組織と共に学習と実践を重ね、人と組織の関係性をアップデート

山下みほこさん

国際協力NGO/NPO 特定非営利活動法人ACE 40代

  • NPO/NGO スタッフ
  • 多岐にわたる分野
  • キャリア年表

    IT企業の社内SE

    2002~2008年

    社内情報システム部に所属、新人研修やPCの不具合対応、社内グループウエアの開発運用を担当。

    NGO専門調査員

    2008~2009年

    「ITを活用したファンド・レイズ活動に関する調査」をテーマに調査研究。支援者データベースを移行。

    NPO/NGOスタッフ

    2009~2021年

    IT、グッズ販売、キャンペーン実施、イベント実施・出展、支援者コミュニケーション、広報などを担当。

    業務委託

    2021年~現在

    人材・組織開発を中心に業務を担う。

    「踏み出せば、その一歩が道となる」を実感してきた15年間
    ~自身の興味関心とその経験・スキルが自身の国際協力の道に~

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    小学生か中学生の頃、テレビで見た番組がきっかけです。チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故によって汚染されたベラルーシのある地域の方々が、危険だと分かっていても安全なものは高価で買えないという理由から汚染された農作物を食べざるを得ない現状があり、その地域の方たちを夏休みの間日本に招き、安全な食べ物や安全な空の下、遊ぶことができる環境を提供している日本人のお医者さん(詳細は記憶が曖昧なのですが)を追ったドキュメンタリーで、のびのびと遊ぶ子どもたちの姿が印象に残りました。それまでは、日本という国や海外の国々のことを、それほど意識したことがなかったのですが、その番組をきっかけに、日本を越えて海外の人のために何かすることができるんだ、ということを知りました。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    大学卒業後、IT企業に就職し、社内SEとして経験を積みました。文系出身で元々のITスキルはWordとメールが使える程度だったため、最初は苦労しましたが、経験を積む中で出来ることが増え、新人研修や社内での関係構築、問い合わせ対応などの際に、自身の能力を活かせることに気づいたことは大きな自信になりました。国際協力との関わりは、仕事の状況などにより波はありつつも、興味が向くときに週末ボランティア等に参加する程度で、自分が働く場としては想定していませんでした。
    その後、転職を検討していた際に、偶然参加したのがACEのイベントです。イベント参加をきっかけにメルマガが届くようになり、その中でITスキルを持った人材を探していることを知り、それだったら私にできるかもしれないとコンタクトしたのがACEで働くようになるきっかけです。その後会社を退職し、当時外務省が国際協力NGO支援の一環として実施していた「NGO専門調査員」制度を通じて、ACEで支援者データベースの移行を行いました。専門調査員は期間限定の派遣でしたが、導入したデータベース(Salesforce)の活用に可能性を見出したACE側よりオファーを受け、直接雇用のスタッフとして働くようになりました。ちょうどそのタイミングで、ACEが寄付つきチョコレートの販売を開始するのですが、思わぬ反響を受けて対応人員を増強する中で私もグッズ販売に関わるようになり、そこからボランティア対応やイベント出展、広報など活動の幅が広がっていきました。Salesforceのユーザーコミュニティにも参加する中で様々な機会に恵まれ、NPOユーザーグループのリーダーを10年以上務めたり、企業の方とのつながりが増えただけでなく、コミュニティ主催の大きなイベントの司会に抜擢されるなど、ACEに留まらない経験を積むことができました。その活動が評価され、2023年にはSalesforce MVPに選出されました。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    主には人材・組織開発担当として、ACEの中の人たち(スタッフ一人ひとり)が本来持つ力を発揮し、それによって個人とACE、それぞれのパーパス(究極的な存在意義)が実現していく方向に向かっていくよう、個々人のサポートと組織のシステムを調整する役割を担っています。
    具体的には、「ホラクラシー®」ベースの自己組織化構造をACEで実現するべく、外部専門家の支援を受けながら、研修やワークショップ、ヒアリングとフィードバックなどその時必要だと感じた施策を重ねています。
    元々ACEでは「学習する組織」という組織マネジメントのアプローチを行動指針に掲げており、これまでにも「結果の質」を上げるための施策としてチームとしての「関係の質」を向上させるべく、NVC(Nonviolent Communication、非暴力/共感的コミュニケーション)という自己理解とコミュニケーションの手法を学び実践したり、個々人のありたい姿から組織の共有ビジョンを導き出したり、望まないのに何故か繰り返してしまうパターン(不本意な現実)とその背景にあるメンタルモデル(意識・無意識の前提)などに目を向ける等のプロセスを重ねてきました。ACEとして、世代交代をはじめとする組織のトランジションを意図する中で、個々人の変容といったソフトの面のみでなく、組織の仕組みといったハードの面にも着手する必要性を感じたところから、このプロセスは始まっています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    前述の通り、ACEは「学習する組織」のコンセプト・枠組みを活用し、研修などを通じて学習と実践を重ねてきました。幸運なことに、ACEがそのプロセスを本格的に開始する最初のタイミングから参加することができたため、直面する課題とそれに対するアプローチ、またそのパワフルさと一筋縄ではいかない現実を私自身、実感を持って体験してきました。ACEでの学習と実践に、仕事のみならず人生のレベルでも影響を受け、個人的にも学びを深める中、「ACEの中で、これから自分は何をしていくのか?自分はどうありたいのか?」について漠然とモヤモヤを感じていた時に、ACE内の研修で次世代型組織の一つの形である「ティール組織」というコンセプトを知りました。「これならば、人が人間らしくいられる組織を実現できるのではないか?私もそこに関わりたい」と可能性を見出したことが、ACEの中で仕事をつづけながら、それ以外のことにもチャレンジしていく業務委託という選択をしたことにも繋がっています。

    「*ホラクラシー®」では仕事の進め方において明確な手順があるものの、実際にその仕組みをどこまで・どのようにACEで導入・展開していくかについては、一つの明確な方法があるわけではなく、その時の状況に応じて施策を選択している感覚があり(ティール組織では”耳をすます”という表現をしたりします)、そのプロセスにおいて(ACEで出会い、個人的にも学びを深めてきた)自身のNVCやコーチングのスキルなどが生かされていること、このダイナミクスをリアルに感じながら学習と実践を重ねられていることに喜びがあります。これまでACEの中で育んできたソフト面の積み重ねとハード面の変化が組み合わさった時に、どんなACEが立ち現れてくるのか、今からとても楽しみです。

    *ホラクラシー®は仕事に着目した自己組織化の手法で、ホラクラシー®型組織はティール組織の一つの形であるとも言えます。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    ACEは新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、当時御徒町にあった事務所を手放し、フルリモートの勤務体制へと移行しました。元々フレックス制度を採用しており、制度としての自由度は比較的高かったのですが、物理的な出社を伴わないフルリモートになったことが、自身の働き方、時間の使い方を見直すきっかけになり、現在はACEでの仕事を業務委託として続けながらその他のコミュニティや個人としての活動も並行して行っています。

    児童労働をはじめとする社会課題を解決するには、まず現状を知ること、そして誰もがその現状を生み出すシステムの一部であると自覚することから始まると考えているのですが、私自身が複数の分野に関わり活動の場を広げることで、これまでそのような情報に触れる機会が少なかった方との接点や何かのきっかけを提供できたらと思っています。
    これまでにも、Salesforceのユーザーコミュニティや労働組合の方とのネットワークなどACEの外の人たちと関わる機会を比較的多く持ってきましたが、2023年6月からは、新たな試みとして、日替わりママの仕組みを採用している銀座のスナックで、月一回売上の一部がACEへの寄付になるイベント「スナックMIHOKO」を開催しています。私自身がママとしてお客様をお迎えする中でゆるやかなつながりを育み、「社会をよくしたいと思う人が集いつながる場」になればという思いで実施しているのですが、これまでとはまた違う化学反応が起きつつあることにワクワクしています。(この記事をご覧になった方も、良かったら遊びにいらしてください!)

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    私がACEに入って最初に感じたことは、NPO/NGOも事業内容が特殊なだけで”組織”なんだなということでした。だからこそ、ITや総務、人事、経理、広報といった役割・機能が企業と同じように必要で、その分野のことができる人を求めている組織は多いように感じます。そういった意味で、どんな経験も無駄にならないし、あなた自身の興味関心とその経験・スキルがかけ合わさった時に、あなたご自身の国際協力の道が現れるのではないかと思います。

    NGOで海外の子ども支援をしていると言うと、「何故、国際協力なの?(日本国内にも様々な課題があるのに)」という質問を投げかけられることがあります。現時点の私の答えは、日本でも海外でも例えば子どもを取り巻く課題は、同じような構造の中で起きていていると捉えており、大きな意味で両者はつながっていて、一方を解決することが他方の解決につながっていると考えています。また現時点で私が直接貢献できる場としてACEがあり、現在の担当業務を通じてACEがよりパワフルになっていくことが、社会全体がよくなっていくことにつながるのではないか、という希望があることから、目指す社会の実現のために私自身が役割を果たせる場としてACEにいる、という感覚があります。(ACE自体、近年日本の子どもに関するプロジェクトなど”国際協力”の範囲に留まらない活動を展開していますが)あえて、そんな問いをご自身に投げかけてみることも、ご自身と国際協力の関係性、国際協力を捉えているかに気づくきっかけになるかもしれません。私の経験が何かのヒントになったら幸いです!

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