第80号 PARTNERコラムなぜ今ここにいるのか、ターニングポイントを振り返る
私は大学在学中に国際協力業界で働きたいと考え始め、卒業後は日本の専門商社に4年半勤務しました。その後NGOに転職し、国内でフェアトレードを担当し、タイ・ミャンマー国境に赴任、現在はカンボジアに駐在しています。なぜこの場所にいるのか振り返ると、大きく2つのターニングポイントがありました。
大学在学時に問われていたのは、「あなたにとっての国際協力とは何ですか」でした。それに答えられるようになったのは、短期インターンとしてセネガルを訪問してからです。受入れ先の開発コンサルタント会社の好意もあり、村でホームステイをしながら、住民に「女性と開発に関するインタビュー調査」をさせてもらいました。調査結果で印象的だったのは、女性たちが元気に生き生きと村の中心となって活躍する姿でした。「脆弱層という印象もある開発途上国に暮らす女性は決して弱い存在ではなく、元々の能力を活かせない環境にいるだけなのかもしれない。それならば私は、人の可能性を活かすサポートがしたい」と思い、「私にとっての国際協力は人の選択肢を増やすことです」と答えられるようになりました。ですが、同時に多くの経験をもらうだけで、お世話になった人たちに何も返せなかった学生という自分の立場の無力さを痛感し、日本に戻る道中は悔しい気持ちでいっぱいでした。
その悔しい思いから、学生ではない立場で人の選択肢を増やすことはできないかと考え、専門商社に就職しました。国内外での電子部品製造などに関わり、多くの人に支えられながら作り出すビジネスで、人の雇用を継続的に生み出せることに、自分の思う国際協力に近づいているのではないかと感じていました。しかし、東日本大震災が起こり、取引先が震災後の被害から会社を畳む決断をするのを目の当たりにしました。取引先の社長の少し沈んだ声を聞いて、何もできない無力感にまた襲われました。自分は選択肢を必要としている人に対して仕事をしたかったのではないかと自問し、生まれてきた環境により能力を活かしきれていない人たちの選択肢を増やすことに携わりたいと、思いを具体化させていきました。
その後、困難な環境にいる人への選択肢を作り出せるのはNGOではないかと考え、今の団体に転職しました。支援国の人たちが必要としていることを直接聞いて知りたいと海外の駐在を希望し、主にノンフォーマル教育に関わっています。子どもたちがキラキラした笑顔で図書館などに通う様子を見る時、将来の夢を教えてもらう時、この活動で彼らの将来の選択肢を増やせているのではないかと思います。自己満足かと葛藤を感じる時もありますが、ターニングポイントを振り返り、自分の志を思い返すようにしています。
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会
カンボジア事務所
山内 乃絵
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