第102号 PARTNERコラムネパールで見た家族で祝う伝統行事の今
大学時代、卒業後の進路を考える中で参加したNGOのバングラデシュ・スタディツアーが、国際協力の道に進むきっかけとなりました。卒業後はJICA海外協力隊としてネパールへ。その後、紆余曲折を経て国際協力のきっかけとなったNGOシャプラニールで働いています。現在は新規事業である国内事業(日本に住む外国人関連事業)を担当しています。今回は私がネパールで経験した現地の伝統的なお祭り「ティハール」について、お話ししたいと思います。
さまざまな民族、宗教が混在するネパールでは、一年を通して伝統的なお祭りがたくさんあります。その中でも大きな祭りの一つティハールは、富の女神ラクシュミーを家に招いて、富と繁栄を祈るヒンドゥー教のお祭りです。5日間のティハール期間中、夕方から、蝋やオイルから灯した火やイルミネーションで家を飾ることから、別名「光の祭り」とも呼ばれています。この間、人々は毎日、カラス、犬、牛、富の女神ラクシュミーを敬うプジャという儀式をします。そして最終日には、姉妹が兄弟の健康と長生きを願うプジャ「バイ・ティカ」が行われます。(ティカとは額につける祝福の印)
約10年前の協力隊時代、私も現地の文化に習って、当時一緒に住んでいたホストファミリーのブラザーに「バイ・ティカ」のプジャを行い、カラフルなティカを額につけてもらいました。
最近この伝統行事にも少し変化が出ているようです。数年前ティハールの時期に現地の友人にバイ・ティカについて尋ねたところ、「今年は行わないわ。今は兄弟がいないから」とのこと。詳しく話を聞いてみると、彼女の弟たちは皆海外へ出稼ぎに行き、ネパールにおらず、バイ・ティカを行えないとのことでした。
現在のネパールは仕事を求めて海外へ出稼ぎに行く人が多い状況です。その数200万人以上。出稼ぎ労働者からの送金がGDPの約20%に相当するといわれています。海外へ出ていく人が増えていることは知っていましたが、そのことが家族の行事にも影響を与えていたのです。現地の生活の中で、伝統文化や家族のつながりの大切さを再認識した私は、少し複雑な想いでした。
現在、仕事や留学を目的に来日するネパールの人が多くいます。仲間内やコミュニティで伝統的なお祭りを祝う人も多くいる状況です。異国で暮らす彼らにとって、そのようなお祭りは、現地を思い出す大切な時間だと思います。アルバイト先や職場で、学校で、ご近所で、もしも周りにネパールの方がいらっしゃったら、ぜひお祭りについて聞いてみてください。きっと鮮やかなネパールの伝統文化について話してくれるでしょう。
特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会
事業推進グループ
菅野 冴花
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