第83号 PARTNERコラム今にして思えば・・・国際協力の「タネ?」
学生時代、私は東京の音楽大学でクラシック音楽の勉強をしていました。その頃はSNSやYouTubeはもちろん、インターネットも普及前ですので、海外オーケストラや奏者の演奏をCDやラジオで聞くことはできたものの、
彼らの音楽に対する考え方や演奏の秘訣を時差なく知ることは大変でした。贔屓の奏者やオーケストラが来日すればライブで聞くことは可能ですが、学生にとって1万円を超えるようなコンサートチケットには、なかなか手が出せませんでした。そこで、よく友人たちと行っていたのが“突撃楽屋訪問”です(セキュリティの観念も今とは違いますし、若さとはすごいものですね)。友人たちのうち何人かはチケットを入手しコンサートを聴いていますので、お目当ての奏者の顔はわかります。そのため、楽屋の出口で待ち構え、拙い英語で「私たちは日本であなたと同じ楽器を演奏しています。もし時間があればレッスンをしてほしいです。」などとご本人を見つけては声を掛けさせていただきました。かなりの回数そのようなことをしていましたが断られることは無く、皆さん快く私たちを受け入れ、空き時間があればレッスンをして下さいました。些少ながらレッスン代をお支払いしていたと思いますが受け取らない方が多く、代わりに買い物にご案内したり、食事にお招きしたりしていたと記憶しています。ずいぶん昔の話ですがとても良い思い出です。
大学卒業後、しばらくはプロの奏者として活動していたのですが、その後、紆余曲折を経て大手ドラッグストアに勤務していました。その頃は教員や南極越冬隊にも興味が有りつつも煮え切らずにいたのですが、その様子を見かねたのか、今は亡き母が「海外協力隊(現JICA海外協力隊)募集」の新聞広告を切り取って私に渡してくれました。気になって調べてみると音楽隊員の募集もあり、応募したところ、運よく合格しエジプトに派遣されました。その後、JICAの国際協力推進員、企画調査員、期限付職員などを経験し現在に至ります。私の国際協力の第一歩は、ずっと協力隊への参加だと自覚していたのですが、今にして思えば、冒頭の学生時代の経験が、
JICAの国際協力推進員時代に海外から受け入れた研修員の皆さんと過ごした経験に似ていたことに気づきました。その学生時代の経験が私の心に国際協力の第ゼロ歩としてタネのように残り、母が渡してくれた新聞広告をきっかけに国際協力の芽が出始め、第一歩につながったのかもしれません。
JICAフィジー事務所
鳥居 直樹
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