「文系」「主夫」からの水のキャリア

~見えないガラスの天井に苦しむのではなく、できることから一歩ずつ~

  • 国際機関 職員
  • 水資源
  • 経済/経営/商学系
  • 社会/国際関係学系
  • 理/工学系

  • 高橋 逸郎さん

    高橋 逸郎さん
    国際機関 / UNICEF / 40代

    国際協力NGO

    2001〜2002年

    給水事業を実施するNGO駐在員として、事業の計画立案、事業運営管理及びモニタリング、評価などを担当

    在外公館

    2002〜2003年

    草の根・人間の安全保障無償資金協力の委嘱員として事業の計画立案、実施監理、モニタリング・評価を担当

    JICA

    2003〜2018年

    給水・水資源管理分野にてジュニア専門員、長期専門家、企画調査員、特別嘱託、専門嘱託など歴任

    UNICEF

    2018年〜現在

    水衛生分野の人道支援・開発事業実施監理、課題分析、政策提言、コーディネーションなどを担当

    「何ができるか」より、「自分が何をしたいか」と「どうなりたいか」を大切に

    国際協力の「最初の一歩」とは?

    もともとはただ海外に出て英語を使った仕事をしたいという安易なイメージしか持っていませんでしたが、大学で受けた授業や友人との出会いを通じて具体的に国際協力を仕事にしたいと思うようになりました。しかし、しっかり勉強していたわけでもなく、お金もありませんでした。
    大学卒業後はフリーターをしながらお金を少し貯めて、「本当に国際協力の仕事をしたいのか?」を確かめつつ、「何らかの専門性を身につける」一心でインドに村落開発の勉強をするために留学しました。
    国際協力の世界に片足を突っ込んでみて分かったのは、学歴、経歴、語学力など優秀な方が多くいたことです。自分に何ができるのか、不安になることが多かった記憶があります。

    パキスタンでの政府関係者との協議にて

    パキスタンでの政府関係者との協議にて

    子ども・学生時代をどのように過ごしましたか?

    高校生までは人生の全てがサッカーでしたし、大学生の時はまともに勉強せずに音楽ばかり聴くような生活を送っていました。その時その時で興味や関心もコロコロ変わり、全く筋の通っていない学生時代だったと思います。
    出来の悪い学生は学生でその分悩むこと、考えることも多いと思うのですが、僕は僕なりに一度きりの人生をどう生きるかを考えるきっかけが多くあった気がします。
    何の努力もしていないのに、「無意味な人生を有意義なものにするために社会や人のために何かできることをしたい」と思えたという点においては、貴重な時間を無駄に過ごす出来の悪い学生であったことの意味は大きかったと、今になって思います。

    国際協力系のキャリア形成におけるギャップとは?

    どの業界も村社会的な性質はあると思いますが、国際協力の世界は他の業界以上に村社会的なところがあると感じています。一歩踏み入れるためには専門分野における職歴や途上国経験など、若いうちに簡単には身につけられないものが選考条件となっており、壁は高く感じられます。
    しかし、一歩踏み込んでみると、専門以外の仕事の機会や人を通じてしか得られない貴重な経験や機会に巡り合えるようになりました。
    一歩踏み出してもなかなかそれが結果につながらないことも多々あるかもしれませんが、自分で無理だと決めるつける前に臆せずチャレンジし続けることで道が開けるキャリアではないかと思います。

    内線中のイエメンにて水衛生の人道支援ニーズの聞き取り調査

    内線中のイエメンにて水衛生の人道支援ニーズの聞き取り調査

    いま、どんな仕事・働き方をしていますか?

    2018年以降は国際機関で人道支援及び開発協力にかかる水衛生分野の事業計画立案、実施監理、予算管理、政策提言などをしています。
    学生の頃はもちろん、国際協力のキャリアを始めた頃には想像もつかない仕事をすることができて毎日とても楽しいですし、経験を積めば積むほど自分の責任をより一層強く感じるようになってきました。職場で国籍も宗教も育ってきた世界も異なる同僚と仕事ができることも幸せに感じます。
    また、子どもたちの成長に合わせて目まぐるしく変わる家族の生活環境の中、同じく国際協力キャリアを歩む妻と仕事や日常生活のバランスをとることの大変さとそのありがたさを日々感じています。

    パキスタンカシミール地方の小学校を視察した際のひとこま

    パキスタンカシミール地方の小学校を視察した際のひとこま

    文系のご出身とのことですが、水資源分野に進まれたきっかけや専門性をどのように身に着けられたか教えてください。

    学部では経済学を専攻しましたが、いざ国際協力の仕事を調べると学部での学びだけでは求められる専門性を満たしていないとわかりました。
    文系でもできるプロジェクトマネジメントを切り口に、村落開発の学位をとるべくインドに留学しました。その経験を生かそうと最初に働いたNGOの仕事の柱が安全な水の供給だったことが、水分野にかかわるきっかけです。
    その後、JICAの水資源事業に携わることになり、職員、専門員、開発コンサルタントの方々から実務的なノウハウを学び、後になって水環境管理の修士号を取得しました。
    行動変容、公衆衛生、栄養、農業、産業、教育、災害、気候変動などどの分野とも水資源や水衛生は深い関係があるため、専門分野に迷ったら水分野をお勧めします。

    印象に残っている経験・エピソードはなんですか?

    ジュニア専門員としてJICAで働き始めて最初に行った出張で「もうJICAの仕事辞めようかな」と思う出来事がありました。その時一緒にいたベテランのコンサルタントさんから「石の上にも三年」と諭され今の僕がいます。
    海外での妻の仕事に主夫として随伴した後、「仕事があるよ」と声をかけてくれた昔の上司がいて今の僕がいます。
    「やるべき仕事をやっているだけだから日当はもう払わない」と言ったのに、最後まで一緒に仕事をしてくれた途上国政府のカウンターパートがいたから今の僕がいます。
    社会や世界、誰かのためにと思って仕事をしてきたつもりが、いつも誰かに助けてもらっているのが僕の国際協力の仕事です。僕はそれが好きです。

    国際協力における大切なこととは?これから一歩を踏み出す人たちへ

    昔はイメージも湧かなかった国際協力の仕事をして、家族と共に生活を育むようになった今、確信していることがあります。
    それは、どうなるかわからない未来に漠然とした不安を感じたり、今ある自分の立場から見える「たくさんの出来なさそうなこと」に直面した際に見えないガラスの天井を作ってしまうのではなく、10年後、20年後になりたい自分の理想像に近づけるよう、今できることを楽しんで努力し続けること。そうすることで世界がひらけてくるのが、国際協力の仕事の醍醐味ではないかと思います。
    言語力がない、専門分野が弱い、パートナーがついて来られない、など諦める理由を見つけるのではなく、世界を変える仕事をするために自分のガラスの天井を突き破ってください。

    内線中のイエメンにて同僚とフィールドミッション(ニーズ調査)

    内線中のイエメンにて同僚とフィールドミッション(ニーズ調査)



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