日本と途上国の地域の学び合いによる国際協力を目指して。

石橋 裕子さん

国際協力NGO/NPO 一般社団法人Think Locally Act Globally 50代

  • NPO/NGO スタッフ
  • 貧困削減
  • キャリア年表

    大学学部生

    1986~1990年

    社会学部で社会学を専攻。

    東京都特別区職員

    1990~1998年

    行政職として、福祉、外国人登録、調査統計、区政調査研究等の業務に従事。

    JICA海外協力隊

    1999~2001年

    スリランカで村落開発普及員として、スラムの住宅改善やマイクロファイナンス等、低所得層の生活改善を支援。

    JICAジュニア専門員

    2001~2003年

    貧困削減/参加型開発を専門とし、社会開発協力部でプロジェクト計画立案や貧困削減チームのタスクに従事。

    JICA専門家

    2003~2004年

    JICA技術協力プロジェクトで地方の貧困層女性の小規模起業支援のため参加型調査を実施。

    JICA市民参加協力調整員

    2011~2014年

    JICA北陸で草の根技術協力事業のコンサルテーション、案件監理、市民向けの国際協力セミナーを実施。

    大学院生(e-learning)

    2015~2020年

    英国ロンドン大学アジア・アフリカ研究大学院で開発マネジメント学(貧困削減)修士課程修了。

    NGO代表理事

    2016年~現在

    一般社団法人ThinkLocallyActGloballyを設立。北陸から国際協力活動を実践。

    Think Locally Act Globallyの実践。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    1988年、学生時代のタイ旅行で道端で物売りをする子どもに出会い、日本との違いに衝撃を受けました。その後、行政職員として調査研究の仕事をしていたとき、阪神淡路大震災時に国際協力の経験のあるボランティアが活躍していたことを知り、自分も何かしたいと国際協力NGOの東京事務所でボランティアを始めました。以前は、精神的にも体力的にもタフでなければ開発途上国で生活できないと思っていましたが、3年間のボランティア活動を通して、普通の人でも開発途上国で活動できることを知りました。また、大学で社会学を学んだことは住民参加のコミュニティ開発に活かせると考え、JICA海外協力隊(現、JICA海外協力隊)の村落開発普及員に応募し合格しました。当時の所属自治体では「現職参加」が難しく、公務員を辞職するか、協力隊を諦めるかの選択で悩みましたが、開発途上国で活動したい気持ちが強く退職を決意しました。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    大学卒業後、9年間働いた自治体を退職し、JICA海外協力隊としてスリランカの低所得層地域の生活改善を支援しました。帰国後、JICA本部で貧困削減のジュニア専門員として約2年間、貧困削減の課題別指針作成に関わると共に、ホンジュラス地方女性による小規模起業支援プロジェクトの計画立案を担当しました。このプロジェクトで専門家として派遣され、プロジェクトの立ち上げや参加型調査などの業務に約1年半従事しました。その後、結婚・出産し、随伴家族としてホンジュラスやインドネシアに滞在し、約6年間育児に専念しました。2011年からは国際協力の仕事に復帰し、JICA北陸で市民参加協力調整員として市民による国際協力活動を支援しました。この経験を基に2016年に一般社団法人Think Locally Act Globallyを設立しました。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    現在は、北陸を拠点とする一般社団法人Think Locally Act Globallyの代表理事として、地方の視点からの国際協力活動と日本の地方と開発途上国双方の学び合いによる地域づくりを目指しています。北陸3県のNGO、大学、民間企業などと連携し、JICA草の根技術協力事業の実施に参加しています。また私が協力隊で活動していたスリランカでは、低所得層女性が主体的に行うオーガニック家庭菜園の支援プロジェクトを実施し、収穫物の共同販売による生計向上を目指しています。日本では、コロナ禍で北陸在住の外国人への支援活動を行うと共に、2021年には「北陸×国際協力×外国人との共生」という国際協力セミナーを開催しました。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    私は首都圏出身ですが北陸に移住してから、北陸だからこそできる国際協力があるということを知りました。北陸に住む人々と知り合い、地方ならではの考え方に触れ、地域の方々と一緒に国際協力の仕事をできることが一番の魅力です。例えば、私が関わる環境教育のプロジェクトでは、かつて富山県神通川流域で起きたイタイイタイ病の経験と教訓をインドネシアに伝え、二度とこのような悲劇を起こしてはならないと環境教育の重要性を訴えています。また、福井県内の人口減少が進む地域では、衰退する伝統木造建築技術をラオスの若者に継承しつつ、現地の建築産業の人材育成と日本の地域活性化に取り組んでいます。日本の地方の人々と開発途上国の人々がつながり、国際協力ができることにやりがいを感じています。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    北陸に移住して10年以上が経ち、地域の良さや課題も少しずつわかるようになってきました。今までの経験を活かして、これからも一般社団法人Think Locally Act Globallyの活動を継続していきます。北陸と途上国の地域同士のつながりの中で、日本から一方的に開発途上国に教えるだけではなく、日本の人々も開発途上国から学び、双方が発展できるような活動を行っていきたいと思っています。時間はかかっても小さな活動を積み重ねていくことで、北陸と開発途上国に国際協力の種をまき続けていきたいと考えています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    私は出産・育児で一時、国際協力の仕事から離れたので継続的なキャリアではありません。大学院の修士課程も仕事や育児をしながらe-learningで6年かかりました。キャリアについては、計画して段階的に形成してきたというより、ただ世界の地域にひとつでも多くの幸せと笑顔を増やしたいという思いで国際協力を続けています。私一人では大きなことはできませんが、志を同じくする人々とつながり共に活動することで、思いを実現することができると信じています。国際協力の形はひとつではありませんし、国際協力への道もその人の数だけあると思います。ぜひ、自分らしい国際協力を見つけ欲しいと思います。

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