第77号 PARTNERコラム地方行政職員から国際協力の道へ
私は、2021年10月からJICAブータン事務所の企画調査員(企画)として勤務しています。在外事務所での勤務は、前任地のフィジーに続いて2か所目になりました。将来、国際協力の道に進みたいと考えている学生や社会人の方も多いかと思います。私自身も、学生時代にNGOで活動していた経験から、国際協力分野での仕事に関心を持ち、いずれは途上国開発に携わりたいと考えていた一人でした。しかし、私自身の経験を振り返ってみても、決してストレートに国際協力の分野で働き始めたわけではありません。
2010年大学卒業後、地元青森県内の市役所にて働き始めました。希望していた都市計画やまちづくりの分野での職務を任され、2011年の東日本大震災の際には、被災地での避難所運営支援に携わるなど、国際協力とはかけ離れた業務に就いていました。当時の私はこうした仕事に特に不満はなく、地域づくりや地元の祭りへの参加を通じて、むしろ充実した日々を過ごしていました。しかし、心のどこかで学生時代に夢見た国際協力に対する思いがくすぶっていたことから、結果的に3年でこの仕事を辞めることになりました。
その後、外務省の任期付職員の募集に応募し、4年間にわたり経済外交や国際協力の分野に携わりました。私が担当した仕事の一つは、次年度予算獲得のために、財務省に対してODA候補案件やその重要性を説明する予算要求でした。当時の私は、机上で得た情報を必死で理解し、資料にまとめ、説明に出向くといった日々の業務に取り組んでいました。しかし、こうした業務を通じてふと気がつくと、途上国の実態や国際協力の現場について何一つ理解できていない、もっと国際協力の現場に近づきたいという思いが改めて芽生えてきました。
それから、
JICAの在外事務所という国際協力の現場で実務を実現するに至りました。
このように、私は国際協力の道に必ずしも一直線で入ってきたわけではありません。度重なる転職や紆余曲折を経て現在の職務に就いており、今でさえ今後のキャリアの方向性を考え、悩む一人でもあります。しかし、こうした地方・国家公務員としての行政分野での経験は、現在の仕事の大きな糧となっています。新卒で入社した市役所では、社会人としての基礎を叩き込まれただけでなく、自治体職員としての視点から、途上国開発にも深く共通する「地域課題へのアプローチ方法」を学びました。また、外務省での業務はODAのスキームへの理解を深める機会になりました。国際協力は、多様な背景や能力を持った人材が活躍できる大変懐の深い仕事であると考えます。国際協力の道を目指し、最初の一歩に迷う方も多いと思いますが、必ずしも急ぐ必要はありません。あらゆる分野の技術や知識が求められる場であり、決してその経験は無駄にはなりません。キャリアの築き方は十人十色です。今の経験が必ず活かされると信じ、中長期的な視点で遠回りを恐れないことが重要です。
JICAブータン事務所
須藤 伸
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