JICAのビジョン、現場のニーズ、国際協力人材をつなぐ。

中田 春奈さん

国際協力機構(JICA) JICAベナン支所 40代

  • 企画調査員(ボランティア事業)
  • 多岐にわたる分野
  • キャリア年表

    大学学部生

    1993~1997年

    教育学部で教育学を専攻。

    小学校教諭

    1997~2004年/2006~2008年/2009~2010年

    兵庫県内で小学校教諭として勤務。

    JICA海外協力隊

    2004~2006年

    小学校教諭(現職教員参加)として、ニジェール共和国で活動。

    草の根・人間の安全保障/無償資金協力外部委職員

    2010~2012年

    在マリ日本国大使館にて、同協力の選考・案件実施管理・フォローアップなどを支援。

    企画調査員(企画)

    2012~2013年

    JICAジブチ支所(当時)にて、教育・保健分野の案件実施管理などを担当。

    JICA技術協力専門家

    2013~2014年

    セネガル教育環境改善プロジェクト(PAES2)にて、主に業務調整を担当。

    企画調査員(ボランティア事業)

    2015~2021年

    JICAガボン支所、ジブチ事務所にて、ボランティア事業の運営管理、隊員支援などを担当。

    グローバルな視野と、一人を尊重する視点を大切にしながら。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    小学校の社会科で紹介された海外協力隊員(当時の名称)の活動写真です。一場面でしたが、異なる国で、知識・経験・技術の共有に奮闘する隊員の姿に感銘を受け、「いつか自分も、その立場に立ちたい」と願ったのを覚えています。国際協力の役割の本質を理解し興味を持ったと言うより、宗教、言語、文化、自然や生活、社会環境など、異なる基盤で暮らす人々と出会い、関係を築きながら、活動に取り組むといった経験に魅力を感じたのかも知れません。その後は、直観のもと、真に思うことを行動に移し、経験を理解に落とし込んでいきました。現場で国際協力の実情や課題を肌で感じ、今は、自身の立場で担える役割を模索しながら、行動を重ねています。

    国際協力の最初のステップと、企画調査員(ボランティア事業)(=以下VC)を目指したきっかけは何でしたか?

    通常、興味ある分野で目標設定し、キャリアアップしていくものかもしれませんが、私の場合は違いました。国際協力の第一歩は、JICA海外協力隊。西アフリカのニジェールで、貧困の中でも、人には温かく、助け合いながら、たくましく生きる人々に触発されました。アフリカで生き抜く人たちと再び活動したい…その思いだけで各種ポストに挑戦し、行き着いた役割がVCでした。どんなに規模の大きな事業も、中心となり活動を支えるのは、その国の人々であり、現場で奮闘する人材です。自身の教職経験をベースとし、理解と協力を得るべく現場関係者と向き合い、各隊員の生活と活動、事業の進捗をサポートするVCの役割は、実は自分に向いていたのかもしれません。

    VCの業務と経験について教えてください。

    業務を大別するなら、「1.事業の運営管理」、「2.隊員支援」となるでしょうか。1では日本の援助方針を基としながらも、実際の現場のニーズを把握し、関係組織と隊員間の建設的かつ継続的な活動の可能性を計る必要があります。また派遣計画は、状況に応じ、現実的かつ有意義な展開とするべく調整を行います。適切な予算計画と管理も大切です。2では、礎となる健康と安全の自己管理を呼びかけ、適宜支援を行います。また語学面での支援、配属先と隊員、VC間での活動計画と進捗の確認、結果の評価と各種関係者への報告、共有も行います。大統領選挙後の社会情勢不安やコロナの感染拡大に伴う隊員の緊急帰国対応、第三国治療や緊急移送を含む傷病対応などを経験しましたが、JOCV事務局と在外関係各所の協力と連携で各支援の完了に至ったことに感謝しています。

    VCのやりがいや魅力についてお聞かせください。

    VCは、JICA本部(海外協力隊事務局)と任国事務所、他現場関係者と協力体制を築きながら、隊員支援が必要となれば、各者の特性に応じ適切な対策を検討し、サポートする立場です。現場の最前線で奮闘するのが隊員で、VCは黒子的な役割です。途上国では、現場組織のストライキや他社会情勢の急変、健康・安全面でのトラブルなど不安定な要素が多いですが、厳しい環境や条件下でも隊員が生活と活動を積み重ねられるよう、VCはその支援の形を模索します。その支援が結果として、隊員が前に進む上でのヒントや後押しになれば、自身もエネルギーを得ることができます。隊員の任期の充実を願い動くことで、自身も人間的対応力が鍛えられます。それが、私にとってのやりがいです。

    ご自身の経験も踏まえ、VCに求められることは何でしょうか?

    「1.コミュニケーションと人間関係を構築する力」:難題の前で自力で解決できることは限られ、関係各所の理解と協力のもと、各種課題の克服が可能だと実感します。

    「2.想像力・判断力・行動力」:背景や価値観が異なる組織や相手の状況をくみ取り、適切な働きかけを考え、実行する力。途上国では不測の事態も多く、マニュアル化は困難です。自身の人間力を鍛えることが大切です。

    「3.グローバルな視野と細やかな対応」:ボランティア事業は、国家間の関係構築にもつながるダイナミックな事業。一方で日々の業務は、拠点運営業務、各種依頼への対応、隊員支援など、小さな対応の積み重ねです。思考はグローバルに対応は細やかに、といったバランスが大切です。

    現在(前職)の業務では、どのようなことを担当されていますか? また、VCのご経験で活かされている面などお聞かせください。

    ジブチ支所(前職)では、ボランティア事業全般を担当。ジブチの隊員派遣は小規模でVCは一人体制ですので、必然的に全ての分野・業務を担当しました。当時、健康管理員の配置には至らず、遠隔からの相談体制の下、隊員の健康管理や傷病対応も行いました。また、支所体制も小規模だったため、安全管理や経理・労務などの運営業務も支援するなど、組織全体や関係者の状況に応じ、必要と判断する業務は何でも行いました。これらは一方通行のフォローとはならず、自身が業務対応などで窮地に立つ際、関係者が支援して下さり、結果的に自身が守られたことを実感しています。組織運営は単独ではなく、良き関係性の中で進捗するもの。協働が生かされました。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    専門的な知識や技術は、活動の裏付けや支えとなります。一方、組織やチームで事業を運営する場合、コミュニケーションと人間関係の構築力は必須です。課題解決の際、関係者に相談でき、支援が得られる体制。それは、日々のコミュニケーションにより築くものです。私自身、常に力不足を感じてきましたが、関係者との信頼関係のもと、理解と協力を得て難題を克服する経験を重ねてきました。Withコロナ時代で厳しい状況下でも、建設的な思考を保ち、関係者が力を得られるよう働きかけることも大切です。状況改善のため負の側面の分析は必要ですが、批判のみでは物事は進捗せず、協力体制さえ崩しかねません。現実的かつ建設的な思考のもと、より良いコミュニケーションと人間関係構築で、自身の活動基盤を築いていって下さい。

    *2022年3月よりベナン支所に赴任予定

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