第34号 PARTNERコラムブラジルの日本と日本のブラジルに魅せられて(その3)
帰国して半年経った頃、持ち帰ったものを整理して「ブラジルボックス」を作りました。現地の写真を引き伸ばしたものや漫画本、おもちゃ、衣装、コインなどのグッズを黄色いスーツケースに詰め込みました。イベントや他校での授業に貸し出すこともあります。この「ブラジルボックス」をゴロゴロと引っ張って教室に入っていくと、子どもたちは歓声をあげます。低学年の児童にはナマケモノのぬいぐるみを抱っこさせてあげます。ピラルクの鱗を触ったり、ブラジルの新聞紙で帽子を作ったりするアクティビティも好評でした。ブラジルにルーツをもつ子どもたちの中で、有志の子が「ミニ先生」となりポルトガル語講座もします。
高学年の児童とは社会的な課題についてもより深く学習することができます。
6年生とは「Think Globally, Act Locally―世界の中の日本とわたしたち―」というテーマで長めに学習しました。この学年には、ブラジル、フィリピン、ペルー、中国、アルゼンチン、ボリビアなど外国にルーツのある子どもが半数もいたので、彼ら自身の思いや経験を活用するため私からの発信は少なめにするなどの工夫をして子どもが主体的に発信できるようにしました。
自分や家族に関わりのある国について調べ、写真やグッズを見せながらみんなの前で発表した子どもがいました。自分の親を呼んできて、母国紹介や地域の取り組みを知らせるチャンスを作った子どももいました。また、「フィリピンのおいしい食べ物ベスト3」を発表したことをきっかけに、「シニガン」という酸っぱいスープをみんなで作って食べました。マラウイに派遣中の海外協力隊員の呼びかけを紹介し、使わなくなったピアニカやリコーダーを集めて、英語のメッセージとともに現地に送りました。私自身も知らない国について取り組むのは、いつもチャレンジングでしたが、児童や保護者、ネットで繋がる海外協力隊出身の仲間とともに学びながら行った授業は生き物のように大きくうねり、とても盛り上がり、すばらしい瞬間を共有することができました。
海外に出て新しい世界を知ることも、今の子どもたちには必要だと思います。しかし、日本国内にもたくさんの外国人が留学や仕事で来ていて、すでに私たちの生活に欠かせない役割を果たしてくれています。現実には課題もたくさんあります。違う文化、違う言葉、違う価値観や宗教観を持つ人たちとどうやって共に生きていくのかを、対話的に考えていく経験が、すべての子どもたちにとって必要だと思います。私がブラジルでそうしてもらったように“両手を広げて温かく“日本に受け入れることで、多様性の豊かさを実感できる社会を作っていくために、あらゆる機会に国際理解教育を実践していきたいと思います。
小学校教諭
藤川純子
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