心強い伴走者として、未来を共に描き、持続的に発展できる地域へ

  • 国際協力専門員
  • ガバナンス
  • 法律/政治学系

  • 下田 道敬さん
    国際協力機構(JICA)/人事部/ 60代

    大学学部生

    1981年~1985年

    国際関係論の教鞭をとる恩師と出会い、政治学・行政学を学ぶ。サークルでアジア農村部の貧困問題に触れる。

    大学院生

    1985年~1987年

    国際政治学修士号取得。内発的発展論を軸に、東北タイの農村開発協力を行うNGOでケーススタディを実施。

    国連JPO

    1987年~1990年

    UNDPラゴス事務所(ナイジェリア)に勤務。

    JICAジュニア専門員

    1991年~1994年

    半年間本部派遣事業部(当時)に配属されてJICA業務を学んだ後、ニカラグアに専門家で派遣。

    JICA個別専門家

    1991年~1996年

    ニカラグアの対外協力省に派遣され、開発計画・援助計画に係る助言指導に従事。

    JICA企画調査員・個別専門家

    1997年~2001年

    メキシコの外務省にアドバイザーとして派遣され、南南協力支援に従事。

    受託研究員

    2002年~2004年

    研究員として大学院に戻り、途上国の地方分権化と国際協力の在り方について、日本の経験をベースに研究。

    シニア・アドバイザー

    2009年~2020年

    タンザニア大統領府地方自治庁にて地方行政アドバイザーを担うと共に協力プログラム全体の総括として勤務。

    JICA国際協力専門員

    2004年~現在

    JICAグローバル・アジェンダやクラスター事業戦略の実施促進、主要プロジェクトへの助言を行う。

    「主体性」と「内発性」を引き出す日本型開発協力を通じて

    国際協力に興味をもったきっかけは?

    大学時代の恩師との出会いが、私の人生を大きく変えました。大学4年の時に初めて受けた国際関係論の講義で、世界の見方が一変しました。
    先生からは、途上国の現状や「弱者の目で世界を見る」ことの大切さを教えられました。この視点は、今でも私が最も大切にしているものです。国際協力での進路に導いてくださったのも、この先生でした。
    もう一つの転機は、南北問題や平和問題に取り組むサークル活動で、タイ北部の農村に滞在した際に出会ったNGOリーダーの神父の言葉です。
    「働き者で重労働をしている人たちが一番貧乏でないといけない。そんな世界はおかしいと思いませんか。何とかしなければと思いませんか。」
    この言葉も、私が国際協力に携わる原点となりました。

    これまでに歩んできたキャリアは?

    大学院では内発的発展論を軸に開発学を学んだ後、国連JPOとしてナイジェリア・ラゴス事務所で勤務しました。
    その後日本の二国間協力に携わりたいという思いから帰国し、JICAジュニア専門員一期生として委嘱を受けました。
    1991年からその一環として戦後復興期のニカラグアに日本初の専門家として派遣され、同国の国づくり、開発・援助計画策定支援の仕事に5年間従事しました。
    その後1997年からメキシコ外務省アドバイザーとして派遣され、2001年まで南南協力支援に携わりました。同年にメキシコから帰国し、大学院に戻って途上国の地方分権化と日本型開発協力のあり方について研究し直し、2004年からは国際協力専門員として委嘱を受け、現在に至ります。

    カカオ産地での農家さんとのひとコマ

    現在の業務・担当について教えてください。

    JICAグローバル・アジェンダやクラスター事業戦略の実施促進、そしてアフリカ、中南米、アジアをはじめとする各国の地方行政分野の主要プロジェクトに対して助言を行っています。
    具体的には、プロジェクト形成~実施~評価の各段階においてスーパーバイズしたり、課題アドバイザーとして専門家、職員、コンサルタントへの助言・指導を行ったり、調査研究も行ったりしています。

      

    業務でのやりがい・仕事の魅力とは?

    途上国の政府は、予算的にも人員的にも先進国の数十分の一という極めて厳しい条件の下で、住民が必要とする行政サービスを提供しなければなりません。
    そのような状況下でも機能する行政サービス提供体制を模索し、相手国のカウンターパートと一緒に考え、議論してその国のあるべき地方行政のあり方を模索してきました。
    そしてその有望な方向性の一つとしてこの20年間タンザニア、ホンジュラス、ブータン等で進めてきたのが、政府単独で何でもやろうとするのではなく、地域住民の自助とコミュニティの共助を促して育み、自治体と地域が協働で地域づくり、地域振興を進めるという地方行政モデルです。
    嬉しいことに、どの国、地域でも住民が自分たちのポテンシャルに目覚め、様々な変化を遂げています。相手国、そして地域住民の主体性と内発性を引き出す地域づくり、国づくりに寄り添える今の仕事に愛着と誇りを感じて、彼らと共に頑張っています。

    >プロジェクトの対象村にて、住民たちが自らの手と農具だけで造った幅8m、長さ60kmの集落道

    プロジェクトの対象村にて、住民たちが自らの手と農具だけで造った
    幅8m、長さ60kmの集落道

    今後の目標やキャリアプランとは?

    それぞれの国・地域の人々が、自分たちの地域を愛して誇りが持てる社会―――どこもそうなったらいいな、と、理想として心に抱いています。
    僕たちはそのために協力をしているんじゃなかなと、日々思うんですね。そして、国際協力においてはやはり相手側の主体性・内発性を引き出すことが1番大切だと考えています。
    そのため、案件終了時点での目標達成のみならず、持続可能性の礎となる「主体性」を促す協力の実現を目指し、指針や評価基準の策定に向けて日々検討を重ねています。

    国際協力の道を目指す方へのメッセージ

    日本だからこそできる国際協力の形を、ぜひ追究してほしいと思います。そして、それを相手国の人々と「ああでもない、こうでもない」と議論しながら、一緒に考え、作り上げていくプロセスを楽しんでほしいです。
    「一緒に考える」という姿勢は、非常に大切であるとともに、プロジェクトの目標を達成することだけでなく、相手側がそれを自分ごととして受け止め、プロジェクト終了後も継続・発展できるかを常に意識してほしいと思います。
    最後に、今ある仕事に一所懸命取り組み、与えられた役割に真摯に向き合い、良い仕事をすることこそが、自分の道を切り開く王道だと、私は信じています。
    国際協力の世界では、誠実さと情熱、そして相手国への愛情を持って自分の責任を果たすことが、信頼につながっていきます。


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