第113号 PARTNERコラム
人との出会いを重ねて築いたアフリカ高等教育協力のキャリア(後編)
前回に続き、私が“アフリカの高等教育協力”に関わるまでのターニングポイントをご紹介します。
③ガーナ人ホストファミリーとJICA専門家との出会い
国連で働くためには修士号に加え、最低2年間の途上国経験も求められます。そのため、大学院修了後、約3年間国際交流協会で勤務した後に、JICA海外協力隊に応募しました。将来はUNICEFで基礎教育分野の教育協力に携わりたいと思っていたこともあり、仏語圏アフリカの国を志願しましたが、派遣先は英語圏のガーナに決まりました。最初はがっかりしましたが同時期に派遣される隊員が素敵な人たちばかりだったので、そんな気持ちもすぐに薄れました。
安全上と配属先の事情で私はガーナ人家族の家にホームステイとなり、ガーナの教育を変えたいと奮闘する家族と一緒に2年間過ごしました。そのおかげで、自分では変えられなくても、変えられる人を育てることなら第三者の私でもやってもいいのでは?と気づき、“アフリカの人たちが自分たちの力で国をより良くしていくための人材育成に携わる”という目標を見つけることができました。
目標は見つかりましたが、次は、どのように関わるか?を考えなくてはなりません。同時期にガーナの教育省にJICA個別専門家として派遣されていた中澤順子さんとの出会いが、私の悩みを解決してくれました。中澤さんは「みんなの学校」プロジェクトのパイロット事業を実施するために教育省に所属し、私の活動地を対象地域に選定しました。そのため、中澤さんがパイロット事業を作り上げる過程での教員・住民へのヒアリングや学校との交渉の場に同行する機会を何度もいただき、そこで初めてJICA専門家の現地での活動を知ることができたのです。長年の経験を基に、鋭い質問をし、対象地区を選定しながら、カウンターパートと冗談を言って笑い合ったりされる姿を見て、すっかり中澤さんの虜になり、「いつか中澤さんと一緒に働きたい!」と思うようになり、JICA専門家を目指すことに決めました。
④基礎教育から高等教育への転換
JICA海外協力隊を終えてからすぐに専門家となるには知識も経験も浅かったため、まずはJICA本部での経験を積みたいと思っていたところ、運よく、基礎教育分野のジュニア専門員の募集が出ました。ところが、それは補欠合格という結果で、どうしようか悩んでいたところ、高等教育分野の専門嘱託の募集が出ていることを、ガーナ時代にお世話になっていた元JICA海外協力隊調整員の方が教えてくださいました。しかし、高等教育は未知の分野で、業務のイメージもなかったので応募するか否かとても迷いました。そんな時に夫の繋がりで、既に高等教育分野で活躍されている専門家を紹介いただき、目標を伝えたところ、それなら高等教育協力が良い!と後押しいただき、応募を決意しました。幸運なことに採用いただき、ここでキャリアを基礎教育から高等教育へ転換することになりました。
JICAで働くのも初めて、かつ文系の私には全く馴染みのない工学部や農学部を対象とするプロジェクトでは聞いたことがない用語ばかりで、最初はとても戸惑い、何も出来ない自分に不甲斐なさを感じ、とても落ち込んだ時期もありました。しかし、現地にいる専門家や上司・同僚に丁寧に指導いただいたお陰で、多様なステークホルダーと共に取り組むダイナミックな高等教育協力にすっかり魅了され、(願わくばアフリカの)高等教育プロジェクトの専門家として現場に戻ることが目標となりました。そして、JICA本部での約4年間の勤務後に、現在のポストに応募・合格し、ケニアに赴任することになり、2020年のコロナ真っただ中にJICA専門家への一歩を踏み出すことができました。
高校生の頃に描いたとおりのキャリアではないですが、たくさんの人との出会いによって見つけられた目標を胸に、これからもダイナミックに展開されるアフリカ高等教育協力に携わり、その国の人が自分たちの国を変えていく過程に寄り添っていきたいです。
ケニア ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)
AFRICA-ai-JAPAN プロジェクト
十田 麻衣
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