第6号 連載コラム バスタオル理論
私は2年間カメルーンで海外協力隊のコミュニティ開発隊員として活動しました。
協力隊を経験した隊員などでよく言われるのは、
- ・「途上国の人は働かない」
- ・「それをすれば生活の質があがるのになぜしないんだろう?」 等です。
私自身も赴任して、現地の人々と生活をする上でその気持ちは感じていました。
このことに対して私が考えたことをお話ししようと思います。
もちろんですが、途上国も日本と同じで様々な人がいます。働かない人もいましたが、私が一緒に活動をしていた住民の方はすごく働く人でした。すごく働きすぎるので、私の方が働かなさ過ぎではと感じ、心の中でごめんなさいと何回も思うぐらい申し訳なかったです。
ただ、大半の人は改善できる余地がある環境下でも働かない人が多く、「なぜ?」という気持ちが大きくなっていました。
しかし、赴任も一年程過ぎたころ、自分が使っていたバスタオルを見てあっ、、と思いバスタオル理論を思いつきました。
私は水浴びをするのが3日に1回だった時期もあったため、バスタオルを2週間洗わず同じものを使用していたことも、、、いや使用していました。汚いと思われるかもしれませんが、現地ではそこまで汗もかかず、バスタオルの使用頻度も3日に1回ぐらいでしたので全然汚くはありませんでした、、。はい、嘘です。とても汚いと思いますし、汚いと思っておりました。幸い、水汲みの井戸は歩いて200メール程だったのでそこまで遠かったわけではありませんでした。もちろん水浴びも毎日した方が良いとは思っていましたが、日本と違い蛇口を捻れば水が出るわけでもお湯が出るわけでもありません。そのため水浴びは3日に1回になり、特に支障がないためタオルも洗いませんでした。洗濯機などないので、洗うために水を汲み、蚊の多い外でゴシゴシするため、単純に面倒くさかったのです。それでも、本音ではバスタオルをもっと洗った方が良いな~と思っていたところ「バスタオル理論」を思いつきました。
私がバスタオルを洗わない、水浴びをしないという行動は自分が住民に感じていた、「それをすれば生活の質が上がるのになぜしないのだろう」ということそのものでした。もし誰かに「そのバスタオル汚いよ、洗えば」と言われれば、「そうだね!汚い。絶対洗った方が良い!」と思いつつも洗わないでしょう。しかし、仮にその聞いてくれた人が、「そのバスタオル汚いよ、一緒に洗おうよ」と言われれば「そうだよね!こんなに汚いのは不衛生だ!一緒にやろう!」となると思います。けれど、その一緒にやってくれている人がいなくなれば「まあ汚いけど使えるしいっかー」となると思います。
私のバスタオルの時も、「現地の住人達もその状態じゃない方が良いとわかっている。けれど、一人だとそこまで支障がないし、そのままで生活できたのだからそのままでいいや。でも誰か手伝ってくれるのならやる。」だったのでしょう。
隊員の活動は、隊員が現地からいなくなっても続けてもらえる「持続性」を目標にしている人がほとんどです。バスタオル理論のおかげで、隊員の帰国後に住民が活動を持続できない理由を理解しました。日本人だろうが途上国の人だろうが同じ。良いとわかっていても怠惰や色々な理由からやりたくないだけ。日本人が良く働くのは周りの人がそうだったり、強迫観念に駆られているからなのだと思います。私たちは志願し、何かをするために任国に行くため想いが強い。そこだけの違いで、本当は途上国の人も日本人もさほど違いはないのだと感じました。
これを理解した後はちょっぴり住人たちと距離が縮まった気がしました。
元協力隊D.M
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