第16号 連載コラム 国際協力に貢献する「開発コンサルタント」という仕事。

「国際協力の世界で、政策づくりに携わりたいか?それとも、現場でプロジェクト実施に携わりたいか?」

大学院時代にフィールド調査で訪れたガーナの国立自然保護区で、国際NGOのプロジェクトマネージャーから聞かれた質問。躊躇なく「どちらにも関わりたい!」と答えると、あきれたように笑われてしまいました。やはり欲張りなのか、との思いが胸をよぎりました。

その後、JICAガーナ事務所で専門調整員として森林管理等の技術協力プロジェクトを担当していた時に、国際協力の現場の最前線で働く「開発コンサルタント」という仕事に出合いました。希望していた、政策づくりと現場でのプロジェクトに携われる仕事です。それから10余年、開発コンサルタントとしてアフリカや中南米で業務に携わり、今はミャンマーで働いています。

ミャンマー経済の中心地、ヤンゴンから車で1時間のところに、日本とミャンマーの官民連携事業によるティラワ経済特区があります。この経済特区開発のために、これまでに約160世帯が、ミャンマー政府が整備した移転地に移転することになりました。JICAは、住民が移転後に安定した生活を確保できるよう、2014年から「非自発的住民移転に伴う生計回復支援に係る計画策定・実施能力等向上支援」プロジェクトを行っており、私はチームリーダーを務めています。

プロジェクトでは、移転住民が適性に合った職業斡旋や職業訓練を受けられるよう支援をしている傍ら、移転地に給水施設や水浴び場、そして公民館を整備する等、住環境の改善を支援しています。

移転住民宅への家庭訪問

このように現場で住民や政府職員と共に汗を流す一方で、プロジェクトでは、ミャンマー政府の意向を受けて、経済特区への進出企業が推進すべき社会配慮方針をまとめた国際標準のガイドライン策定を支援しています。ここでの私たちの役目は、住民に裨益(ひえき)する政策づくり、そして、出来上がった政策を住民に届けることです。

開発コンサルタントの仕事は、国や民族を超え、地域住民や政府に加え、市民社会、民間企業、国際機関など幅広い分野の人たちとのコミュニケーションと協働が求められます。

相手を理解し、自分を理解してもらわないと、前に進まない。さまざまな人と向き合うことは、この仕事の難しさであり、そして醍醐味でもあります。

技術力に加え、まさに人間力、誠意が試される日々。世界を救うなんて出来ないけれど、「笑顔で希望を持てる人が増えますように」、そんな想いを胸に、今日も現場に立ち続けています。

※本コラムは、一般社団法人海外コンサルタンツ協会(ECFA)の協力をいただき、掲載しております。
一般社団法人海外コンサルタンツ協会(ECFA): http://www.ecfa.or.jp/japanese/index.html

日本工営株式会社
環境技術部 SDGs & CSR戦略ユニット
菊池淳子

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