第100号 PARTNERコラム駐在員でも、海外事業担当でもない、私の働く理由
世界から飢餓を終わらせるために活動するNGO、ハンガー・フリー・ワールドの職員として働き始めて数年後、活動国の一つである西アフリカのブルキナファソを訪問する機会がありました。当時は国内事業の担当として、学校での授業、企業や行政などのイベントで講演やワークショップを行ったり、本や冊子を編集したりと、飢餓や食料問題について伝える仕事をしていました。そのときによく聞かれたのが「どこの国へ行きましたか?」です。もちろん、活動地へ行かないと何も伝えられないわけではありませんが、「自分の言葉で伝えたい」という気持ちが大きくなっていた頃でした。
ブルキナファソの活動地を訪問したとき、住民たちがミレットという穀物で作った食事や乾燥したバオバブの実でもてなしてくれました。バオバブの実はラムネのような味と食感。口の中でシュワっと溶けて、懐かしさを感じました。青空の下、臼と杵を使ってミレットを脱穀しているところも見せてもらいました。まぶしいほどの日差しに鮮やかな色のスカートが映え、もみ殻が風に舞う風景が美しかったことを覚えています。
市場を訪問させてもらったときには、トマトやナスなど日本でも見慣れた野菜が売られていることに親しみを感じ、大量に収穫されたキャベツの山に圧倒されました。最終日には、ブルキナファソ支部のスタッフと屋台で小さなテーブルを囲み、焼き鳥のようなものを食べながらビールを飲みました。「日本と比べたらこの国は経済的に貧しいけど、ビールと焼き鳥ぐらいはおごってあげるよ」と話す彼らの笑顔が印象に残っています。
この国の人や食に親しみを覚えた一方で、サハラ砂漠の近くに位置する乾燥した気候を肌で感じながら、ここで暮らしていくことの大変さを実感しました。多くの人が農業で生計を立てる中、雨の降り方が変わったり、隣国マリの影響などで治安が悪化している地域があったりと、自分たちだけではどうにもできない現実も押し寄せています。もしほんの少しでも歯車が狂ったら、日常の風景が大きく変わってしまうのではないか。そのような危うさを感じたものの、不思議と「何もできない」という気持ちよりも「何かしないと」という気持ちが大きくなり、「何もしない」という選択肢は消え去りました。
それから約10年後、ブルキナファソの活動地は支援を卒業し、次のステップを歩み始めています。私は現在、人事担当として、ハンガー・フリー・ワールドに集まる人たちにどのように力を発揮してもらえば飢餓のない世界に近づけるのかを考えています。NGO職員と聞いて皆さんがイメージするような、駐在員や海外事業の担当ではありませんが、国際協力にはさまざまな仕事があること、また日本で活動を支える人たちのことも、興味を持ってもらえたら嬉しいです。
特定非営利活動法人ハンガー・フリー・ワールド
儘田 由香
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