FIELD STORY(6月号)
国内第二位の経済圏 民間企業をサポート
JICA関西 西野 恭子所長
「企業連携課」を設置 海外展開に向けた最適な支援を提案
国際協力機構(JICA)関西センター(JICA関西)は2012年4月、JICA大阪とJICA兵庫を統合し、兵庫県神戸市に設立されました。当センターは阪神・淡路大震災後の復興プロジェクトとして整備された神戸東部新都心(HAT神戸)に位置し、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県の2府4県におけるJICA事業の総合窓口として、関西地域と開発途上国の架け橋になるべく、国際協力事業を実施しています。
関西は日本第二位の経済圏です。人口は約2,000万人で、優れた技術や知見を有する民間企業や大学、市民団体などがこの地域に数多く集まっています。JICA関西はこうした地域の特色を生かし、研修員受入事業や市民参加協力事業などに取り組んでいます。中でも、最近特に力を入れているのは民間連携事業です。
JICA関西では2017年4月、JICA国内機関で初の「企業連携課」を設置しました。現在は課長を含め7人のスタッフが所属し、企業の海外展開を支援するため、さまざまな取り組みをしています。その一つが、大阪商工会議所と連携して中小企業とコンサルタント企業をつなぐ「中小企業×コンサルタントマッチング会」で、これまでに9回開催しています。また、JICA事業に携わっている民間企業同士がお互いのグッドプラクティスや悩みなどを共有する場として、企業交流会も開催しており、今年3月の交流会には24社39人が集いました。業種を越えた交流を通じて新たなビジネスパートナーとも出会える機会として、好評を博しています。
このほか、当センターが所管する2府4県所在の各企業の交通アクセスを考慮し、大阪駅直結のビルに「JICAコラボデスク」を設置し、企業へのコンサルテーション業務などを行っています。また、企業の支援にあたっては、他団体との連携も重視しています。大阪商工会議所や(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)、(公社)関西経済連合会(関経連)、(独)中小企業基盤整備機構などと協力し、各団体が持つ支援スキームの中から、企業にとって最適なものを選択できるような提案を行っています。
今年度からは民間連携事業の採択後の実施監理を本格的にJICA関西で担う予定ですが、従来の企業向けサービスを継続しつつ、新たな業務を着実に実施していきたいと思います。
地域の多様なパートナーとの連携 SDGs達成に向けたプラットフォームを設立
JICA関西では、留学生を含めて毎年約1,800人の研修員を受け入れており、投資促進や中小企業の振興など、産業分野の研修を多く実施しているのが特徴です。また、2007年には兵庫県と共に途上国で防災に携わる人材育成の拠点として「国際防災研修センター(DRLC)」を設置するなど、防災分野の研修にも注力しています。
兵庫県三田市との連携で、パラオの廃ガラスを利用した工芸活動を指導するシニアボランティアを派遣しました。そこで作られたガラス工芸品は、先のパラオ大統領訪日の際に安倍首相に贈呈されました。また、今年3月にはインドのラグビー普及に向けて同志社大学と覚書を締結するなど、大学との連携も積極的に進めています。
当センターは、2017年12月に関西の産官学民が協力して設立した「関西SDGsプラットフォーム」の事務局も担っています。持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、関西の企業や自治体、大学、NGOなどが、それぞれのセクターを越えて情報共有や協働ができる場を目指しています。プラットフォームの設立当初の会員数は約150でしたが、現在では約660にまで増えており、企業がその65%を占めています。
このプラットフォームでは、これまでSDGsへの理解を促進することに力を入れており、各種シンポジウムやビジネス分野の分科会、参加団体によるイベントなど、100件以上の活動を展開しています。また、会員である(株)電通、(株)博報堂、(株)読売広告社の協力を得て、関西におけるSDGsに対する認知や取り組み状況を現在調査しています。このように、プラットフォームを通じて同業他社という垣根を越えた協働も生まれつつあります。今後も関西のさまざまな企業や団体の方が連携してSDGsへ取り組む機会が増えるように、当センターとしてもその一助を担っていきたいと考えています。
また、今後はG20やラグビーワールドカップ、ワールドマスターズゲームズ2021関西、2025年の大阪・関西万博など、国内外からの注目が関西へ集まる大型イベントも目白押しです。これらも追い風に、関西も途上国も元気にする国際協力、関西と途上国を信頼でつなぐため活動を続けていきます。
国際開発ジャーナル社 ( https://www.idj.co.jp/ )
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