持続可能な養殖を開発途上国に。

渡辺 樹里さん

民間企業 五十嵐養鯉場 30代

  • 民間企業
  • 水産
  • キャリア年表

    高校生

    2004~2007年

    水産高校で栽培漁業を専攻。マグロ養殖場でのインターンシップ等を経験。

    大学学部生

    2007~2011年

    水産学部で養殖を専攻。ベトナムへ留学し、環境保全型エビ養殖を研究。

    水産卸売

    2011~2012年

    水産物の買付や水産加工食品の商品開発を担当。

    JICA海外協力隊

    2012~2016年

    養殖隊員として、フィリピンの世界遺産の棚田で稲田養魚の普及活動に従事。

    水産開発コンサルタント

    2017~2021年

    水産庁の国際協力事業や、JICAの養殖研修事業等に従事。

    大学院修士課程

    2019~2021年

    国際水産開発学を専攻。水産エコラベル(持続可能性に配慮した水産物の認証スキーム)を研究。

    地域おこし協力隊

    2021~2022年

    長岡市錦鯉養殖組合で持続可能な養殖業に向けた調査やPR活動等に従事。

    大学院博士課程

    2021年~現在

    農村計画学を専攻。錦鯉養殖業と農村の持続的発展の関係性を研究。

    錦鯉養殖場

    2022年~現在

    「養鯉場を拠点とした、日本の地方と途上国をつなぐ国際協力の実現」を目標に修行中。

    日本の地方と途上国をつなぐ国際協力を目指して。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    水産高校の授業で、「日本に輸入されているエビの多くは、東南アジアのマングローブ林を伐採して養殖されていた。それによりマングローブ林の多くが失われた。」ということを教わり、「将来は持続可能な養殖を開発途上国に普及する仕事に携わりたい。」と考えるようになりました。そのことを担任の先生に相談したところ、「それならば、海外協力隊があるよ。養殖の職種もあるよ。」と教えてもらい、そこから海外協力隊を目指すようになりました。高校生の頃から姉2人と東南アジアを旅行したり、東南アジアの穏やかな雰囲気が好きだったことや、乗船実習に参加したりしていたこともベースにあります。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    高校生の時に立てた、”持続可能な養殖を開発途上国に”という目標が常に念頭にあります。そこで、環境保全型養殖の研究ができる大学を選び、ベトナムに留学してエビ養殖の研究をしました。そして、海外協力隊では、「稲田養殖の普及を通してフィリピンの世界遺産の棚田を保全したい。」という想いを持って活動しました。帰国後は、水産開発コンサルタントとして水産庁やJICAの事業に従事するとともに、大学院で水産エコラベルを研究しました。現在は、「日本の養殖現場に拠点を持ち、そこで身につけた活きた技術を途上国に伝えたい。」という考えから、地域おこし協力隊のスキームを利用して新潟県に移住し、大学院博士課程で研究をしながら、錦鯉の養殖場で働いています。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    朝は5~6時頃から始まります。自分が管理を任されている野池が約30面あるので、各池を回って餌を与えたり、池の攪拌(かくはん)をしたり、水質の状態を観察して肥料を足したり、湧水を各池にひいているのでそのメンテナンスもしています。また、越冬ハウスでの錦鯉の育成管理も担当しています。それらの朝の日課が終わった後、野池に防鳥網を張ったり、除草をしたり、ハウスの池を洗ったりといった養鯉場全体の作業をします。ほとんどの作業は一人で行いますが、人工産卵や大きな錦鯉の池揚げ、錦鯉の出荷等は社長と他のスタッフと共に行っています。また、大学院博士課程で、”錦鯉養殖業と農村の持続的発展の関係性”を研究しています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    錦鯉の養殖には、食用魚の養殖に活かせる技術が凝縮されています。野池を使った養殖はまさに途上国の淡水養殖と同じですし、越冬ハウスでの育成は高度な陸上養殖の技術が用いられています。また、錦鯉の多くは輸出されており、海外へのマーケティングも大変勉強になります。一方、ここ新潟県長岡市は錦鯉発祥の地として有名なのですが、日本有数の豪雪地帯の中山間地にあり、他の産地と比較して生産条件は非常に過酷です。それにも関わらず、多くの若手生産者が親の跡を継ぎ、中山間地の耕地を守り続けていることは、日本が誇れる貴重な農村の姿だと感じます。ぜひ、この養殖技術と農村の持続的発展のあり方を途上国にも伝えていきたいです。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    今働いている五十嵐養鯉場を拠点に、途上国へ食用魚の持続可能な養殖技術を伝えていきたいと考えています。社長も「応援する」と言ってくれています。そのために、草の根技術協力事業等のスキームを活用することも考えています。また、自分自身、学生時代の様々な経験が今につながっていると感じているので、「新潟の学生たちと一緒に国際協力ができれば…」という希望もあります。他方、これまでの国際協力の経験から、最も現場を変えるのは”ビジネスの力”なのではないかと感じているので、自分の手で途上国で養殖業を始め、持続可能な養殖のビジネスモデルを実践することが最終的な目標です。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    私自身は若い頃から様々なことに挑戦する機会に恵まれてきましたが、その度にいつも、「自分にできるのだろうか…失敗したらどうしよう。」と不安を抱えてきました。実際に失敗することは山ほどあり、周囲に迷惑をかけることも多々ありました。けれども、目標があり、それに挑戦するチャンスがあるというのはそれだけで恵まれていることなので、何でも思い切って飛び込むようにしてきました。これから国際協力の道を目指される方にも、勇気を持って目標に向かい続けてもらえたらと思います。また、目標や想いは口に出して伝えることが大切だと感じています。そうすることで、自分の考えに共感し、協力してくれる人たちに出会えると思うからです。

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