あらゆる事業に「血液」を送り込む、縁の下の力持ち。

酒井 智惠さん

国際協力機構(JICA) 管理部債権管理第一課 40代

  • JICA 職員
  • 多岐にわたる分野
  • キャリア年表

    民間銀行

    2000年~2006年

    外国為替部門輸入課で貿易取引に必要な信用状や船積書類を扱う業務を担当

    JBIC 専門調査員(現:JICA 専門嘱託)

    2006年~2014年

    債権管理部で円借款債権回収業務を担当。契約満了後、短期留学を経て再び債権管理部にて円借款貸付実行業務を担当

    国際交流基金 嘱託

    2014年~2016年

    国際文化交流を行う機関の会計課で決算業務を担当

    JICA 専門嘱託

    2016年~2018年

    債権管理部で円借款の貸付実行業務を担当

    JICA 特定職

    2019年~現在

    債権管理・管理・経理・業務を専門的に行う特定職*になる
    *予め特定された範囲の業務に従事する正職員

    フロントで働く人々から必要とされる大切な仕事。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    銀行の外国為替業務部門の輸入課で勤務していた頃、同じフロアに政府開発援助(ODA)案件を専門に取り扱う部署があり、同期が所属していました。その部署では、途上国への有償資金協力(円借款)や無償資金協力の資金に関する書類点検や送金実行などの手続きを行なっており、日本の輸入企業が取引する国々と違って聞いたことのない国名が多く、世界の広さに驚きました。これまで漠然と抱いていた「国際協力」のイメージは現地でのボランティア活動だった為、自分にとってはハードルが高いものだと思っていましたが、銀行業務の経験を生かす国際協力の形もあることを知ったことがきっかけです。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    銀行で働きながら、簿記や英語の勉強をしていたところ、国際協力銀行(JBIC) に出向していた友人から債権管理システム部(現・国際協力機構管理部債権管理第二課)の専門調査員募集について聞いて応募し、円借款の債権回収を行う部署で3年間働きました。途上国からのローン返済管理や決算作業、債務救済業務を行う部署で、パリクラブ会合*に日本の開発援助機関の一担当として出席したことは、世界銀行・IMF等の国際機関や、各国代表による意見交換など、国際経済を肌で感じる貴重な経験となりました。任期終了後も再び国際協力の世界で働きたいと考え、プロジェクトの管理手法を体系的に学ぶために、米国大学のビジネスコースでプロジェクトマネジメントを受講しました。帰国後、再びJICAの専門嘱託として今度は貸付実行を行う部署で働く機会を得ました。通常業務に加え、新しい貸付実行方式の検討を担当することとなり、既に同方式を使用している国際機関と意見交換を重ね、JICA版の新しい貸付実行方式をリリースするなど制度改革に取り組みました。

    *ODAに係る公的債務を扱う主要な債権国が集まり、債務国のリスケジュール(返済の繰り延べ)や債務削減協議を行う非公式会合

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    現在は、円借款の契約書チェックや、借入人(主に途上国政府)からの貸付実行申請書類を点検・実行する部署で総括業務を担当しています。銀行と連携し、貸付実行スケジュールに沿った迅速かつ正確な処理が求められるため緊張を伴う業務ですが、後方支援部署としてその国・地域住民のために円滑な円借款による事業実施と完成を目指しています。また、地域部や海外事務所などフロント部署からの相談に対して、法的観点からアドバイス(過去の類似事例を探したり、法律相談を薦めるなど)を行ったり、借入人・実施機関向け貸付実行セミナーの講師も行います。一つのプロジェクトや分野を担当するのではなく、様々な国や地域におけるプロジェクトの債権管理業務を担当するため、円借款に関して深い知識を身につけることができます。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    事業・企業にとって「お金」はよく「血液」に例えられますが、貸付実行業務を担う当課は、血液を送り込む心臓のような役割を担っていると思います。フロント業務の職員から、列車が走る光景や、大きくて美しいデザインの橋や、きれいな水が流れる映像とともに事業完成のニュースを聞く度に、間接的な関わり方であっても嬉しく、自分も後方支援部署として各国開発事業の重要な役割の一端を担っていると感じることができます。また、海外事務所のスタッフや、地域部職員から貸付手続きや決済方法に関する相談に対し、解決策を提案することで感謝されることが多く、縁の下の力持ちとしてとてもやりがいを感じます。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    債権管理の分野でこれまで培った知識を生かし、さらに高いレベルで貢献していけるように日々努めていきたいと思っています。他ドナー(国際機関や他国)と情報・意見交換を重ね、事務手続きの調和化やシステム化を検討するなど、円滑な事業実施の一助となるような業務にも挑戦したいと思います。また、現在、私は経理・管理・債権管理業務を行う特定職の職員ですが、業務判断の幅を広げるために、直接事業を担うフロント部署で経験を積むことも希望しています。JICAには様々な部署があるため、多様な経験を積むことが可能です。最終的には応用力があって頼りになる債権管理分野の専門人材になりたいと思います。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    私は、3年契約の専門嘱託を繰り返し、任期がくる度にキャリア形成について悩みましたが、結果的に同じ分野での経験を重ねることができ、自分に合った国際協力の道が定まりました。債権管理業務は、国際協力を目指すすべての方に役立つ業務だと言えます。開発援助機関としての資金管理や途上国における債務管理の大切さを実務で学ぶことができるため、必ず将来、途上国で生かせる場面があるはずです。実際、途上国での現場経験がなくても、金融や法務の知識・経験を生かして活躍している同僚が沢山います。多種多様なバックグラウンドを持つ課員と意見を出し合い問題解決につながることも多いです。特に、今は新型コロナウイルスによる経済危機で、途上国の債務悪化が深刻となったことで、私たちの業務の重要性が増しています。今回の記事をご覧になることで、後方支援部署としての国際協力の形を知っていただくきっかけになれば幸いです。

    キャリア相談

    どうキャリアアップする?私の専門性は活かせる?最初のポストは?

    実際に国際協力でのキャリアを始めるにあたり、不安なことや、キャリア形成についてのご相談に対して相談員がアドバイスをします。

    無料でご相談いただけます

    • キャリア相談を受けるには、人材登録が必要となります。