第22号 連載コラム 国際協力の舞台裏

学校開校後の子どもたちの溢れんばかりの笑顔。

街中を走り回る車への人々の感謝の声。

このような場面は国際協力の成果を最も身近に感じられる場面ですが、実はこのシーンに至るまでには様々な
トラブルがつきものです。
若輩者ながら、このような国際協力プロジェクトの舞台裏について少々ご紹介したいと思います。

「明日までに用意する」
クライアントである現地政府機関の担当者からよく聞くフレーズですが、その通りに事が進んだ試しがありま
せん。進捗確認のために翌日連絡すると長期休暇で音信不通となりスケジュールの見直しを迫られることも一度や二度ではありません。必ずしもプロジェクトのスケジュールありきでは動かないのです。
国際協力プロジェクトでは援助側の一方的な支援だけでなく相手側の積極的な取り組みが不可欠であり、いかに先方を巻き込みプロジェクトやスケジュールの重要性を理解してもらうかという点も毎回頭を悩ませています。

「想定される予定外」
現地建設業者も似たような状況であり、建設現場では資機材が予定通り到着しない、作業員が予定通り集まら
ない、その結果工程が予定通り進捗しないことも日常茶飯事です。中間検査をしてほしいと呼ばれた先で前の
週から何も進んでいないという事態も残念ながら“想定内”であることも多いです。
日本の品質・工程管理能力の高さを改めて思い知ることも少なくありませんが、そもそも自国で賄いきれない
部分について国際協力を要請しているという背景もあります。日本の技術を伝え実現すべき点と、相手国の実情に合ったものを実現すべき点との落としどころを探ることも国際協力の重要な役割だと思っています。

「目に見えない仲間?」
同じ学校の敷地に全く別の教室建設計画がバッティング。矛盾しているようですが時々起こり得ることです。
開発途上国は様々な国や地域のドナーへ支援を要請しているものの、現地の担当機関が個々のプロジェクトを
把握しきれておらず、複数のドナーによる個別の建設計画のバッティングが発生することがあります。
教育環境の改善という同じ目標を掲げる“仲間“であるはずですが、個々のプロジェクトは綿密な支援範囲・
スケジュールに基づいて進捗しているため段階によっては変更の融通が利きません。他ドナーのプロジェクト
進捗状況も見逃せない情報の一つです。

このようにプロジェクトで発生するトラブルを解消するために様々な調整や下準備が行われていますが、
それらを乗り越えて多くの関係者が同じゴールを目指してきたことで国際協力が実現し、継続していると
思います。

ごみ収集車両を供与するというあるプロジェクトの引渡式典で、相手国から、既存の古い車両から新しい車両へ荷台を受け渡すというパフォーマンスが行われました。その古い車両は約30年前に同じく日本が供与したもの
でした。
その30年間を支えた背景にも上述のような各関係者の協働があったに違いなく、そのような舞台裏に関われる
ことも国際協力に従事する醍醐味の一つであると思います。

古い廃棄物収集車両からの受け渡し

八千代エンジニヤリング株式会社
事業統括本部 海外事業部 建築・社会開発部
金指大地

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