文化人類学的視点を持った緊急援助のプロを目指して。

宮家 佐知子さん

国際協力NGO/NPO 国境なき医師団 40代

  • NPO/NGO スタッフ
  • 保健医療
  • キャリア年表

    JICA海外協力隊

    1999~2001年

    村落開発普及員として、ネパール極西部の村落にて女性開発活動に携わる。

    JICA海外協力隊

    2002~2004年

    チームリーダーとして、ザンビアの首都ルサカ低所得者層居住地にて、改良コンロの普及に携わる。

    JICAジュニア専門員

    2005~2007年

    国内ではJICA事業の社会調査活用の調査研究、海外ではエイズ対策プロジェクト(ケニア)に従事。

    JICA専門家

    2007~2009年

    エイズ対策プロジェクト(ケニア)にて、調整業務及び予防啓発活動に携わる。

    NGO職員

    2009~2014年

    国際保健NGOスタッフとして、JICAの技術協力プロジェクト(エジプト・スーダン)に携わる。

    NGO職員

    2016年~現在

    国境なき医師団(MSF)スタッフとして、アフリカを中心に健康教育・啓発活動やプロジェクト運営に携わる。 *MSF:MédecinsSansFrontières

    様々な経験を積んでたどり着いたやりたいこと。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    子どものころにエチオピアの大飢餓(1980年代)の様子をテレビで見て、興味を持ったのが始まりです。がりがりにやせ細った大人や子どもたち、おなかだけが大きく出た子どもたち、たくさんのハエが子どもたちの目や口の周りにいる様子は、まだ10歳であった自分にとっては衝撃的で、大人になった今でもその様子を思い出せるくらいです。「世界にはこんなところがあるのか!」と驚き、世界の状況、特に途上国といわれる国々に住んでいる人たちの社会的な状況に興味を持つようになりました。働く場として国際協力の場を意識したのも同時期です。エチオピア飢餓対策に関わっている日本人女性のインタビューを見て、「こんな仕事があるのか!」と知り、「自分もいつかこんな仕事がしたいな」と思ったのがきっかけです。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    大学4年生時には国際協力分野の組織や民間企業も含めて就職活動をしましたが、うまくいきませんでした。就職よりも、「早く海外の国際協力のフィールドに行きたい」という思いのほうが強く、大学卒業後は1年間フリーターをして、イギリスで英語と開発学を1年間学びました。その後、JICA海外協力隊の試験に合格し、ネパールに派遣されたのが国際協力キャリアの始まりです。約10年超は政府開発援助関連の調査研究やJICA技術協力プロジェクトに様々な形態で携わり、必要な知識を得るために再度イギリスに留学したりと、キャリアを築いてきました。その後、公衆衛生を勉強し、その知識を生かして、これまでとは異なる事業形態に関わりたいと思い、現在働いている国境なき医師団の仕事を始めました。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    国境なき医師団で仕事を始めて現在7年目です。初めの6年間はヘルスプロモーターとして、アフリカを中心に健康教育や予防啓発活動に携わってきました。外国人である私の役割は、国境なき医師団が活動するプロジェクトの対象地域の現状(文化的・社会的な背景)に沿った健康教育や予防啓発活動を効果的に実施できるように、活動の計画立案や必要に応じた活動計画の見直し、現地のヘルスプロモーターたちの育成を行うことでした。7年目からはプロジェクト全体の責任者であるプロジェクトコーディネーターになることを目指し、副プロジェクトコーディネーターとしてプロジェクト活動が目指した目標を達成できるように、中央アフリカ共和国でプロジェクト管理の業務に携わっています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    国境なき医師団の仕事の醍醐味は、紛争や自然災害を理由に十分な保健医療サービスを受けることができない地域や人びとに、実際に保健医療を届ける活動に最前線で携われるという点だと思います。すべての問題を一つの組織で解決するのは不可能なので、実際に現場で働いているとジレンマを感じることもあります。しかし、幼いころに抱いた夢の一つである、「困難な状況下にある人びとへの支援活動を現場でしたい」という思いを叶える場として、国境なき医師団の仕事は理想の場だと思っています。また、プロジェクトスタッフの大半を占める現地採用スタッフの育成に関わることで、彼ら・彼女たちの成長を見る機会がありますし、逆に彼ら・彼女たちから学ぶこともたくさんあり、
    常に自分の学習意欲に刺激を受ける職場環境だと感じています。マネジメント層は主に海外派遣のスタッフで構成されていますが、国籍、性別、年齢、教育背景など多様性に富んだ職場環境であり、時には軋轢が生じますが、常に新たな学びがあります。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    年齢的に、すでに職業人としての後半戦に入っています。30代・40代前半までは、キャリア形成にもがいて、迷走したり、不安になったりと、悩みが尽きませんでした。そんな中でも、上司や同僚に恵まれ、草の根活動から政策策定に関わるような経験を積ませてもらうことができ、自分にとっては現在の基礎となっています。自分が若い時に経験を積ませてもらえたように、これからはライフワークとして、自分の国際協力の経験を若い世代に伝えるなど、若い世代の育成に携わりたいと思っています。また、自分が海外にいる時に現地のスタッフが助けてくれたように、日本に居住する外国人に関する活動にも携わりたいと思っています。職業人としての短期的な目標は、プロジェクトコーディネーターとして、現地の文化的・社会的背景に配慮したプロジェクト運営ができるように経験を積むことです。長期的な目標は、複数の緊急プロジェクトを統括し、少し大きな視点で戦略を考え・実行するような立場の仕事をすることです。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    国際協力の道は一つではありません。実際に海外の現地に行って仕事をする、日本国内で国際協力に携わる、民間企業や大学との連携など、多種多様な関わり方が存在します。国際協力に興味をもっているけれども、一歩踏み出すのに躊躇しているのであれば、ぜひ一歩踏み出してみてください。長い人生、自身のライフプランによって、その都度、関わり方も異なってくると思います。その時々の自身の環境に合わせて、しなやかに道を修正して、歩んでいけばいいのではないでしょうか。
    私は40代に入ってようやく、これまでの経験と自分のやりたいことが合致する場を見つけることができました。
    そのため、国際協力に関わりたいという思いがあれば、その思いを突き詰めてほしいと思います。関わり方は、その思いの後についてくるものだと思います。

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