世界中にいるろう者と聴者の垣根をなくしたい!

廣瀬 芽里さん

国際協力NGO/NPO 特定非営利活動法人Yes, Deaf Can! 40代

  • NPO/NGO スタッフ
  • 多岐にわたる分野
  • キャリア年表

    短大生

    1992~1994年

    東海大学短期大学 電気通信工学科卒業。

    エンジニア

    1994~2002年

    三菱重工業株式会社 化学プラント部にて設計の仕事に従事。

    研修生

    2008〜2011年

    ダスキン障害者リーダー育成海外研修生として渡米。ろうの需要、供給をリサーチ。

    海外協力隊

    2013〜2015年

    ドミニカ共和国のろう学校にて教鞭を執る。またろう者のための職業訓練校の設立に携わる。

    理事・代表

    2016年~現在

    任意団体としてYes,DeafCan!を設立。令和元年にNPO登記。

    JICA専門家

    2021年6~9月

    ブラジルで実施した「たんぽぽプロジェクト」の事後調査に従事。

    障害当事者による国際協力活動。特に途上国のろう者の可能性を広げられるよう日々奮闘。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    私は先天性のろう者で、コミュニケーション手段は手話です。学生時代、健聴者を対象に進む講義についていけず、アルバイトに逃げていました。そこで得たお金を貯めては旅に出る、そんな学生時代を送っていました。旅の目的の一つに現地のろう者との交流がありました。世界各国のろう者との交流を楽しみ刺激を受けましたが、開発途上国のろう者との出会いには考えさせられました。スキルがあるのに仕事に就けない、社会から認められない、ろう者の立場を嫌というほど見せつけられたのです。同じ障がい者として、この現実を黙って見過ごす訳には行かない。少しでも多くのろう者が、聴者と垣根なく過ごせるよう、国際協力への道に進みました。

    これまでにどのようなキャリアを歩んで来られましたか?

    海外協力隊員としてドミニカ共和国にあるろう学校にて教鞭を執っていた時に、ろう学校を中退した成人ろう者たちから、個人的に勉強を教えて欲しいとお願いされました。そこで最初は個人的に部屋を借りて、簡単な算数とスペイン語を指導しました。しかし、持続的に行う必要があると感じたため、配属先の幹部と相談し、日本大使館の草の根プログラムに応募しました。何度も面接を行いながら現地のろう者のためにアクションを起こし、念願が叶い職業訓練校を設立することができました。そして、帰国後も引き続き活動ができるよう同志たちと「NPO法人Yes, Deaf Can!」を登記し、現在理事・代表として、猪突猛進しています。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    NPO法人Yes, Deaf Can!の理事・代表として総括業務をしています。大きく分けて二つあり、一つは会計、メディア、会員、販売などを管理している事務局での資金集めのためのグッズ販売、チャリティーイベントの実施、そして講演活動です。二つ目はマイクロファイナンスプログラムの企画や、マイクロファイナンスプログラムに応募したい開発途上国のろう者との、ビデオチャットでの打ち合わせです。また、情報が得られないろう者に対して、こういったプログラムがあると手話動画を作りSNSで宣伝しています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    現地の方々と共に活動し、成果によってもたらされた喜びを共有できることです。ろう当事者による活動なので、ろう当事者にしかできない可能性がそこにあります。また、事務局のスタッフもほとんどろう者なので、団結感を一層強く感じます。みんなで共に刺激を受けながら、開発途上国のろう者を支援しています。支援を受ける側もろう者としてのロールモデルとなり、他のろう者に良い影響を与えると共に、社会全体を変えることができると強く信じています。私自身も初心にかえり、熱心に物事に取り組む姿勢を学ばせてもらっています。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    新型コロナウイルスの影響により事業に遅れが生じていますが、この状況下でも目標を下げずに実施できるよう、しっかりとサポートしていきたいです。また、今後は国際協力の専門性をさらに深めたいと思っています。幸い国際開発を専攻した同志たちが周辺にいるため、実務を通して的を絞って専門性を高められたらと考えています。後に続くろう者のためにも、若手育成などにも力を入れたいです。少しずつですが、他分野での知識も深めていきたいと思っています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    私は修士号も持っていませんし、業務内容は前職と全く繋がりもありませんが、要はハートです。海外協力隊に行く前は、私が開発途上国の皆さんに指導して、少しでも生活を豊かにしてあげるのだと意気込んでいました。いざ日本を離れてみると、現地の方々から学ぶことの方が多く、私の考えが間違っていたことに気づかされました。明日食べる物もないのにいつも笑い、踊っている人たちに囲まれて人生観が変わりました。現地の人々と接し、生で彼らの声を聞くことで大切なことは何かを学んだのです。現地の人々と時間を共有することをおすすめします。その経験は一生の財産となると思います。

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