求めるものがあるから、関わり続ける、変わり続ける。

杉岡 学さん

国際協力機構(JICA) 国際協力機構(JICA) 社会基盤部 資源・エネルギーグループ 40代

  • 国際協力専門員
  • 資源・エネルギー
  • キャリア年表

    大学学部生

    1997~2001年

    物理学を専攻。

    大学院

    2001~2003年

    地球惑星科学専攻にて火山物理学を専攻。

    民間企業

    2003~2005年

    日本国内の地質コンサルタント業務担当。

    海外協力隊

    2005~2007年

    マラウイにて理数科教師派遣。

    民間企業

    2007~2009年

    鉄鋼製品商社にて、中近東、中南米向けのガスパイプライン原版輸出、南ア投資案件担当。

    JICAジュニア専門員

    2010~2011年

    JICA産業開発部にて、地熱開発案件を中心に担当。

    JICA専門家

    2011~2018年

    長期専門家、業務実施契約などでボリビア、エクアドルの有償地熱案件形成を支援。

    民間企業

    2018年

    地熱開発コンサルタント会社にて海外地熱案件業務担当。

    個人コンサルタント

    2019~2020年

    個人コンサルタントとして、JICAの官団員等、各種地熱案件支援等。

    国際協力専門員

    2020~現在

    2020年10月より国際協力専門員(地熱)となる。

    インタビュー

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    もともと海外に興味がなく、最初に勤めていた会社をやめるまではパスポートも持っておらず、国際協力という言葉も一切聞いたことがないくらい無縁でした。他方で、「日本国外で生きる力がないと、これからの世の中はやっていけない」という危機感はあり、欧米などのいわゆる先進国よりも将来的に大きく成長する可能性のある、開発途上国への関心の方が高かったことから海外協力隊に興味を持ちました。開発途上国という「場所」で働きたい、対象にし続けたいというモチベーションから、「開発途上国で求められるものは何か?」、「役に立つ存在とは?」を問い続け今に至ります。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    大学院で火山物理学を専攻し、民間の地質コンサルタント会社に就職しました。その後退職し、海外協力隊でマラウイに派遣。帰国後、鉄鋼製品を扱う商社で輸出営業に関わりました。その後は、スペイン語の習得のためにエクアドルに渡航。帰国後にJICAジュニア専門員のエネルギー分野(地熱)に応募しました。ボリビアの長期専門家や業務実施契約などで4年弱、エクアドルも同様に2年強滞在しました。それから民間の地熱技術関係の会社に就職して海外業務に携わりましたが、2019年に個人コンサルタントに転向。JICAの官団員、エクアドル、ボリビア等の地熱案件支援、他各国の地熱案件の支援業務を経て、現在のポストに至ります。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    JICAの地熱発電所建設への協力事業に関わる案件の実施・管理の支援です。発電所建設には10年のスパンで多くの業務が発生し、各業務は、民間のコンサルタント会社を雇って実施されていますが、外注できるのはごく一部、2~3年の短期間です。全体像を把握したうえで各契約を繋ぐために、各業務の内容の計画、管理・修正などの手伝いをしています。また、民間コンサルタントは、どうしても相手国の実施機関との間に隔たりができてしまうので、これを埋めるために実施機関との会話を通して細かい課題や状況をモニタリングし、適宜アドバイスをする仕事です。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    現在の業務のやりがいは二つあります。まず、JICAが関わる地熱開発協力の多くの案件に同時に関われること。もう一つは案件の計画段階に関われることです。過去に従事した、一つのプロジェクトに特化した専門家業務の場合、相手国のみならず日本側の都合で進まないことも多く、専門家の立場では解決できずに待機する期間が多く発生しました。また、民間コンサルタントの業務では事業全体の建て付け(分掌・契約など)が既に決められており、望ましい形が分かっていても修正できるような立場にはありません。責任をもって計画段階から関わることは、全体像を把握し、事業のより良い道筋を提案できるため、大きな魅力だと感じています。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    私の専門分野は、エネルギーセクターの中でも「地熱」という特殊な分野であり、昨今の激変する世界の市場では、他の再生可能エネルギー同様、日本の技術や製品の世界シェアは低下し続けています。シェアが高いほど汎用性が高くなり、技術は維持されやすく、また継続されやすくなります。よって、シェアが下がり続ける日本の技術を世界に伝えるというプローチでは、需要も減り、継続性もありませんので、開発途上国に関わる機会が減り続けることは避けられません。今後も私がエネルギー分野で業務を続けるためには、日本という枠を超え、専門技能にこだわらずに対象地域で求められる「何か」に対応できる道を探していくことになると思います。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    語学力やコミニケーション能力はあって当たり前です。真に役立つ何かをするには、より多くの技能が必要です。そのためには、より多くの寄り道をしてくることが大事だと思います。相手の国の機関と働く際、私が役立つと感じるのは、契約実務、貿易実務、投資など別業界の実務に基づく経験です。専門分野以外の実務経験もあるからこそ、相手の日常的な実務の問題にも深く関わり続けることができると実感します。また、現在の世界の潮流は「援助から投資」に向かっているため、資金回収、投資、リスク判断などより厳しい事業判断基準をもつ民間投資家が関わってきています。今後の開かれた世界では真に付加価値・競争力をもつ人間こそが求められているのではないでしょうか。

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