第31号 PARTNERコラム私なりの国際協力

幼少のころ、母が開発途上国の子どもの学費支援をしていた関係で、学校に行きたくても行けない子どもたちの存在を知りました。その時は「貧しい国ではなく、日本に生まれて良かった」くらいにしか思っていませんでした。高校に入ってから海外に興味を持ち、大学で国際関係学を学ぶうちに、国際協力や開発援助への関心が高まり始めました。大学時代にはインドや南米、アフリカを旅して、現地で同年代の友人ができると、彼らのエネルギッシュな姿勢に刺激を受け、開発途上国や新興国の持つパワーにより一層魅了されました。

大学を卒業し就職したものの、やはり国際協力・開発援助の分野への思いを捨てきれず、海外協力隊に応募し、アフリカのマラウイ共和国に派遣されました。派遣直後の私は「この協力隊経験を活かして、開発途上国に関わる仕事をしたい!」と意気込み、大学院で開発援助を学んで、政府系機関やコンサルに勤務して…といった国際協力のフィールドでの人生設計も想像していました。しかし、実際は「ギブミーマイマニー!」と片言の英語でお金をせびってくる子どもたち、「私たちは貧しいんだから!あなたは何をくれるの?」と援助慣れをした農民たちと衝突する日々。次第に国際協力・開発援助の在り方に疑問を持ち始めました。

一方的な援助ではいけない。やる気を持った人たちとビジネスをして、一人でも二人でもその人たちの周りから少しずつ環境が変わっていって欲しいという思いから、マラウイ帰国後に起業を決意。「Tawonga※」というブランド名で、マラウイの仕立屋さんと協働してアフリカ布で作った雑貨や洋服を輸入販売する小さなビジネスを始めました。現地のチームと一緒に悩み、学び、協力し合う中で、私自身も成長させてもらっていることを実感しています。これまでの自分は「彼らのために何ができるだろうか」とばかり考えていました。知らず知らずのうちに、「相手に与える」立場での国際協力しか見ていなかったことに、ここで気づくことができたのです。

「Tawonga」と並行して、福岡市グローバルスタートアップセンターの相談員も担当しています。海外のスタートアップや起業家に向けて、福岡でビジネスを始めるときのアドバイスや、福岡の企業とのビジネスマッチングなどを行っています。

まだアフリカのスタートアップからの本格的な福岡進出の話はないのですが、最近はルワンダのスタートアップが福岡を訪問してピッチイベントを行うなど、アフリカとの繋がりが少しずつ見えてきました。

興味があること、一生懸命になれることを突き進めていると、色んな世界との繋がりができる。今の私がまさしくそうです。些細なことが巡り巡って、世界の誰かのためになることもあるので、国際協力はビジネスも含め様々なアプローチがあるんだなと実感しています。今後も自分なりの国際協力を続けていきたいと思っています。

※「Tawonga」とはマラウイの言葉で「We are grateful.(感謝します)」という意味。マラウイの人は会話や挨拶の締めにこの言葉を添える。

福岡市グローバルスタートアップセンター
中川明子

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