ジェンダーに基づく暴力(GBV)被害のサバイバーに寄り添いながらNGOとガイドラインを作成。

池内 千草さん

国際協力機構(JICA) JICA南スーダン事務所 50代

  • JICA 技術協力プロジェクト専門家(技術移転型)
  • ジェンダーと開発
  • キャリア年表

    私立高校英語講師

    1997~2000年

    私立高校で英語講師として勤務。

    大学院(文学修士)

    2000~2003年

    タイの大学でジェンダーと開発(修士)について学ぶ。

    国連機関

    2003~2005年

    タイの国連機関(UNODC)でインターン。その後、複数機関(UNAIDSなど)で契約職員として勤務。

    コンサルタント会社

    2005~2006年

    タイで社会開発の仕事を受注する日系コンサルタント会社に勤務し、ラオスやベトナムの調査事業に携わる。

    財団法人

    2006~2008年

    政府系の実施機関としてILOと協働しながら研修やフォーラムの開催を担当。

    国際協力NGO/(ワールドビジョン)

    2008~2021年

    日本事務所では支援事業部に、東アジア事務所(6年)ではメコン地域人身取引事業のマネージャーとして勤務。

    村を対象とした小さな視点と、国の指針に携わる大きな視点。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    高校時代に民間の交換留学プログラムを使って1年間アメリカで高校生活を過ごしたことが根底にあると思います。留学期間中、世界中から集まった高校生たちと交流する機会があったのですが、自国の問題により、トルコ系(キプロス島北部トルコ軍支配地域出身)の女の子を気まずいと言っていたギリシャ人の友達が、じっくり2人で話をして「お互い誤解していた」と仲良くなる様子がとても印象的でした。このプログラムでは「お互いの違いを尊重すること」と繰り返し言われていたのですが、その”違いを尊重する”ことの難しさと意味を高校生なりに考えることができました。この経験が、様々な背景を持つ人々と仕事をしながら問題解決をするという、現在の仕事に進むきっかけになりました。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    特に国際協力NGOで勤務を始めたころから、「自分の専門分野は何だろうか?」と考え始めました。きっかけとなったのは、東南アジア6か国で人身取引の問題に関わり、医療、法律、職業訓練などの様々なアクターが協働する”プロテクション(保護)”という分野の仕事に就いたことでした。サバイバーというGBV被害者や暴力で最も脆弱な立場にある人との関わりや、社会復帰を支援するやりがいなどから、「この分野で仕事を深めたい!」と考えるようになりました。帰国後も、プロテクションにつながる仕事に積極的に関わり、仕事の幅を広げるように心がけました。また、当時の上司の理解も大きかったと思いますし、人身取引に関わるJICA事業の調査案件に挑戦したことが今の仕事につながっていると思います。

    *GBV:ジェンダーに基づく暴力

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    南スーダンで国と中央エクアトリア州のジェンダー・子ども・社会福祉省(ジェンダー省)のアドバイザーとして勤務しています。本事業では「GBV被害者の自立と社会復帰推進」のため、国と州のジェンダー省担当者と連携しながらNGOなどとパイロット活動を実施し、好事例を基にガイドラインを作成していきます。赴任から1年弱経ったところで、パイロット活動の実施に向けてパートナー団体と活動内容を詰めているところです。女性の収入向上の活動を支援するため、女性への質問票をつくり、その結果を基に必要な研修や調査、支援内容を固めています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    NGOでの仕事は対象地域が村や郡となるため、活動を通して人々の生活が変わっていく様子を見ることができ、非常にやりがいを感じました。その一方、国や地域全体の大きな視点で仕事をする機会が少なく、国の指針に影響を与えることが難しいことを残念に思っていました。現在の仕事は、どちらにも触れることができるという意味でやりがいの大きい仕事です。南スーダンはとても若い国で、政府が成熟していないため、政府の本来の業務をNGOなどが実施しています。そのため今回のパイロット活動はNGOと連携をするのですが、その結果を基に、GBVサバイバーの社会復帰の観点からガイドラインを作成し、それを広く普及していく計画になっています。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    JICAとの契約は2023年9月までとなっていますが、契約終了後も”プロテクション”分野で仕事を続けていきたいと思っています。今回ガイドラインを作る過程で、GBVサバイバーの社会復帰における効果的な要因を学びたいと思っています。今回できたモデルを南スーダンだけではなく、その他様々な国で実践し、より精査しながら展開していくことができればと考えています。前職の国際協力NGOを2年間休職しているため、契約終了後は一旦前職に戻ります。その後のことは、現時点ではまだクリアではないですが、所属団体にとらわれず問題にコミットし続けることが私自身の目標です。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    私が国際協力の道に足を踏み入れた当初は、今のようにはっきりとしたキャリアパスはなく、「どうしたらいいのかな」と悩みながら進んできたように思います。目指す道を選ぶうえで情報や知識は重要ですが、常に「自分が何をやりたいのか」と、問うことがより大切ではないかと思います。私は行き詰まるとよく一人ワークショップやSWOT分析、コーチングなどを行い、その時々の自分の置かれている状況、自分自身の考えを整理していました。自分が求めるものをはっきりさせておくと、次のステップがよりスムーズになると思います。頑張ってください!

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