバランスをうまく保ち、家族との時間も大切にしていきたいです。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    自分の好きなこと、本当にやりたいことは何なのかをきちんと理解して進んでいくことが大切だと思います。国際協力分野には様々な仕事があり、どの立場で仕事をするかによって取り組み方も変わってきます。具体的にどういった立場で何をしたいのかをあらかじめイメージしておくと、目指す場所が見えてくるのではないでしょうか。そして、躊躇せず一歩を踏み出し、世界の現場を直接体験してみてください。国際協力の道ではどんな経験も役に立ちますし、専門性や技術も非常に大切だと言われています。新型コロナウイルスを受け、今までとは違った知識や働き方が求められるこれからの時代。自ら積極的に動き、常にインプットを心がけることも重要だと感じています。

    ※本記事は、2021年2月時点での情報です。

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