第63号 PARTNERコラム将来の夢について、私の答えの出し方

「あなたの将来の夢は何ですか?」私は、この質問をされるのが苦手でした。いきなり満員の観客がいる大きな舞台の上に立たされるような気がして、怖気付いてしまう感覚があったからです。この感覚は小学生の頃から大学生になるまでずっと続きました。一応、聞かれた時の答えは用意していて、「映画監督(スターウォーズが大好きだったので…)」と答えていました。でも本当になりたかった訳ではなく、ただその場をやり過ごすためだけの答えでした。

この質問に対する感覚が変わり始めたのは大学5年生の頃でした(なぜ5年かは後ほどお話します)。大学2年時に初めて自分がワクワクできる国際協力という分野に出会い、3年時にはゼミでパラグアイに行ったり、イベントでフェアトレード商品を売ったりしていました。そんな3年の秋、就職活動の準備をしていると例の質問が私に迫りました。その時私は、「教師」という答えを出し、大学を留年して教員免許を取ることを決めました。誰に言っても納得してくれたし、自分でも良い答えが出せたと思っていました。1年間の猶予を得た私は、暫定の「教師になる」という夢を盾に少し自信を持って過ごすことができました。

そして迎えた大学4年の冬(一般的には3年の冬)、いよいよ本当に進路を決めなければならなくなり、再び例の質問と向き合うことになりました。私が出した答えは「海外協力隊」でした。当時、周りには色々と格好のいい理由を言ってはいましたが、実のところ、決心した一番の理由は、「一番心がワクワクしたから」でした。この時は不思議と迷いませんでしたし、清々しい気持ちでいっぱいでした。

海外協力隊の任地グアテマラの教員の皆さんと
海外協力隊の任地グアテマラの教員の皆さんと

あの質問の窮屈さからの解放でした。おそらくそれは2つの捉え方の変化によるものです。1つは、「将来の夢は、それ自体やその理由が周りに誇れるようなものでなくてもいい。自分の心がときめくかどうかが大切だ」と考え始めたこと。そしてもう1つは、「将来の夢は変わっていいのだ」と気づいたことです。どちらも当たり前のようなことですが、私は14年間の学生生活が終わる頃にやっと気づくことができました。

協力隊に参加後、小学校教員、NPO職員、と2度の転職をしました。もちろんどちらの時も進路選択には悩みました。ただ、最終的には「日本の教壇に立ってみたい」「国際協力の話をもっと子どもにしてみたい」という心のワクワクを最優先させました。その時の悩みに、あの頃のような窮屈さはありませんでした。そして今では「将来の夢」が半年に1度変わるくらい、気軽に自分の夢を語れるようになりました。

フリー・ザ・チルドレン・ジャパン職員としての出前授業の様子
フリー・ザ・チルドレン・ジャパン職員としての出前授業の様子

国際協力の職は、他の分野と比べて短期ポストも多く、キャリア形成のために進路を考えなければならないタイミングも多いと思います。これから先も、何度も訪れるであろう問いかけに、真摯に、かつ肩の力を抜いて向き合っていきたいと思います。皆さんの答えもぜひお聞かせください。「あなたの将来の夢は何ですか?」

認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン
We Movement事業部
広瀬太智

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