第59号 PARTNERコラムアフリカ国際協力が教えてくれた「努力する」ということ

ポートロコ県農村部小学校 定額給付支援の様子
写真:ポートロコ県農村部小学校 定額給付支援の様子

西アフリカのシエラレオネ共和国で、「経済的に最も困難な状況に陥る子どもたちとその貧困家庭のサポート」を始めてから7年が経ちました。7年間で約1,000人の子どもたちが、NPO法人アラジの支援によって初めて通学、または復学することができています。

シエラレオネの子どもたちは月160時間以上の労働を強いられ、教育を受け続けられないという環境にあります。その根本原因は、子どもの保護者の貧困です。保護者はシングルマザーであることが多く、過去10年以上続いた内戦や病気、事故などで両親(子どもの祖父母)を失っており、加えて若年妊娠により初等教育を完了していないケースがほとんどです。最悪の場合、文字が読めないため経済活動から取り残されて生計が成り立たなくなり、子どもと一緒に物乞いや売り歩き労働に従事することになります。そういった貧困家庭の子どもやシングルマザーの多くは栄養失調などにより、困難を打破しようと努力し続けることも難しいのが現状です。また、周囲の手助け、公的機関からのサポートの少なさも、大きな社会問題となっています。

私は大学卒業後、就職という道は選ばずに自分でNPO法人を設立しました。日本に事務局を置き、シエラレオネの首都フリータウン、ケネマ県に現地オフィスを作り、支援の輪を広げてきました。アフリカでの活動は思い通りに行かないことも多く、常にリスクが付きまとう中、必死にやってきたつもりです。周囲からは「若いのにすごいね」「下里さんはバイタリティがあるよ」「日本大使館もないのに努力しているね」と言われることもしばしばありました。初めは「すごい」と言われることに違和感がなかったのですが、7年を思い返すと「自分は決して特別人より努力してきたわけではない」と考えるようになりました。

「努力できること、それ自体が恵まれていることだった」と気付くことができたのは、シエラレオネにおいて困難や理不尽に立ち向かい続ける、最貧困家庭の子どもたちの存在があったからです。「人一倍強い思いで努力してきたから国際協力の舞台で起業できた」という訳ではなく、私が努力し続けることができたのはシエラレオネで出会った子どもたちと、今日まで7年間支えてくださった人たちのおかげだと思っています。NPO法人アラジの支援者の皆様、家族、友人、周りの温かいサポートに感謝しています。その感謝の気持ちを努力に変えて、私たちは今後もシエラレオネでの子どもたちと貧困家庭の教育支援を続けてまいります。

NPO法人アラジ
代表理事
下里夢美

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