技術研修の現場で知識とアイディアの共創を支援。

前山 真吾さん

その他 研修監理員 50代

  • 研修監理員
  • 多岐にわたる分野
  • キャリア年表

    大学学部生

    1987~1992年

    外国語学部でスペイン語、スペイン語圏地域、学芸員課程を専攻。

    現地職員

    1994~1995年

    国際協力事業団(現:JICA)アルゼンチン事務所で現地職員として情報収集・報告書作成などの業務を担当。

    大学院生

    1998~2000年

    大学院(修士課程)で地域研究を専攻。

    研修監理員

    1998~2011年

    一般財団法人日本国際協力センター(JICE)研修監理員。

    JICA研修監理員

    2012年~現在

    研修監理員として研修監理業務担当。

    文化的な背景を踏まえて相互理解を促進する。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    学部生時代に国際関係論やラテンアメリカ地域について学ぶ中で、内発的発展論について触れたこと、外国からの留学生との交流や自身の留学経験の中で個人と社会との関係について考えさせられたこと、また当時の国際情勢や各国状況、時代の熱気というものを直接的・間接的に感じる機会があったことが国際協力に関心を持つきっかけだったと思います。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    大学卒業後、南米地域の世界遺産の現地取材で調査助手など短期業務を続けた後、国際協力事業団(現:JICA)アルゼンチン事務所に現地職員として採用され、情報収集業務に従事しました。具体的には、毎日現地日刊紙主要5紙や官報に目を通し、国際協力関係の記事や重要な社会経済動向について要約をレポートとしてまとめたり、四半期報告ドラフトの一部を作成したりしていました。また各種機関発行のレポートを読んだり、講演会やセミナーにも出席しました。調査能力を高めようと知り合った米国や欧州のリサーチャーと調査方法について情報交換もしていました。当時のアルゼンチンでは憲法改正、行政改革、金融・財政制度改革、社会保障制度の刷新など矢継ぎ早に打ち出される政策を追いかけるのに精一杯でした。帰国後は、一般財団法人日本国際協力センター(JICE)のスペイン語研修監理員として業務を始めました。また1998年に中米地域を襲ったハリケーン・ミッチの後、復興支援関連の調査団に同行したことに始まり、いくつかのプロジェクト形成調査や評価の調査団の通訳・調査補助の業務も行いました。2012年からはJICA登録の研修監理員として主に国内の技術研修プログラムに携わっています。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    JICAの技術協力の一環として実施される課題別研修、国別研修、青年研修の中でスペイン語で実施される研修プログラムの研修監理業務を担当しています。具体的にはJICA(受入国内拠点・本部担当課)、研修実施機関・団体、来日研修員の三者間の調整業務、担当言語でのコミュニケーション支援業務(通訳など)、理解促進ファシリテーション、研修行程進捗管理業務、講義資料の確認、研修実施機関や視察先への同行業務を研修監理員(研修コーディネーター)として行っています。状況に応じて、業務の中にアクションプラン作成ファシリテーションや日本文化理解促進の活動が含まれることもあります。また、研修員の体調が優れない場合や怪我の際には病院に同行することもあります。実際に研修員が診断を受けた後、急遽、緊急手術に立ち会ったこともありました。JICAが実施している技術協力の分野や課題は多岐にわたっているため、研修プログラムも様々な性格のものがあり、各研修監理員はある程度対応可能な分野を持っています。私の場合は、これまで自然環境・生物多様性、民間部門支援(生産性・品質向上、中小企業支援)、教育・人材育成の主に三つの分野の研修を担当することが多くありました。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    スペイン語で実施される研修プログラムでは、英語の場合と違い、スペイン語での講義や視察案内がまだ少ないため、研修監理員が通訳(逐次)する割合は高くなり、そのため必然的に研修内容に深く関与した業務内容となります。研修監理員が研修実施機関、また講師、視察先担当者の方々と良好なコミュニケーションを取り、研修の意図するところをよく理解した上で業務をすることで、最終的には研修員が達成感を得て、輝いた表情になるのを見ることがやりがいであると感じます。また研修監理員として、研修プログラムを通じて、様々な人と様々な場所で様々なテーマや課題について話し合うことで生まれてくる「知的共創の場面」に立ち会えることが仕事の魅力です。研修員や被招聘者が日本滞在中、研修先への移動中や自由時間に、日本側の設定した目標や意図とは別のところで、大きな気づきや発見を得ることも多く、私も別の視点から見た日本の文化や社会の一面を学ぶことがあります。技術研修という国際協力の現場においては、日本側も研修員も相互に学び合うことが多いと思います。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    研修監理員として仕事の質を維持し向上させていくために、担当言語であるスペイン語と日本語のコンピテンシーを少しでも常に高めていくこと、スペイン語圏地域について深く知ること、主な対応業務分野の動向を継続的に追っていくこと、そのために有効な方法論を探り、体系的にまとめることを目標としています。また個人的にはキュレーターとして、スペイン語圏地域の多様な文化や自然について紹介していくこと、共通の問題意識を持った各方面の仲間とは、ラテンアメリカの教育の向上に少しでも貢献できる教材や図書、プログラムの開発を図っています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    ラテンアメリカ各国の出身者と接することで、国際協力について考える際に、三つの視点が大事だと感じるようになりました。一つ目は「地域性」。国際協力は二国間協力がまだ主ですが、広域での協力プロジェクトも増えてきており、地域を単位として分析し、国民国家をより広い文脈で考察することで近接する諸国との共通点や対比点が明確になると思います。二つ目は「歴史性」。現在の状況を理解し、将来の展望を考える上で現代史はもちろん、遥か遠い過去でさえも重みを持っていることに気づかされます。三つ目は「多様性」。同じ国であっても内部には条件の違う様々な世界や人々が存在していることは理解しているつもりでも、忘れがちになってしまい、気をつけるべき点だと自戒しています。技術研修の現場では日本の経験から学ぶことに加え、世界的な課題を共に解決していくという意識がこれからますます重要になってきているように感じます。

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