多様な関係者の総力で、世界の子どもたちに質の高い学びを。

國枝 信宏さん

国際協力機構(JICA) 国際協力機構(JICA)人間開発部 40代

  • 国際協力専門員
  • 教育
  • キャリア年表

    大学学部生

    1991年~1995年

    総合政策学部で国際開発や国際交渉を専攻

    大学院生

    1995年~1997年

    アメリカに留学し、公共国際政策研究科修士課程で国際開発や環境政策を専攻

    NPO/NGOスタッフ

    1997年~2003年

    ケニアでコミュニティ開発NGO及び日本側支援母体のNPO法人のそれぞれ設立・運営に従事

    JICA技術協力プロジェクト専門家

    2004年~2006年

    JICAのコミュニティ協働型教育開発プロジェクト(エチオピア)に従事

    JICA特別嘱託

    2007年~2008年

    JICA人間開発部で仏語圏アフリカの基礎教育案件の形成や運営を担当しながら、仏語学習に没頭。

    JICA技術協力プロジェクト専門家

    2008年~2015年

    JICAのコミュニティ協働型教育開発プロジェクト(仏語圏のニジェールとセネガル)に従事

    JICA国際協力専門員

    2015年~2020年

    JICAの基礎教育分野の協力方針の検討や事業形成・実施・評価における助言、国内外での成果発信に従事

    開発コンサルタント

    2020年

    JICAのコミュニティ協働型教育開発プロジェクト(ニジェール)や調査研究に従事

    JICA国際協力専門員

    2020年~現在

    JICAの基礎教育分野の協力方針の検討や事業形成・実施・評価における助言、国内外での成果発信に従事

    対等なパートナーとして共に社会を変えていく国際協力を通じて。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    小学生の頃から漠然と、生まれた国や環境による貧富の格差に疑問を持ち、募金活動などを通じて細々と国際協力に参加していました。大学入学を目前に控えた1991年、第1次湾岸戦争において日本が多国籍軍に対して「ヒト」は送らず「カネ」だけ送ったと国際社会から冷ややかな評価を受けていると知り、衝撃を受けました。それを機に自分が「ヒト」となり国際協力の前線に赴き、日本が「カネ」だけじゃないことを示したいと考えるようになりました。今思えばそもそも何の特技もない自分が即戦力となれるのかどうかも考えず、とにかく現場に行くことだけを決めたのは、身の程知らずだったという他ありません…。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    アメリカの大学院で国際開発を修めた後、NGOスタッフとして、ケニアで草の根レベルのコミュニティ開発に取り組みました。現地NGOの設立や活動実施、日本でのNPO法人設立・運営など多様な「現場」に携わった経験が原点となっています。続いてJICA技術協力専門家として、エチオピア、ニジェール、セネガルでコミュニティ参加型の基礎教育プロジェクトに参画。学校を取り巻くコミュニティや子どもたちの学びを支える制度の構築と普及に各国で取り組みました。また、現職の傍ら、長男の中学校のPTA会長を2年間務め、日本の教育でのコミュニティ参加についても学びました。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    基礎教育分野のアドバイザーとして、協力方針の検討や事業形成・実施・評価に参加したり、事業の成果を国内外で発信したりしています。主な担当分野は、学校を取り巻くコミュニティの協働による基礎教育改善に取り組む、通称「みんなの学校」プログラムです。アフリカ10数ヶ国を担当し、先方の教育省やプロジェクト・チームとの対面/遠隔での協議を通じて、案件のレビューと助言、そして協力候補国での案件形成などに携わっています。また、協力効果の強化・拡大の観点から、類似分野で活動する他の開発協力機関・団体との有意義な協働を実現すべく、先方の本部や現場レベルでの関係構築と調整にも取り組んでいます。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    現職では、NGOスタッフやJICA技術協力専門家として現地の協力活動に直接携わっていた頃に比べ、現場が遠いと感じます。世界の現状が、すべての子どもたちに良質な基礎教育を持続的に届けるという目標から依然として遠いのも事実です。それでも、自らの現場経験を基に想像力を働かせつつ、各国の教育事情やその背景にある社会、そして世界の潮流やエビデンスについて学びながら、自分自身の視野が広がってきていることを実感しています。何より、各国の現場で活き活きと学べるようになった子どもたち、そして厳しい環境の中で彼らを精力的に応援する教員、保護者、地域住民、行政官に触れるたびに、私の方が励まされています。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    小学校学齢期の子どものほぼ9割、約1.5億人が必要最低限の読み書き・計算能力さえ身に着けられない―――中でもアフリカは、コロナ禍以前から深刻な「学習の危機」に直面しています。この危機がコロナ禍による学校閉鎖や再開に伴う混乱により一層悪化していると言われる中、学校を取り巻くコミュニティの役割はますます重要になっていると感じます。今後も、現職であれ別の立場であれ、コミュニティ協働を通じた一層効果的な協力活動の追求と世界の多様な関係者との協働によるスケールアップに取り組み、一刻も早くすべての子どもたちに質の高い教育を届けられるよう行動し続けていきたいと思っています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    国際協力のひとつの醍醐味は、協力活動に取り組む過程で、多様な立場の人たちが対等に関わり合って、互いに成長したり理解を深め合ったりし、時に失敗もしながら、共により良い持続可能な社会を追求していくところにあると私は考えています。唯一絶対の正解など存在しない分野で、関わり方も「現場」も人それぞれですが、どのような立場であれ、ひとりの「ヒト」として関わることを大切にし、その過程を自身も楽しめるかどうかが重要だと思います。皆さんもそれぞれの「現場」で、持続可能な社会の実現に向かって行動していきませんか?

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