第72号 PARTNERコラムJICAインターン インタビュー②「評価部編」

*本コラムは、評価部インターンの佐武恵梨さん(東京大学経済学部)へのインタビューをまとめたものです。

1. 国際協力に関心を持ったきっかけは何ですか?

小学校の時に、学びたいのに様々な事情から学ぶことのできない子どもたちのことを本やドキュメンタリー番組を通じて知り、自分の周りの当たり前が当たり前でないことに大きな問題意識を抱きました。経済学を専攻したのも、自分が将来取り組みたいと考えている社会保障や教育格差、子どもの貧困などの政策を考える際の根幹をなす、経済の動きや予算の在り方について学びたいと考えたからです。その後、更に直接的に教育や保健など人の生活に関わる分野について、どのような政策が最も効果的かを考えたり、既存の発想と異なる見解を導くことができうる開発経済学に出会い、勉強を続けています。

大学1年次に訪れた国連本部前にて
大学1年次に訪れた国連本部前にて

2. JICAインターンに応募したきっかけと、インターンを通じて学んだことを教えてください。

昨年から大学のゼミで学術研究としての開発経済学や計量経済学を学んでいました。しかし、実務において知識がどのように応用されているかを知る機会はあまりなく、社会という統計的な議論だけでは測りきれない複雑な対象に対して、統計的な分析結果を政策立案などに本当に生かせるのか少し疑問に思い始めていた時に、ゼミの先輩が、学んだことを活かせると薦めてくださっていたのがきっかけです。
実際に評価部に勤務させていただき、業務分野の面でもキャリアの面でも多くの学びがありました。インパクト評価に関する報告書の要約やリサーチ業務を通して政策評価の知識が深まったことは勿論ですが、実務で政策評価を用いる際の困難について職員の方に教えていただいたり、各評価事例を実際に国際協力の場に応用する際にはどのような可能性があるかを検討したりと、実務と学問の関わりについて考えることができたのは得難い経験でした。また、JICAという、長年の信頼関係をもとに実務に携わってきた機関だからこそ、統計的な議論も取り入れながら、現場で信頼関係をもとに調査することのできた事情を政策に反映させるなど、定量的、定性的議論の双方を補完し合いながら活用することができるのではないかと考えることができ、統計的な議論を政策立案に生かすことの重要性を再確認することもできました。
指導してくださった方々は、現在の評価部に至るまでに多様なキャリアを歩まれており、進路の選択についてのお話などを伺えたのも大変有意義でした。通常の業務に加えて学会での研究発表や、外部の研究者ネットワークとの関係構築を続けていらっしゃる方のお話も伺うことができ、実務に従事しつつも、最新のアカデミアの知見を取り入れ続けることの重要性も実感することができました。

評価部が作成・発行する事業評価年次報告
評価部が作成・発行する事業評価年次報告

3. 今後はどのようなキャリアを考えていますか?

大学院で経済学や開発分野についてより深く学んだ上で、政府系機関などで事業評価や政策立案に関わりたいと考えています。今回のインターンを通じて、実務と研究機関、双方の議論を理解したうえで、実務の場と研究の場を往復しながらより良い政策立案に貢献できるような人材になりたいと思うようになりました。今後は授業やゼミで理論的な勉強を大事にしつつ、インターンなどに定期的に参加し、学問を実務に生かすという視点も磨いていきたいと思っています。

4. 国際協力を志す学生や同世代の方へのアドバイスをお願いします。

私はアドバイスをできるような立場ではありませんが、私自身が今後も意識したいこととして、自分の専門以外のことにも関心を広く持つこと、実際に現地を訪れて見聞きした経験に依って立てるようにすることがあります。国際協力や政策に関わる分野は特に人の生活と密接に関わっていて、一つの切り口だけではどのような支援が必要か、捉えきれないことも多いと思います。また、国際協力の業務に携わるには、理論を学ぶだけではなく、実際に多くの人に会い、状況を自分自身の目や耳で感じるということも不可欠だと思います。そのためには、JICAがこれまで行ってきたように時間をかけて信頼関係を築いていくことも大切でしょう。国際協力分野においては、見方や正解が一つではない、ということを忘れずに、様々な側面から相手の利益や課題を考えようと真摯に努力し続けることが大事なのではないでしょうか。

JICA人事部開発協力人材室 インターン
田島智佳

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